ナタリー PowerPush - カーネーション

無敵のビートアンセム誕生! 新生カーネーションが向かう栄光の道

大切なことはステージ上で示したい

──大田さんは「ジェイソン」のビート感はどうですか。

大田 テンポが速いだけじゃなく、ギターのリズム感や疾走感が最初に聴いたときから気持ち良くて。だからリズム隊はギターのぐわっと持っていく感じとか、歌 に乗っかっていけばいいみたいな。悩まず一気に行けちゃうところが、今の俺たちには合ってるのかもしれないね。アゲアゲモードだよね。

インタビュー写真

直枝 今回のバージョンの「ジェイソン」を初めてお客さんの前で披露したライブは、中原さんのドラムソロから始めたんだよ。あれは俺らが彼女にライブの一番 初めに「行ってこい」って言って1人で送り出したの。お客さんが「カーネーションこれからどうなるんだろう?」みたいにいろいろ不安を抱えている中、俺たちは別の部分で楽しんでたんだよね。でも、そういう新しい試みを見せないとみんな元気出ないでしょ。カーネーションが抱えていた問題とか、辛い状況に対する愚痴とか、そういうことをMCで説明しても聞きたいヤツなんかいないと思うしさ。

──そういうことは音楽で示す、と。

直枝 うん。演奏はもちろん、ステージ上の態度や楽しさでも表現する。お客さんには気持ち良い思いをして帰ってほしいんでね。それにはこっちがもっと過剰に サービスしたり、過剰に見せていくことが何よりだと思ってるんだよ。ドラムソロから始めた演出は結果的に意表を突く形になったけど、今人数が少なくなって何がおもしろくなったのかというと、ある程度放し飼いでポッと ステージに行くことで、おもしろいものが新しい形になるみたいなところなんだよね。これが5人いたらフリーな部分が難しくなる。

──確かに5人時代はステージングがカッチリとしてましたもんね。

直枝 今回のシングルに収録している2002年版の「ジェイソン」を聴けばわかるけど、決めごとのアレンジばかりでしょ。あの頃の俺たちは多分メンバーがそれぞ れの役割を決めないと演奏できないような状況だった。会話ができない感じというか。

──2002年の「ジェイソン」がレコーディングされなかったのは、そういうしっくり来ない部分があったからということなんですね。

直枝 バンドが状況的に一番危ないときだったんでね。あの曲を完成形に持っていく気力や体力がなかった。それはずっと心残りだったんだけど。

──それで結果的に「封印」ということになったと。

直枝 あれはあれでしょうがなかったから、決断としては間違ってない。だから、今回作り直そうと思ったときに、歌や言葉を乗せることで曲を生き還らせる作業 が必要だった。やっぱり俺たちは歌ありきのバンドだし、歌あってのインプロだからね。「ジェイソン」を改良するためには、このくらいの冒険が必要だったってこと。

「ジェイソン」はオバケのような曲

──「ジェイソン」を聴いて思ったのは「REAL MAN」と「SUPER ZOO!」に近いなってことなんです。曲が似てるってわけじゃなくて、曲が出てきた過程……それによってもたらされた空気感が似てるというか。「REAL MAN」は、直枝さんがそれまでの直枝政太郎名義から本名の直枝政広でクレジットを変えたことで、新しいカーネーションや新しい直枝を打ち出していくんだよという節目の曲だったと思うんで すよ。それに対して「SUPER ZOO!」はいろいろ悩み抜いた状況を冷静に笑い飛ばそうみたいな曲でしたよね。「ジェイソン」は「REAL MAN」のポジティブに前に進む感じと、「SUPER ZOO!」の大変な状況だけどそれを飲み込ん で前に進もうという感じ、その両方が入っている曲だなと思ったんです。

直枝 「ジェイソン」は「夜の煙突」と近い、重要な曲だと思ってる。「やるせなく果てしなく」みたいな歌モノは内省していく過程でぶわーっと吹き出てくるも のなんだけど、「ジェイソン」とか「夜の煙突」みたいな曲は1人の頭の中だけじゃ生まれてこないものなんだよね。何かわけがわからない、バンドの念みたいなものがあって、その渦の中から、もやっと浮かび上がってくる化け物みたいな。楽曲というものじゃなくて、もう一つ別の存在みたいなものが意図しないところに生まれてくる感じ。だからオバケのような曲なんですよ。「夜の煙突」も「ジェイソン」も。

──カーネーションのライブって、アンコールの最後の最後は「夜の煙突」で終わるというのが定番というか、お約束になっていますよね。でも、先日のライブでは「夜の煙突」で終わって客電が上がって、完全に終了モードになったときにBGMとして「ジェイソン」が流れ出した。そうしたらお客さんが帰らずにサビをみんなで歌い出して客席が自然に盛り上がりはじめて、お客さんがいつまでも帰らないから、直枝さんたちが出てきて予定外のアンコールをやるという。「仕込みか?」ってくらい美しい流れで僕は感動したんですけど(笑)、楽屋であのジェイソンコールを聞いててどう思いました?

直枝 いや、こりゃまずいな、と。

一同 (笑)。

直枝 出ていかなきゃねとは思ったんだけど……。

大田 曲がなかった(笑)。俺も体力的に限界だったし。

──そのライブで既に演奏してる新曲のCDがプロモーションとして流れているのに、それでも「もっとやれ!」って大合唱が起きる。なかなか見られない光景ですよね。だから僕はあれを見て「夜の煙突」に匹敵するカーネーションの新しいアンセムができたなと実感したんですよ。

直枝 この曲がリリースされて、ツアーをやったらそのあたりは僕らにもわかるようになるんじゃないですかね。「ジェイソン」の置かれている状況が。ツアーの 過程でこの曲がどういうふうに化けていくのか、それがすごい楽しみなんですよ。

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フランク・ザッパと安室奈美恵とPerfume

──そういえば、そのライブのMCで直枝さんが「最近安室奈美恵のコンサートに行っていたく感動した」という話をされてましたね。でも、安室に感動しつつフランク・ザッパの超マニアックなトークショーをやったり。何ていうか、振り幅広いですよね。

直枝 彼女が去年出した「NEW LOOK」って曲が有線で流れてて「誰だろうこれ?」って思って調べたんだけど、発売前だったこともあって、最初は全然わからなか ったんだよね。それで深く検索とかしてるうちに安室奈美恵だってことがわかった。それでチケットを取って横浜アリーナまで観にいったの。多分その「探し当てた感」みたいなのが良かったんだろうね。俺はこんなポップな ものが好きなんだとも思ったし。ザッパみたいな挑戦的、前衛的な音楽を自分が好きなのはわかってたけど「俺は芸能のド真ん中にいる安室だって好きなんだ。それは忘れちゃいけないし、カーネーションはその両方をちゃん と心に持って活動するべきだ」って思ってるんですよ。

──ポップなものというと、直枝さん、ブログでPerfumeについても何回か触れてましたよね。よく聴かれるんですか?

直枝 大好き。

──具体的にはどこが好きですか?

直枝 キレがいいね。

──ダンスの?

直枝 うん。

大田 (笑)。

直枝 あと曲も良かったよ。「マカロニ」と「ポリリズム」が好きだな。

──有線で安室の曲を知ったように、直枝さんはいわゆるヒット曲的なものも聴くんですね。

直枝 意識して聴いてるわけじゃなくて、向こうから自然に入ってくる感じ。自然に任せて。あ、でも伊集院光のラジオだけは好きなんだよ。

──へえ!

直枝 前に伊集院がラジオで安室のコンサートに行ったって話をしてたんだよね。「NEW LOOK」も良かったし、伊集院も観にいくなら俺も行かなきゃなって思った の。

ニューマキシシングル『ジェイソン』 / 2009年4月15発売 / 1500円(税込) / Cosmic Sea Records / XQGL-1001

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CD収録曲
  1. ジェイソン
  2. Flange
  3. 恋するふたり
  4. ジェイソン(2002 legendary version) Live at SHIBUYA CLUB QUATTRO 2002.2.3
  5. ジェイソン(Short version)
カーネーション

プロフィール

1983年に前身バンド・耳鼻咽喉科のメンバーで直枝政広(当時は政太郎/Vo,G)を中心に結成。1984年にシングル「夜の煙突」(ナゴム)でデビューを飾る。現在のメンバーは直枝と1990年加入の大田譲(B,Vo)の2人。幾度かのメンバーチェンジを経て、数多くの名作を発表し続けている。緻密に作られた楽曲や演奏力抜群のアンサンブルはもちろん、直枝の人生の哀楽を鋭く綴った歌詞や、圧倒的な歌唱、レ コードジャンキーとしての博覧強記ぶりなどで、音楽シーンに大きな存在感を示している。2008年に結成25周年を迎え、2009年1月、1986年加入以来不動のドラマーだった矢部浩志が脱退。現メンバー、直枝政広(Vo,G)と大田譲(B)の2人にサポートドラマー中原由貴(タマコウォルズ)を迎え、約2年半ぶりの新録作品となるシングル「ジェイソン」をリリースした。