CARRY LOOSE=「カッコよくてエモい」
──CARRY LOOSE始動に向けての練習は8月に始まったそうですが、振り付けは皆さんで作ってらっしゃるんですか?
パン はい。みんなで分担して考えてます。現時点(取材は10月上旬に実施)で振り付けがまだなのはあと2曲。
──今は練習の日々だと思いますが順調ですか?
パン ある曲の振り付けが自分の中でまだしっかり定まらない、みたいな細かい部分はあるんですけど、全体的にはめちゃめちゃ順調です。
YUiNA 私も順調だと思います。
パン いい振り付けができているので、楽しみにしていてほしいです。
──CARRY LOOSEのテーマやコンセプトはあるんでしょうか?
パン 全体的なコンセプトは“カッコよくてエモい”です。みんなパフォーマンス経験者ということで、初心者っぽい感じを出してはいけないし、お客さんの期待値が高い分、歌も踊りもその高いハードルを越えなければいけないから。
──デビュー作はSCRAMBLES内の豊住サトシさん、佐藤カズキさん、井口イチロウさんからなる音楽制作チーム・T.S.Iがサウンドプロデュースされているとのことですが、収録曲のジャンル的な幅広さと、楽曲それぞれの強さがあって、まさに“カッコよくてエモい”が詰まっている作品だと思いました。どんなアルバムになったのかを皆さんの口からぜひ聞かせてください。
パン 必ずいいスタートを切れる、そんな気持ちにさせてくれるような素晴らしい曲が詰まっていて、これからの明るい未来を示すようなアルバムになりました。1曲1曲が素晴らしくて、それぞれが各ジャンルの頂点だと思えるくらいの仕上がりだと言いたいです。CARRY LOOSEは今までのWACKにない色のグループだけど、WACKのいいとこ取りでもあるなと思いました。
ウルウ・ル このアルバムを聴いて、どんな気分にも合う歌が入っていると感じました。自分の好きな曲をプレイリストにすることってありますよね? でもそういうことをしなくても、このアルバム自体のバランスがよくて、すごい完成度だなって。楽曲にしても曲順にしても素晴らしいアルバムだと思います。
──ウルウ・ルさんにとっては初のオリジナル曲ですね。
ウルウ・ル 本当にうれしかったです。最初に歌入れしたのがリード曲の「CARRY LOOSE」で、レコーディング自体すごく楽しかったです。メンバーの歌入れ中は待ち時間になるんですけど、パンちゃんとYUiNAちゃんのレコーディングする姿を見て、2人ともすごく自分に対する理想というか、ハードルが高くて驚きました。すごくしっかり歌えているのに、苦戦してるみたいな顔をして歌い直す姿勢がカッコよかった。私もそうやってストイックにやっていかなきゃいけないなと思いました。過去の自分は感情的に歌いすぎてしまうところがあって、そんな自分が嫌でした。もっとサラっとした感じで歌ってみたいと思っていたんですけど、レコーディングしてみたら、逆に「感情を乗せられていない」と指摘されて。レコーディングを進めるうちに明るい感情を出すのが下手なことに気付きました。
──でも得意なものも見つかったんじゃないですか?
ウルウ・ル 「WEATHERCOCK」のレコーディングでは「息の量が多い声を出して」「息の量を全開にしてしまっていいよ」と指示があって。そういう歌い方が新鮮ですっごく歌いやすかったです。その逆の歌い方もできなきゃいけないから、息の量を減らす歌い方も並行して練習しています。歌い方にも種類があるんだなって思いつつ、「WEATHERCOCK」みたいな歌い方は得意かもしれないって思いました。あと「悲しいトーンの曲はいい」ってけっこう褒めてもらえました。
──「WEATHERCOCK」の最初のパートがウルウ・ルさんですが、確かに切ない感じの声でよかったです。ウルウ・ルさんはこの「WEATHERCOCK」を含めてアルバム収録の13曲中3曲の作詞を担当していますが、もともと文章を書くのは得意だったんですか?
ウルウ・ル 作文はちょっと得意でした。
──今回は作詞を皆さん全員、提出はしたんですよね?
YUiNA はい。私は1曲も採用されなかったんですけど、これから選ばれるようにもっとがんばりたいです。
なぐり書きから生まれた「ERASE and REWRITE」
──それぞれ思い入れのある曲についても聞かせてください。まずはパンさんからお願いします。
パン 私は自分で作詞した「ERASE and REWRITE」です。この曲は自分の中にあるBiSとCARRY LOOSEがテーマです。「過去」という言葉もあるように、最初はBiSに対する気持ちをストレートにメモに殴り書いたみたいな感じで。私、メンブレ(メンタルブレイク)してすごく落ち込んだときは、「これを歌詞につなげよう」とかそういう気持ちなしに、ただのメンヘラみたいなメモを書くんです。「死ね」みたいな(笑)。
──溜め込む前にメモに吐き出すんですね。
パン その延長で思い出したことをちょいちょい歌詞にも出してるんですけど、いい意味でそんなに考え込んでない言葉を並べたんですね。ドカンと伝えたかったというか、表したかったんで。BiSに対する戻せない過去も含め、「慣れ合えない 顔はどこなんだい」とか。
──強めというか、少し攻撃的な言葉が多いのもそういう理由からだったんですね。
パン けっこうトゲのある言葉が並びましたね。そういう尖った気持ちも大事だけど、結局は前に進まないといけないというのをいろんな人からも言われて、「あ、そうだな」とは自分でも思って。だからそういう過去を消して、変えていきたいという気持ちをサビで表現しています。私も自信がそんなにないから、「プライドがない」っていう言葉を入れたり。けっこうストレートな思いです。BiSのときから私はこういう歌詞を書いてはいたんですけど、採用されなくてですね。今回、初めて採用されました。
──素直な気持ちを歌いつないでいくことで、過去への思いが浄化されるような感じもしますね。
パン そうですね。まだBiSを含め、消化できていなものがたくさんあるから。なんかそういう自分の気持ちを次につなげるための歌です。消して、書き換えていくという。
絶望的な気持ちを救った「pretender」、理想郷を描いた「やさしい世界」
──続いてYUiNAさんお気に入りの曲は?
YUiNA 12曲目の「pretender」です。私は絶望的な気分だったときにこの曲を初めて聴いたんです。「何度でも絶望だって感じればいいのさ 笑えればいいのさ」と歌っていて、すごく心に刺さりました。今は絶望でも、あとになって笑えたらいいんだと思えた。個人的に、ウルちゃんの作詞した歌詞の中で一番解釈しやすい内容だなって。歌詞が全部自分の中に入ってきたので、レコーディング中に感動して泣いてしまいました。
──そんな曲をこれから歌っていくというのは素敵なことですね。ウルウ・ルさんはYUiNAさんの話を聞いてどう思いましたか?
ウルウ・ル 私は自分のことを歌詞にするのが本当に下手くそで。もともと自分の話をすること自体あまり得意ではなく、人を見て思ったことしか書けないんです。SNSを見ながら深く考えた歌詞があったんですけど、それは採用されなくて。「pretender」には「馬鹿な鳥」というワードがありますが、考えすぎずにパッと思い付いた言葉だったからよかったのかもしれません。私はWAggに入った当初、泣いてばかりいて。家でもWAggの準備期間中も毎日のように泣いていました。でも虚しさとかに潰されて終わっちゃったら何も始まらないから、泣くこと自体はいいんですけど、泣いているだけで終わったらダメなのかなと思いまして。そういう気持ちを書きました。
──ありがとうございます。ではウルウ・ルさんのお気に入りの曲についても続けて聞かせてください。
ウルウ・ル 1曲目の「やさしい世界」です。これも私が作詞した曲なんですけど、パッと思い付いたワードがサビに入っています。あるとき「僕らいつか大人なって死んでくんだな」という言葉がふと浮かんで、そこから膨らませていきました。朝の通勤ラッシュって、他人にぶつかっても基本的にみんな謝らないですよね。それが今じゃ当たり前だし、私もそうなっちゃったし。「やさしい世界」とは言ってるけど、そんな世界がないこともわかってるんです。ぶつかったりしてもお互いが謝らないと、「謝られないことが当たり前」で謝らなくなっちゃうし、負の連鎖が起きてるんだろうなと思って。私も別にそんな優しい人間でもないし。全員にとっての「やさしい世界」があったらいいなという思いを歌っています。
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ユメカ、UFOと遭遇する