CHAIの4人が出会うまで
──今回の記事はCHAIの結成から現在を振り返るものになればいいなと思っているんです。「PINK」で初めてCHAIに出会う人たちにとって、皆さんの成り立ちを知ることができるテキストになればいいな、と。
4人 おおー! いいね!
──なのでまず、すごく根本的な質問から。どのようにしてCHAIは誕生したんですか?
ユウキ 最初はただの友達だったね。
マナ そうそう。最初からガッとやっていたわけではなくて、ゆるーい感じで始まったの。ユウキ以外の3人は同じ学校で、軽音部でバンドをやって遊んでいて。
カナ 私とマナは小さい頃から歌手になりたくて。だから軽音部に入ったんだよね。
マナ うん。ユナはどうして軽音部に入ったの? なんとなく?
ユナ ううん。私はね、どうしても、どうしても、ドラムがやりたかったの。
──そのきっかけは?
ユナ 当時、ORANGE RANGEのKATCHANが大好きで。8割方ビジュアルが好きだったんだけど(笑)、「KATCHAN、カッコいいー。KATCHANって一体何やっているんだろう?」って思って、そこでドラムっていう楽器のことを知って。それで私もドラムをやりたくなったんだけど、親に「ドラムやりたい」とは言えなかったから軽音部に入って、マナとカナに出会ったんだよね。
マナ だから出会いは本当にたまたま。学校の軽音楽部で適当に遊びながら、東京事変やaikoをコピーしていたのが最初。ユウキは遊んでいた友達の中で、断トツでかわいかったからナンパしたの。ceroを教えてくれたのがユウキだったんだよね。
ユウキ うん。私はceroとか奇妙礼太郎トラベルスイング楽団みたいな、J-POPっぽくない音楽が好きだったんだけど、マナが友達の中で初めてceroを「いいね」って言ってくれて。でも私がバンドに誘われたときは、まだ本気でやる感じじゃなかったよね。私もバンドをやったことなかったから、興味本位で「やるー!」って言っただけだったし(笑)。たまたまベースしか余っていなかったからベースになっただけだし。
マナ あの頃は4人でフワフワしながら、「ただ音楽をやっている」って感じだったよねえ。
“かわいい”の価値観を変えていこう
──きっと、そんな初期状態のCHAIをパッケージングしているのが、2016年にリリースされたCD「ほったらかシリーズ」だと思います。この「ほったらかシリーズ」は今の自分たちから振り返ってみて、どんな作品でしたか?
カナ もう二度と作れない作品だよね。あのときにはあのときのテンションがあったから、今は作れない(笑)。もっと衝動的だった。「PINK」にはあのCDから「ぎゃらんぶー」を入れているけど、やっぱりこれがCHAIの原点だなって思う。CHAIの原点を示すために「PINK」にも入っている感じかな。
マナ でも、あの頃よりも今のほうが4人のグルーヴはいいよね、きっと。
──それはどうして?
マナ 音楽に向き合う意識が変わったから。「もっとみんなに届けたい」とか「売れたい」って言う意識が芽生えた。それが1年前ぐらいかな。
──“NEOかわいい”“コンプレックスはアートなり”といった、CHAIのメッセージ性の基盤となるテーマが生まれたのも、だいたい1年前くらいですか?
カナ そうそう。
ユウキ 私たちはみんなコンプレックスがあるけど、それを武器にしていこうって。ガールズバンドに対する固定されたイメージってすでにあると思うの。まず見た目ができあがっていないとダメ、みたいな感じがあるでしょ? 細くて、モデルみたいにかわいくて、みたいな。それありきで楽器を弾いているって言う。
マナ 世に言う「ガールズバンド」のボーカルはだいたい、完璧にかわいいもんね。
ユウキ でも、私たちは見た目では、そういうガールズバンドには敵わないから。だからこそ“NEOかわいい”って言う価値観を掲げて、今の世の中にある“かわいい”の価値観を変えていこう、みんなが持っているコンプレックスを肯定していこうって思った。女は男に比べて欲深いし、だからこそコンプレックスも尽きないからね。
マナ いくつになっても「キレイでありたい」って思うのが女だから。
ユウキ そのぐらい「コンプレックス」って永遠のテーマだと思うんだけど、そのコンプレックスを恥ずかしがらなくてもいいんだよって言いたくて。
カナ あと、単純につまらないもんね。「みんな一緒」は本当につまらない。
ユウキ そうだよね。みんなが目指す“かわいい”の範囲が本当に狭くて小さいなって思う。みんなが同じ方向を向いて、同じようにかわいくならなきゃいけない感じ……それって本当につまらないよね。だってそもそも、かわいくない人なんていないよ。“かわいい”の範囲は本当はもっと広いんだよ! 幸せの数は、人の数だけあるんだよ!
カナ だから私たちは「アーティストになりたい」と思ったんだと思う。アーティストって、何かを発信する人のことでしょ? でも、ただ音楽をやっているだけだと「この人は何を伝えたいんだろう?」「何を変えたくて音楽をやっているんだろう?」って疑問に思っちゃう。だから、ちゃんと何かを発信したいと思ったんだよね。
ユウキ CHAIを始めた頃は歌詞に意味なんてなくてもいいって思っていて。音楽には長い歴史があるし、もう充分、意味のある歌なんて歌われてきただろうって思ってたの。でも、それじゃあ自分たちがつまらないし、何も変わらない。今、自分たちが音楽をやる意味がないなって思った。
マナ そのへんは4人でけっこう話し合ったよね。
「完璧じゃないことがいい」ってとにかく伝えたい
──そして去年、皆さんは名古屋から東京に活動の拠点を移したわけですけど、そこにはどんな理由があったんですか?
マナ 音楽を真剣にやるんだったら、名古屋にいても何も変わらないんじゃないかって思って。もちろん「東京に行けば何かが変わる!」なんて簡単には思っていなかったけど、いい音楽をやって、それが伝わる人に伝わっていく場所は、やっぱり東京だろうなって思ったんだよね。それで、みんなに「東京行こうー!」って言っちゃった。
──マナさんの提案を、皆さんはすぐに了承したんですか?
カナ・ユナ・ユウキ うん。
マナ 早かったよね(笑)。
カナ でも本当に、東京に出てきてからは早かった。マナの言う通りにしてよかったなって思う。
──実際、この1年間でCHAIはすごい速度で認知を上げていますよね。
カナ うん。状況がよくなっているのは、自分たちでもわかる。
ユウキ ライブの始まりのSEの時点でもう拍手が聞こえてきたりね。
ユナ 目の前にいるお客さんが歌ってくれたり。
マナ 女の子たちが一緒に歌ってくれるのは一番うれしいよね。「聴いてくれているんだな」って思う。もちろん男の人がライブに来てくれるのもうれしいし、最終的には男女問わずみんなに伝えたいんだけど、最初はやっぱり同世代の女の子に届いてほしいって思ったから。「PINK」の最後に入っている「フラットガール」で「I'm not perfect You're not perfect and nobody's perfect」って歌っているんだけど、「完璧じゃないことがいいんだよ」って言うことをとにかく伝えたいんだよね。だって、私たちが完璧じゃないから。等身大であることが大事だし、CHAIにしか伝えられないことってあると思う。
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日本は音楽に対してすごい距離感がある
- CHAI「PINK」
- 2017年10月25日発売 / OTEMOYAN record
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初回限定盤 [CD+ブックレット]
3240円 / CHAI-002~3 -
通常盤 [CD]
2592円 / CHAI-004
- 収録曲
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- ハイハイあかちゃん
- N.E.O.
- ボーイズ・セコ・メン
- ほれちゃった
- あのコはキティ
- ぎゃらんぶー
- フライド
- かわいいひと
- ウォーキング・スター
- sayonara complex
- フラットガール
- CHAI(チャイ)
- 2013年に愛知・名古屋でマナ(Vo, Key)、カナ(Vo, G)、ユウキ(B, Cho)、ユナ(Dr, Cho)の4人によって結成された“ニュー・エキサイト・オンナバンド”。“NEOかわいい”“コンプレックスはアートなり”といったコンセプトを掲げて活動を行い、2016年12月には初のCD「ほったらかシリーズ」を発表。その後活動拠点を東京に移し、2017年には「SXSW」出演や全米ツアーなど海外でライブを行った。帰国後の4月には2枚目のCD「ほめごろシリーズ」を発売。「FUJI ROCK FESTIVAL」のROOKIE A GO-GO枠出演の際には満員で観られない人が続出したり、ユウキとユナが藤原ヒロシのライブにサポートメンバーとして参加するなど各所で話題を集めた。そして10月25日、バンドにとって初のフルアルバム「PINK」をリリースした。