ナタリー PowerPush - CAPSULE
中田ヤスタカの現在地
CAPSULEがニューアルバム「CAPS LOCK」をリリースした。所属レーベルをunBORDEに移しての第1弾となる本作は、これまで以上に中田ヤスタカが自身の趣味性を強く打ち出し、斬新かつ心地よいサウンドを詰めこんだ意欲作となった。
今や日本を代表する音楽家として活躍を続ける中田ヤスタカが、マーケットのニーズから離れ、これほどディープなアルバムを作った理由とは? プロデュース楽曲についての話題も交えながら、CAPSULEというユニットの存在意義について中田ヤスタカ本人に話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也
いい曲を作りたいだけ
──今回の新作はレーベル移籍後初のアルバムとなるわけですが、移籍して変化したことなどはありますか?
作品を作るスタイルに関しては変わらないんで、まだわかんないですね。どこのレーベルから出るかを意識して作ってるわけでもないですし。
──unBORDE / ワーナーミュージック・ジャパンというワールドワイドなレーベルに移って世界展開の可能性も広がりましたが。
いや、僕自身は特別に海外のことを意識しているわけではないですね。というより僕は海外に住んだこともないですし、意識してもしょうがないかなと思っています。
──あ、そうなんですね。
それは日本国内もなんですけど、どこのために作ってるっていう感覚は希薄ですね。自分ではただいい曲を作りたいと思ってるだけで、ターゲットを決めて狙って何かをやるっていうことがそもそもあまりなくて。作って楽しかった、気持ちよかった、聴いてていい感じだなって思うところまでが自分の範疇というか。ただ「CAPSULEの音楽が世界中で受け入れられる」と思って動いてくれているスタッフには感謝してますけどね。
“何か”のためじゃない音楽
──今回のアルバム「CAPS LOCK」は、これまで以上に濃厚な作品になりましたね。サウンドも密室感が強く、音楽シーンやマーケットのことを意識せずに作られた印象を受けました。
今って、例えばドラマだったりCMだったり映画だったり、“何か”のために作られた音楽が多いと思うんですけど。そういう音楽が世の中にいっぱいあるんで、CAPSULEではそれとは違うことをやりたいなと思って。
──でも中田さん自身も“何か”のための音楽はたくさん手がけていますよね。
うん、Perfumeやきゃりー(ぱみゅぱみゅ)のプロデュースや「スター・トレック」の挿入曲とかまさにそうですし、だからこそ、その楽しさもメリットもよくわかっていて。もし自分がプロデュースとか映画のサウンドトラックとかを何もやってなかったら、たぶんCAPSULEでそういうことを全部詰め込んだ楽曲を作っていると思うんです。ただ、今はCAPSULE以外でいろいろな活動の面白さも体験できているので、今回のアルバムでは個人の仕事とCAPSULEの活動をちょっと分けようかなと思って。
──その結果、今回のアルバムにはいわゆる歌モノ的なポップソングはほぼなくなりました。
それは単純にCAPSULEとして音楽を作る上での気分の問題なんですけどね。だから今作が別に今後の方向性を決めてるわけじゃなくて、なんていうか読み切りマンガみたいな感じです。CAPSULEっていう2人組で何をやるかはその都度考える。作者は一緒だけど毎回内容が違うっていう。
作品が“主役”
──このアルバムはどんな作品にしようと考えて制作しましたか?
あの、初めて聴いて盛り上がれる音楽っていうのがあると思うんですけど、作り方として。つまり、その音楽を初めて聴く人に対して、あとどれぐらいでピークが来るかを予想させながら、ある地点に向かってカウントダウンしながら盛り上がっていく曲。今はそういう形の曲が世の中にすごく多いと思うんですけど。
──ここはサビ前の抑えめのパートで、このあとバン!って爆発する、といった展開を想像できる音楽ということですか?
そうですそうです。そういう曲はフェスとかDJでかけても実際すごく盛り上がるし、この数年はCAPSULEでそういうものをずっと作ってきてた。でも今はいいかなって(笑)。みんなで盛り上がるための、コミュニケーションツールみたいな音楽じゃなくて、それぞれが自由な環境で“聴く”ための音楽が世の中にもうちょっとあってもいいのかなと思って、そしたらこういうアルバムになりました。
──じゃあこのアルバムは、ライブやDJでかけることを考えずに作った?
このアルバム自体が“本番”なんですよ。今、アーティストにとっての本番はステージ上でのパフォーマンスだと思われることが多いですけど。
──CDがライブの予習のためのアイテムになっている風潮もありますね。
またはライブを思い出すためのある意味道具だったりね。でもCAPSULEでは作品を“主役”にしたかった。“作りっぱなし”で成立する音楽があってもいいんじゃないかと考えたんですよね。そういうスタイルで作られた音楽を聴く習慣を増やすきっかけになればいいなっていう気持ちもありますね。
──ライブは実際どうするんですか?
そもそもCAPSULEのライブっていうのは、小説家が自分の書いた小説を読者の前で朗読してるみたいな感覚でやってたんですよ。それにパフォーマンスすることを前提で作っていないので、このアルバムの曲でステージに立つことは今のところないと思うんですけどね。
- ニューアルバム「CAPS LOCK」 / 2013年10月23日発売 / unBORDE / Warner Music Japan
- 初回限定盤 [CD2枚組] / 3000円 / WPCL-11582~3
- 通常盤 [CD] / 2520円 / WPCL-11584
DISC 1
- HOME
- CONTROL
- DELETE
- 12345678
- SHIFT
- ESC
- SPACE
- RETURN
DISC 2 ※初回限定盤ボーナスディスク
- CONTROL(extended mix)
- DELETE(extended mix)
- ESC(extended mix)
CAPSULE(かぷせる)
Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅのプロデュースをはじめ、「LIAR GAME」シリーズのサウンドトラックや映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の挿入楽曲ほか国内外数々の音楽制作を手がける“中田ヤスタカ”自身のメインの活動の場となるユニット。1997年にボーカルのこしじまとしこと共に結成。2001年にCDデビュー。作詞・作曲・編曲はもちろん、演奏・エンジニアリングなどすべてを中田ヤスタカ自らが手がけるオールインワンなスタイルから繰り出される自由奔放かつ刺激的な楽曲群は、音楽界のみならず、服飾や美容、映像などクリエイティビティを共有するシーンからも熱い支持を得ている。ワールドワイドの大型フェスにも多数出演し、音響・映像・照明まで徹底的に構築したパフォーマンスでオーディンスを熱狂させている。