音楽ナタリー PowerPush - CAPSULE
“機能を変えた”中田ヤスタカの思惑
エクストリームスポーツの音楽版「WAVE RUNNER」
──では、現在のEDMムーブメントの真っただ中に乗り込んでいこうみたいな、そういう覚悟はないんですか? 実は今回の「WAVE RUNNER」からは、そういう意志も感じたんですけど。
乗り込んでいくというか、もともと僕、そっち側ですから(笑)。
──まあ、そうですよね(笑)。
その真っただ中にいながら、それでもちゃんと聴ける音楽を自分は作ってきたつもりだし、「今それをやるとしたらこうだよ」というのが今回の「WAVE RUNNER」というアルバムかな。
──アルバムタイトルの「WAVE RUNNER」というのは?
「WAVE」はもう、毎日DTMで波形を見まくっているんで(笑)。そこにスピード感を付ける意味で「RUNNER」という言葉を付けてみただけです。僕、エクストリームスポーツの映像を観るのが好きなんですよ。バイクで空を飛んだり、ラリーカーで荒地を走ったり、自転車ですごい斜面を下ったりとか、それの音楽版みたいなイメージですね。
──あまりそういうイメージはないですけど、実際に自分でそういうエクストリームスポーツ系のことをやってみたりは?
まったくないです(笑)。
──ですよね(笑)。先ほど前作は文化部で今作は運動部と言ってましたけど、じゃあ、想像上の運動部という感じなんでしょうか?
そういう意味ではやっぱりフェスをはじめとするイベントですね。
──ああ、確かに今のフェスって文化系というより、すごく体育会系的なものになってきましたよね。
あと、DJの小さな動きで大観衆を動かす、あのダイナミズム。あれはまさに運動部的なものだと思います。
毎回“デビュー”する気持ちで臨んでいます
──CAPSULEは今年で結成18年になります。もちろんバンドの18年と、CAPSULEのようなユニットの18年というのはその中身も意味合いも全然違ってくると思うんですけど、改めてその長い歴史に驚かされるというか。
僕は毎回“デビュー”する気持ちで臨んでいます。毎作、1枚目のアルバムのつもりで作っていたい。学生時代からノートを使うのが嫌いなんですよ。ずっとルーズリーフ派で、毎回1ページ目から始めたい(笑)。
──昔のページはどんどん捨てちゃうみたいな。
そう。CAPSULEにはそういう性格が一番出ていると思います。例えば、僕のやってることは読み切りマンガ家だと思ってもらったほうがいいと思う。主人公は常に作品の中にいるから。僕はただの作者だし、その作者に興味を持ってもらわなくてもいい。まあ、もしその作者の顔を見たければ、ライブやイベントに来ればそこにいるわけですけど(笑)。
──(笑)。
プロデュースの場合は主人公が明確にいるから、そこはいいんですけど、CAPSULEの場合、僕らじゃなくて音楽が主人公ですね。
──ただ、音楽ジャーナリズム的に言うなら、「現在は何の時代か?」と問われれば、それは「中田ヤスタカの時代」ということになるわけです。で、仮にその起点をPerfumeの「ポリリズム」とするならば、あれからもう7年以上の時間が経過していて。過去の時代を作ってきたアーティストやプロデューサーと比べてみても、「中田ヤスタカの時代」というのはかなり持続力があるなと。
売れるか売れないかっていうのは、あまり僕本人とは関係ないんで。手がけた楽曲を世の中に広めてくれるのはレコード会社をはじめとするスタッフの皆さんですから。まあ、売れたときに褒められるのはうれしいですけど(笑)。もちろんトップチャートを狙って実際にそれを作ってしまうミュージシャンというのもいると思いますけど、僕の場合、そこまでは割り切れないんですよね。
──ああ、でも、それはすごくわかります。中田さんのやっていることって、そこまで狙い澄ましたものではないんだろうなって。
だから、ここでもマンガ家の例を出すと、僕が思っているのは何か記録を残したりすることではなくて、ただ連載を打ち切られなければいいなってことだけなんですよ。
──時には編集者の意見も取り入れつつ、みたいな?
ただ、音楽の中身については自分のバランスを信用してほしいですね。CAPSULEでデビューしたばかりのときはそういうこともありましたから。「ここにギター欲しくない?」みたいな(笑)。それでも世の中に届けてくれるスタッフには感謝していますけど。もし、自分のような黙々と制作に没頭するアマチュア時代の感覚で音楽を作ることが許されるならば、もっと面白いミュージシャンが新しくいっぱい出てくると思うんですよ。だから音楽業界にいる人には、新人にも自由に音楽をやらせてほしい。
──いい話ですね。
もちろんクオリティを追求することも大事ですが、それはあとからいくらでも付いてくるものだと思いますね。まず聴いてて楽しいかどうか。ショボくても面白かったらいいと思うし、そうすれば日本の音楽にも多様性がもっと出てくるんじゃないかな。そういう時代が来ればいいなって思う。特にCAPSULEで自分がやっていることに関しては、「好きで、楽しんで作品を作ってるな」って空気を、これから何かのクリエイターを目指している人にも感じてもらえたらいいなって思うんですよね。本当は(アレンジまで含めた曲作りを)誰かに任せなくてもいいのに、誰かに任せてしまうケースがあまりにも多いような気がします。そこで、1回好きなようにやらせてみたらいい。やらせなかったら、一生できないままだから。リスナーはみんな、プロっぽさを聴きたいわけじゃないと思うし、そうしたら、音楽シーンは絶対にもっと楽しいものになるはずだから。
- ニューアルバム「WAVE RUNNER」 / 2015年2月18日発売 / unBORDE
- ニューアルバム「WAVE RUNNER」
- 初回限定盤 [CD2枚組] / 3240円 / WPCL-12019~20
- 通常盤 [CD] / 2700円 / WPCL-12026
DISC 1
- Wave Runner
- Another World
- Dreamin' Boy
- Hero
- Dancing Planet
- Depth(vocal dub mix)
- Feel Again
- Unrequited Love
- White As Snow
- Beyond The Sky
DISC 2(初回限定盤のみ)
- Another World(extended mix)
- Hero(extended mix)
- Feel Again(extended mix)
- White As Snow(extended mix)
- CAPSULE -"WAVE RUNNER" RELEASE LIVE-
(CAPSULEワンマンライブ) - 2015年4月5日(日)大阪府 なんばHatch
- 2015年5月15日(金)福岡県 DRUM LOGOS
- 2015年5月22日(金)愛知県 DIAMOND HALL
- 2015年5月29日(金)東京都 赤坂BLITZ
- CAPSULE -"WAVE RUNNER" RELEASE PARTY-
(CAPSULE出演イベント) - 2015年3月13日(金)東京都 ageHa
- 2015年3月14日(土)石川県 AFTERHOURS、DOUBLE
- 2015年4月28日(火)北海道 alife sapporo
- FLASH!!! -中田ヤスタカ(CAPSULE)"WAVE RUNNER" DJ TOUR-(中田ヤスタカ出演イベント)
- 2015年3月21日(土・祝)岡山県 YEBISU YA PRO
- 2015年4月10日(金)沖縄県 club lounge saicoLo
- 2015年4月11日(土)静岡県 Planet Cafe
- 2015年4月18日(土)茨城県 VOICE
- 2015年4月24日(金)愛媛県 CLUB BIBROS
- 2015年5月1日(金)京都府 世界WORLD
CAPSULE(カプセル)
Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅのプロデュースをはじめ、「LIAR GAME」シリーズのサウンドトラックや映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の挿入楽曲、映画「アップルシード アルファ」の日本版メインテーマほか国内外の数々の音楽制作を手がける中田ヤスタカのメインの活動の場となるユニット。1997年にボーカルのこしじまとしことともに結成。2001年にシングル「さくら」でCDデビューした。作詞・作曲・編曲はもちろん、演奏・エンジニアリングなどすべてを中田ヤスタカ自らが手がけるオールインワンなスタイルから繰り出される楽曲群は、音楽界のみならず、服飾や美容、映像などクリエイティビティを共有するシーンからも熱い支持を得ている。2015年2月には通算15枚目のオリジナルアルバム「WAVE RUNNER」をリリースした。