ホラー談義に花が咲く
チッチ 私は寝る前に、YouTubeとかで怖いのを観て寝るんですよ。
峯田 そうなんだ! 僕も怖い話を聴きながら寝ますよ。
チッチ そう! それを最近知ったんですよ! 峯田さんも怪談が好きだって聞いて、その話をしてみたかったです。イベントにも行かれてるって。
峯田 うん。最近は音楽よりも怪談のライブを観に行きますね。
チッチ 誰が好きですか?
峯田 いっぱいいるんですけど、今は三好一平さんが好きで追っかけています。YouTubeでは6割ぐらいしかしゃべってないんですけど、ライブではネットに出せないような話も含めて10割話してくれるっていう。何やら事件と関わったりもしてるみたいで。
チッチ その方が、ですか?
峯田 そう! もちろんお化けの話も出てくるんですけど、実際の事件と関わっていて「うわ、裏側はこうなってんだ」みたいな話もあるし。怪談師でいいなと思う人はいっぱいいますよ。誰がいいですか?
チッチ 私はぁみさんが好きなんです。しゃべり方もすごい好きで、ずっと聴いてます。
峯田 今、怪談界が盛り上がってるのは、ぁみさんが10年ぐらい前から個人で地道にイベントをやってきた影響もあると思うから、あの人の功績は大きいですよね。
チッチ たくさんイベントをやってる印象があります。
峯田 僕は落語を聴くのも好きなんですけど、怪談も話芸として聴いているんですよね。ただお化けが出てきて怖いというだけじゃなくて、その登場人物の背景とかをきっちり画にしてくれる。やっぱり、しゃべりがうまい人は頭の中で画が浮かぶんですよね。
チッチ 怪談は想像してる画がみんなちょっとずつ違うのが面白いなと思うし、怖いことをしゃべる人って本当に伝えるのが上手で。抑揚のつけ方とか、それって音楽みたいだなと思うところもあって、面白いんですよね。峯田さんもイベントに行くぐらい怪談が好きだと聞いて、気持ちがぶち上がりました! 私はもともと怖いモノが大好きで、寝る前のホラールーティンもかなり前からやっていたので。
峯田 じゃあ、ホラー映画も観ますか?
チッチ 大好きです! 怖ければ怖いほど、最高ってなる(笑)。
峯田 へえ、珍しいね!
音楽の話に向かうかと思いきや
──ちなみに、音楽的な話で聞いてみたいことはありますか?
チッチ うーん、今までは峯田さんに「こうしたほうがいいですか?」とか「こういうのいいと思いますか?」ってあんまり聞けなかったんです。でも、聞けなかったということは、聞くべきじゃないのかなと思ったんですよね。さっき「歌詞の素直なところがいいね」と言ってくれたんですけど、むしろ峯田さんの生き方のほうがすごく素直だと思っていて。だから……。
峯田 いやあ……。
チッチ え?
峯田 昨日、レコーディングが早めに終わったので、東中野にある行きつけの焼肉屋に行ったんですよ。そこのおっちゃんとすごく仲がよくて。僕は中野から引っ越しちゃったので、しばらく行けてなかったんですけど、ひさしぶりに行ったら「うわー! 来たか!」と喜んでくれて。おっちゃんは手が空くと、すぐ僕のところに来てわーっとしゃべるのね。見た目は(俳優で元お笑い芸人の)でんでんさんそっくりなんだけどさ。そのおっちゃんとしゃべりながら「俺、演じてるな」と思ったの。行きつけのお店に行って店主と話して、盛り上がる場面がドラマでよくあるじゃないですか。おっちゃんとしゃべりながら、そういう設定を「今、演じてるな」って客観的に考えてるんですよ。だから素直じゃないんですよ。素直って「こういうのを俺は今、演じてるな」とメタで自分を見ているんじゃなくて、何も考えないで目の前の人としゃべれるのが素直な人間だと思うんですよね。僕はね、真逆なんだよ。授業中に先生が「おい、起きろ!」と言って寝てるやつにチョークを投げるでしょ? それを見て「わー、『タッチ』と一緒だ」みたいな。そうやって全部を「これはドラマとかマンガの設定だ」と捉えているから、僕は素直じゃないんだと思う。
チッチ 俯瞰して見ているんですか?
峯田 子供の頃からそうだったね。今こういう設定だから、このセリフを言ったほうがいいな、ということばっかり考えてる。ある意味、異常だと思うよ。
チッチ 私にはできないことだから、すごく面白いですけど。
峯田 音楽にも影響しててさ。プロデューサーというのを今までつけたことがなくて。自分で曲を作るプレイヤーでもありつつ、音もミックスも全部やるのでプロデューサーでもある。小さい頃からそういう面があったので、自己プロデュースするのも好きだし、まったく苦にならないんですよね。誰かに任せてそれが返ってきたときに、ちょっと違うなと思っても「ごめん、もう1回」と言えないんですよ。だったら自分でやったほうがいいやって。だから自分でミュージックビデオも作るし、デザインもやるし、それが楽しいんですよね。逆に、チッチさんはプレイヤーだけでいけると思う。それをそばで見て「ここは、こうしたら」と言ってくれるプロデューサーの人がいたらいいのかなって。だから似てるところもあるけど、僕とは違うタイプだと思うな。
──設定やプロデュースという話につながることだと思うんですけど、ゴイステのときに「峯田和伸という人間はこういう話し方で、こういう歩き方で、こういう髪型で……」と、もう1人の自分像を作り上げたと言っていましたね。
峯田 うん、それは2002年ですね。はっきり覚えてる。さっきも話したゴイステの終わり頃だったんですけど、もうきつくなっちゃって。お客さんのことを全部受け止めちゃうのはちょっときついので、だったら“ゴイステの峯田”というアフロでジャージを着てる藁人形を作れば、そいつが身代わりになってくれる。そうすれば、俺は何をやっても誰から何言われても痛くない、みたいな感じになったのが21年前。
チッチ それは今も続いてる感じなんですか?
峯田 うん。続いてる。今日みたいにしゃべっていて、例えば5分後にライブがあるとしますよね。このままひゅっとステージに行けないんですよ。1回トイレとか個室に行って、“峯田”という人格を自分に降ろすんですよ。その作業をやってからステージに行く。そのままひゅっとステージに行ける人がうらやましいです。本当はそれが理想だと思うんですけど、僕はまだそれができなくて、“銀杏の峯田”を自分の中に降ろさないといけない。でもライブが終わると、その峯田は適当に消えてくれるんですよ。なのでステージが終わったら、いつもの感じになりますね。なんかさ、歌っていて(自分の後ろを指さして)このへんから自分の背中が見えたことない?
チッチ えっと……ないですね。
峯田 全部客席?
チッチ 自分の視点のままです。
峯田 俺は2回ぐらいあるんだよね。
チッチ え? 幽体離脱ですか?
峯田 わかんない。でも自分の背中があって、お客さんも見えたの。
チッチ 本当に降りてきてるんでしょうね。
峯田 たぶん、そのときはつらかったんだと思う。
チッチ 乖離していたっていう。
峯田 ひょっとしたらね。でも、それによって「あ、俺はもっとこう動けばいいんだな」みたいなことがわかって楽になった。
チッチ それは完全に特殊能力ですよ。
峯田 霊感じゃないんだけど、昔から変なことはあった。
チッチ 今もですか?
峯田 たまにある。映画の撮影中に茨城のホテルまで車で2時間半かけて行かなくちゃいけなくて。市ヶ谷から車に乗って、15分で着いたことがあります。
チッチ ……え!?
峯田 ナビには2時間半って出てるし、茨城なのに、だよ。実はその前に靖国へ行ったんですよ。前日の夜の撮影が終わったあと、前乗りで茨城のホテルに行こうと思ったんですけど、その日の撮影がケンカのシーンで。それで首をやっちゃって、プロデューサーが有名な接骨院に連れて行ってくれたんです。ただ、そこに行っても治らなかったんですよ。「うわー、ダメだ! 首が痛いし回らない!」ってことで、その接骨院を出たら目の前に靖国神社があったんで「願掛けでお参りに行こう」という話になり。プロデューサーとマネージャーと3人で鳥居をくぐった瞬間、あれだけ痛かった首が回ったんですよ。「あー、治りました!」って。それでプロデューサーは自分の車、僕はマネージャーの車に乗って、「茨城のホテルで会おうね」と言ってお互いに市ヶ谷から車を飛ばして、高速に入ったらものすごい霧が出てきたんです。だけど、霧って普通は前から来ますよね? 横から来たんですよ。ナビがザーザーってノイズを出して、「あれ? 壊れた?」みたいな。そうかと思ったら、霧が晴れたんですよ。そしたら茨城にいた。先に出発していたプロデューサーに電話で「俺ら、もう着くわ」と伝えたら「は? まだ東京から出てないよ」と言われて「え、霧は?」と聞いたら「霧って何?」って。
チッチ うわあ、本当にそんなことあるんだ。
峯田 こういう話だったら、3時間くらいいけますよ。
チッチ ……すごいなあ。すごく強い神様がついてるんだと思う。今日はすごく楽しかったし、いっぱいうれしい話を聞けました。あと、私は今も峯田さんに救われ続けているので、人として長生きしてください。
峯田 そうですね、健康じゃないとね! 前にも言ったかもしれないですけど、音楽は商売という面もあるけど、音楽って何歳になってもやれるもんだと思うので。仕事じゃなくても仕事にしていても、チッチさんにはずっと音楽をやっていてほしいなと思います。
CENT ライブ情報
CENT「Unknown Possibilities」
2023年9月11日(月)東京都 LIQUIDROOM
プロフィール
CENT(セント)
2023年6月に解散したBiSHの元メンバーであるセントチヒロ・チッチによるソロプロジェクト。BiSH解散前の2022年8月に本格始動し、ソロ曲「向日葵」を発表した。BiSH解散後、2023年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '23」に出演した。8月に真島昌利、峯田和伸、おかもとえみ、富澤タクら豪華作家陣が参加したセルフプロデュースの1stアルバム「PER→CENT→AGE」をリリース。またチッチは「加藤千尋」名義で俳優デビューも決まっており、11月に上演される舞台「雷に7回撃たれても」でヒロイン役を務める。
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峯田和伸(ミネタカズノブ)
山形県出身。2003年1月にGOING STEADY解散後、ソロ名義で銀杏BOYZを始動させる。2017年10月には初の日本武道館単独公演「日本の銀杏好きの集まり」を開催し、成功を収めた。音楽活動のみならず俳優業も行っており、ドラマ、映画、舞台などに多数出演している。2023年9月より47都道府県ツアー「世界ツアー弾き語り23-24 ボーイ・ミーツ・ガール Boi Meets Girrrl」を開催する。
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