ナタリー PowerPush - カーネーション
無敵のビートアンセム誕生! 新生カーネーションが向かう栄光の道
「売れる」ということに決着を付けたい
──カーネーションって希有なバンドですよね。83年に結成してから長い充電期間などもおかずに作品は作り続けてるし、ライブも定期的にやっている。それと並行して直枝さんはソロ作品を出したり、ソロのライブをやったりしていますけど「帰る場所」としてのカーネーションがきっちりあるような印象を受けます。今「それが生きることだ」というお話がありましたが、カー ネーションをここまで頑なに続けてきた背景には「生きること」以上に、ほかの意味もあるように思えるんですが。
直枝 これだけメンバーの出入りも激しかったのに、カーネーションという形をいつまでも引きずって続けているのは、一つは流れに逆らわないって こともあるけど「何が起こっても運命として受け入れる」みたいな部分があるんだよね。あと、俺らは「売れなくても良い音楽創ればそれでいい」なんて思ってないし、もっと売れたいんだよ。その部分に決着を 付けたいし、それができないと悔しくてしょうがない。だから、なんでみんな簡単にバンドやめちゃうのかなぁって(笑)。
──バンドを良い状態にして、「売れる」ために新オフィスを作って代表に就任した、と。就任して何カ月か経ちましたが、正直どうですか?
直枝 いや、まだ「本当は俺たちがこんなきついことやらなくてもいい」と思ってるところはあるよ(笑)。でも、お金周りは(スタッフの)横尾さ んがきちんと見てくれているので、純粋に何を今やりたいのかとか、できるのかとか、次はこうしたほうがいいんじゃないかとか、そういうことだけ純粋に考えられるようになった。なので、メンタル的なストレ スはまったくなくなりましたね。バンドとしてもこれからだなっていう手応えはすごく感じてます。
「民主的なバンド」なんてありえない
──カーネーションはずっとバンドという形態にこだわられてきて、結果的に今2人という最少人数になったわけですが、大田さんは2人になったカーネーションはどうですか。
大田 矢部が「もうできない」って言ってきたときにはさすがにいろいろ考えたけど、最終的には俺も止まろうとは思わなかったし、カーネーション がなくなるとも思わなかったね。そこの部分ははっきり2人とも同じ意見だったし、俺は「直枝がいればカーネーションだ」って思ってるから。で、カーネーションは今1人じゃないからバンドかな、ぐらいの感じ (笑)。
──バンドとしてどうするかという部分の決定は、基本的に直枝さんが中心になって決めてきたんですか? それともメンバーでいろいろ話し合って決めてきたんですか。
大田 大体直枝君が決めてきたね。俺は別にそういうことを気にしないし、そもそも「民主的なバンド」なんてありえないよ。民主的な話し合いなん てしてたら途中で絶対に喧嘩してやめちゃうか、メンバーの誰かが我慢するしかない。そうしないとバンドなんて成立しないし、そんなのは嘘だよね。まぁ、男2人っきりになっちゃったからちょっと気持ち悪いときもあるけど(笑)。
直枝 何もここの関係は変わらないですよ。良い距離感で普通にやれてるんじゃないかな。
ビートに突き動かされて幻の曲が“復活”
──あらためて、久しぶりに良い状態を迎えられた新生カーネーションのニューシングル「ジェイソン」について伺いたいんですが、元々この曲は5人編成時末期にライブ 演奏だけで披露されていた曲ですよね。一から新曲を創るのではなく、昔演奏していた幻の楽曲のリメイクを一発目に持ってきた意図を教えていただければ。
直枝 まずは直感ですね。矢部君が抜けたあと、サポートドラムに中原由貴さんをゲストに迎えて2回目のステージやるときに何をぶちかまそうかなって考えてたら、この曲がふと降りてきたんだよね。「ああ、そうだ」と思って、即Pro Toolsを立ち上げてインプロ部分も含めたデモを創っちゃった。みんなに聴かせたらスタッフサイドから「すぐにシングルで出したらどうですかね?」って話があって、俺も「このフットワークはいいぞ」と思ったから、リリースしようという話になった。この曲はとにかくビートが特徴で、前に前に転がる感じというか、今までにな いくらいテンポが速い。こういう曲を今やらなきゃダメだって感じたんですよ。
──歌詞も力強くいろいろなことを言い切ってますよね。
直枝 あれを創っているとき高揚してたんだよね。歌詞はそれこそ一気に1分くらいで創った。つまりはビート感なんだよ。デモテープを作っている段階で、曲に煽られて自分がすべて忘れられるくらいビートに酔えた。
──カーネーションであれだけビートを強調した曲って「学校で何おそわってんの」以来じゃないですか。
直枝 そうですね。テンポが速いという意味では「Wild Fantasy」とかあるけど、あそこまでストレートなビートを感じるのは久々ですね。
CD収録曲
- ジェイソン
- Flange
- 恋するふたり
- ジェイソン(2002 legendary version) Live at SHIBUYA CLUB QUATTRO 2002.2.3
- ジェイソン(Short version)
カーネーション
1983年に前身バンド・耳鼻咽喉科のメンバーで直枝政広(当時は政太郎/Vo,G)を中心に結成。1984年にシングル「夜の煙突」(ナゴム)でデビューを飾る。現在のメンバーは直枝と1990年加入の大田譲(B,Vo)の2人。幾度かのメンバーチェンジを経て、数多くの名作を発表し続けている。緻密に作られた楽曲や演奏力抜群のアンサンブルはもちろん、直枝の人生の哀楽を鋭く綴った歌詞や、圧倒的な歌唱、レ コードジャンキーとしての博覧強記ぶりなどで、音楽シーンに大きな存在感を示している。2008年に結成25周年を迎え、2009年1月、1986年加入以来不動のドラマーだった矢部浩志が脱退。現メンバー、直枝政広(Vo,G)と大田譲(B)の2人にサポートドラマー中原由貴(タマコウォルズ)を迎え、約2年半ぶりの新録作品となるシングル「ジェイソン」をリリースした。