ナタリー PowerPush - チャラン・ポ・ランタン
こういうわけでエイベックス契約&たらふくシングル
エイベックスはいい具合のビッグママ感
──じゃあ、まだ心配してる人もいるかもしれないから、改めてこの場でちゃんと言っておいたら?
もも 心配してる人、まだいるのかなあ?
小春 心配するっていうのは、今までにインディーからメジャーに行って変わっちゃった人がいるから心配するわけでしょ? みんな変わっていったものなの?
──まあ、変わった人もいますよね。
小春 それはどういうところで?
──例えばそれまで洋楽テイストのR&Bを追求していたのが、売れる曲をってことで当たりさわりのないJ-POPを歌うようになったりとか、昔のヒット曲のカバーばっかり歌うようになったりとか。
小春 ああ。でもそういう意味では、ウチらのCDの売り上げに期待してる人はいないから。少なくとも「売れる曲を」とは言われない。
──それはチャランポの面白さをちゃんと理解してくれているいいスタッフに恵まれてるってことですよ。
小春 ああ、そういうことなのか。でも思うけど、メジャー行っていろいろ変わっちゃったアーティストっていうのは、その人自身が優しかったんじゃない? たくさんのスタッフさんががんばってくれてるから、その人たちの期待に応えなきゃっていうんで売れそうな曲を歌おうって思うんじゃないかな。小春はそこまで優しくないから大丈夫だよ。
──ははは(笑)。なるほど。
もも 周りにすごく理解のある方たちが集まってくれたっていうのは本当に大きいと思いますね。小春の世界観、チャラン・ポ・ランタンの世界観を面白がってくれる人たちばかりが集まってるから。
小春 あと、例えば小さなレーベルとか、小さな事務所とかだったら、アーティストが少ないぶん、かける期待も大きいと思うんだよね。いろいろ言ってあげないとって。でもエイベックスみたいに人がたくさんいると、そこまで構われない。大家族の中の1人みたいな感じだから。ひとりっ子だと親も過保護になるけど、大家族だとそこまで構わないでしょ。そんな感じ。
──あんたは好きにやってなさいっていう。
小春 そうそう。運動会を遠くから眺めてる親みたいな(笑)。そのぐらいの、いい具合のビッグママ感がある気がするんだよね、エイベックスに。ちょっとヘンな子が1人生まれちゃったけど、まあいいか、っていう。ひとりっ子でこんなんだったら困るだろうけど、たくさんいるからこういうのがいても別にいいかみたいなね。いい意味で余裕があるというか。
もも 紹介ビデオみたいな動画(「チャラン・ポ・ランタンが行く!」)を撮ったときに、エイベックスの会議室に偉い大人の方たちが集まってくださって、あの人たちはあのとき初めてお会いしたんですけど……。
──あ、本当にあれが初めてだったんだ!?
もも はい。で、会議室に入ったら、みんなしらけたような怒った顔してて、私がいくらいじっても絶対に笑わない。「チャラン・ポ・ランタンって知ってる?」「いや、全然知らない」って、知ってるから集まってるのに「知らない」って言い張ってくれて。そのときに、ああ、みんな芸達者で面白い人たちなんだなあって、ちょっと安心しましたね。
チャラン・ポ・ランタン / チャラン・ポ・ランタンが行く!
小春 ツアーでも「あのエイベックスだよー」みたいにずっとネタにしてしゃべってたんだけど、その中で1回、ちょっと小春が言いすぎた日があったのね。「エイベックスは頭のおかしい人たちの集まりだから」とか言って。そしたらあとでねこ太さんに「あれはさすがに言いすぎだ。あれじゃただの悪口だ」ってめっちゃ怒られて、確かにそうだなって思ってね。で、東京グローブ座の初日はちょっと優しい言い方をしたの。そしたらあのビデオに映ってるハンコ押した偉い人が来てて、「小春ちゃん、今日は優しすぎだよ。もっと悪口っぽいこと言ったほうが面白いよ。明日は頼むね」って言われて、どっちなんだよー!!って思って(笑)。
──わははは(笑)。
小春 そっちを期待されてるのかー、って。まあそういう広い心で見てもらえるのは、ありがたいことだなって感じだね。
怖がらないで聴いてみてよ
──では、そのエイベックスから出るシングルの話をしましょう。そういえばシングルを出すのは初めてですよね。
小春 うん。シングル、嫌いなんだよね。小春は気に入ったらそのCDばっかリピートして聴くほうだからさ。そうすると、アルバムはいいんだけど、シングルだと短すぎるじゃない? っていう理由でシングルは作りたくなかったんだけど、でもまあ、このぐらいいろんなタイプの曲を入れられるんだったらいいかなとも思って。で、シングルって言えるギリギリの曲数を入れたっていう。5曲以上だとミニアルバム扱いになるのかな、確か。だからシングルと呼べるギリギリの曲数ってことで4曲。
──「1stたらふくシングル」って書いてありますもんね。
小春 そう。これでDVDも付いてれば、買った人も不満はないんじゃないかと。
──ちゃんと買う人のことを考えて。
小春 うん。だって、カラオケとかいらないでしょ!? バージョン違いとか、そんなの入ってても、同じ曲がいくつもあってもしょうがないだろって感じだしね。
──では1曲ずつ聞いていきますね。まず「忘れかけてた物語」。メジャーデビューにふさわしい歌詞ですね、これ。
小春 「はじめまして」みたいな感じのものを書いてって言われたから、実際に「初めまして こんにちは」って書いてみたの。で、そこから曲が始まってるっていう。そのまんま(笑)。メロディも明るいほうがいいってことだったから、明るくして。
もも 明るいんですけど、サビのところとかはどことなく怪しい感じもあって、あれはどこから来てるんだろっていう。
──「中に何が待ってるかわからないけど、怖がらないで入っておいでよ」っていう、ある種、見せ物小屋的なドキドキ感みたいなものも出ている。
小春 うん。秘宝館みたいな(笑)。
──ははは(笑)。
もも 「怖がらないで」って言ってるってことは、ちょっと怖いんですよね。
小春 そうそう。「怖がらないで」って言うってことは、実際は怖いってことなんだなって書いてて思った。
──でも、怖いものもある程度は見ておいたほうがいいですよね、おチビちゃんのときに。怖いものをまったく知らずに育つより、何が怖いかを知って育ったほうがいい。
小春 そうだねえ。怖いもの全部避けて通るのはよくないよね。
──そういう意味で、チャラン・ポ・ランタン的な世界観が存在するってことも、知らないよりは知っておいたほうがいいっていう。
小春 先入観からチャラン・ポ・ランタンのライブには行かないっていう人もいるだろうからね。たまたま聴いた1曲がタイプじゃないから行かないとか。でも「1曲でわかるわけないだろ!」って感じなんで、怖がらないで聴いてみてよっていう。例えばチャラン・ポ・ランタンのライブを口で説明したところで、何も伝わらないと思うんだよね。すごく面白かった芸人の話をウチらが人に説明したところで、本当の面白さは絶対伝わらないじゃん。それと同じで。
──ですね。ちなみにこの曲はカンカンバルカンのホーンが大フィーチャーされています。
小春 それは最初からそうしようって考えてた。「忘れかけてた物語」はバンドでいこう!って。
──バンドのにぎやかさがサーカスをイメージさせるし、ももさんの歌い方もサーカスの進行役を思わせるところがありますよね。
もも あ、そうですね。ありますね。ライブで歌うときもそういうふうになりきって歌ってます。ただ、ときどき癖でおどろおどろしい感じで歌ってしまうことがあって、そうするとちょっと意味が変わっちゃうので、なるべく「怖がらないでー」ってさわやかに歌うことを心がけるようにしてます。
小春 ますます怖いよ。
もも そうなんだけど、意識しないとつい怖い感じで歌っちゃうから。怖さもあるドキドキ感っていう意味では、ミュージックビデオも面白いものができあがってうれしいです。
チャラン・ポ・ランタン / 忘れかけてた物語 (ちょっとだけショートヴァージョン)
──歯に囲まれて、口の中で2人が演奏しているというような映像で。
小春 うん。悪い毒を飲んじゃおう、みたいな。
──あ、そういうことなんですね。
小春 だと思うよ。で、現実と向こう側の世界があって、口がその出入り口だっていうふうなことを監督さんが言ってた。
- メジャーデビューシングル「忘れかけてた物語」 / 2014年7月9日発売 / avex trax
- CD+DVD / 1728円 / AVCD-83037/B
- CD / 1080円 / AVCD-83038
CD収録曲
- 忘れかけてた物語
- フランスかぶれ
- スーダラ節
- 私の宇宙
DVD収録内容
- チャラン・ポ・ランタンが行く!【Profile Video】
- 忘れかけてた物語【Music Video】
チャラン・ポ・ランタン
1993年生まれのもも(Vo)と1988年生まれの小春(Accordion)による姉妹ユニット。2009年に結成。2010年8月に「チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン」名義でアルバム「ただ、それだけ。」をリリースする。2012年6月にはZAZEN BOYS、group_inouらとのカナダツアーを大盛況に収めるなど海外での活動も多数。2012年9月に、約2年ぶりの新作アルバム「つがいの歯車」を発表すると同時に、ももが20歳の誕生日を迎える2013年4月9日までに3枚のアルバムをリリースすることを公約。各作品で話題を振りまき、2014年7月にシングル「忘れかけてた物語」でエイベックスからメジャーデビューを果たす。