ナタリー PowerPush - capsule
さらに純度を高めた意欲作「WORLD OF FANTASY」
売れる曲だとは思わないけど、もっと売れたら面白いなとは思う
──中田さんが思う“カッコよさ”について具体的に伺いたいんですけど、その基準はご自身の中の流行によるものなんでしょうか。それとも世の中の流行やシーンの動向みたいなものも考慮されるんですか?
そういう意味で言うと完全に自分です。でも自分って世の中に存在してるから、その影響は受けてると思いますね。例えば今、日本の東京っていう街に住んでいて、そこで起こるいろんなこととか街の変化とか、それこそなんか面白い店できたとか、よく行く服屋がなくなったとか(笑)、やっぱりそういう周りの動きには影響されてると思います。僕はそれを音楽にしていくっていうことですよね。
──じゃあ自分がカッコいいと思って発表した作品が受け入れられないかもしれないといった不安はないですか?
うーん、それは毎回ありますよ。自分は「これすごくね? めちゃめちゃいいのできたよ!」って100%思ってても、でもそれをみんなが好きって言うかどうかっていったら、それは難しいだろっていう気持ちもあるんです。だから「これが絶対に売れる」っていうのを目指して作ってるわけじゃないけど、でも聴かれないのも悔しいし。だから自分がすげえカッコいいと思うものを、みんなも普通にカッコいいと思う状態にしたいとは思う。そういうエネルギーを込めたいっていうのはいつも思ってるんですけどね。
──今まで10年やってきて「カッコいい作品ができた」と思って世に出したのに反応がイマイチだった、みたいなこともありました?
それはわかんない。反応ってのがなんなのかよくわかんないんですよね。もし反応=セールスだったとしたら、もっと売れてもいいと思いますけど(笑)。売れる曲だとは思ってないけど、もっと売れたら面白いなとは思うんですよね。だってこんなアルバムが普通のJ-POPの棚に並んでること自体ちょっと面白いですからね。
こしじまさんがトラックを聴いてうれしそうにしてるのがいい
──中田さんがcapsuleで音楽を作る際に、聴き手のことはどれくらい考えてるんですか?
そうですねえ、リクエストに応えて「こういうの好きでしょ?」っていう要素はゼロかもしれない。でも聴いてくれる人のことは喜ばせたいんですよ。例えば定食屋で、注文したものと違うものが来たけど、食ってみたらめちゃくちゃ美味かったみたいな(笑)、そういうのがいいですね。
──なるほど。ありがちな表現だと「いい意味でファンを裏切りたい」みたいなことになるんですかね。
まあ裏切ろうとも思わないですけどね。裏切ろうとも応えようとも思わないです。ほんと自分のことしか考えてない。だから音を変えてやろうとかそういう意識もない。変えなきゃいけないとも思ってないし、変えたくないとも思ってない。何も思ってないです。
──前とは違う新しいことをやりたいとか、そういう気持ちもない?
ないです。だって変えようと思わなくても変わるでしょ。同じことやろうと思わなかったら自然と変わると思う。
──そうですね。
あんまりこう自分で何か狙いを持たずに、コンセプトとかっていうより、ちゃんと好きなことやろうみたいなとこはありますけどね。
──聴き手のことは特に考えない、ということですが、では制作の際にこしじまさんのことは考えますか?
そうですね(笑)。capsuleはこしじまさんじゃないとできないですから。今回は特にそれを感じたかもしれないです。やっぱり実験の度合いとか挑戦する量とか、こしじまさんだからできるってところは大きいんで。自分の出す音とかも時代によってけっこう変わってきてると思うんですけど、それと同じように、こしじまさん自身も「これがこしじま」みたいなものを特に持たない。だから「すごくcapsuleだな」と思うんですよ、こしじまさんの存在自体が(笑)。
──エゴが強いタイプのボーカリストではないですしね。
うん、だからデザイナーとモデルの関係というか、教授と助手というか、まあ監督と女優でもいいですけど(笑)。こしじまさんって性格的に「どんなんがいい?」って訊かれるのあんまり好きじゃないタイプなんですよ。でもレコーディングで自分の声を録った後にどんどんトラックが上がってきてカッコよくなっていってる、っていうのがわかった瞬間すごいうれしそうな顔してるから、それってなんかいいなと思って。
──capsuleの場合、ボーカルを録ってる時点では曲の全体像は見えてないですもんね。
うん、だからできあがっていく過程で「でしょ!?」って思うわけですよ。「ヤバいっしょ? 意味わかったっしょ!?」みたいな(笑)。その楽しさはあります。大変だけど楽しいっていう、その感じはcapsuleならではだと思いますね。だから、こしじまさんに「capsuleの曲はカッコいい」って自信を持ってもらえれば、それで半分成功みたいなとこはあるかもしれないです。
毎日好きなことをやってるだけ
──お話を伺ってるとやっぱり中田さんは楽しそうに見えますし、自由に活動できている印象があります。
うん、capsuleは楽しいですよ、やっぱり。
──やっぱり一番やりたいことはcapsuleでやる感じですか?
どれが一番って言うのは言い切れないですけどね。全部あるから逆に楽しめてるところもあるし、capsuleだけずっとやってたらしんどすぎるし(笑)。やっぱりいろんな曲を作るのが自分の気持ち的には楽しいです。だから本当はいろんなことをローテーションでできれば一番幸せなんですけど。
──中田さんって常に制作しているイメージがありますけど、休みはとってないんですか?
いや、休んでますよ、全然。休むっていうか遊ぶっていうか、普段からそんなに無理はしてないです。無理しなきゃいけない状況のとき以外は(笑)。
WORLD OF FANTASY (MUSIC VIDEO) / capsule
DISC 1
- OPEN THE GATE
- WORLD OF FANTASY
- I JUST WANNA XXX YOU
- STRIKER
- KEEP HOPE ALIVE
- I WILL
- WHAT iS LOVE
- I CANT SAY I LIKE YOU
- PRIME TIME
- CLOSE THE GATE
DISC 2
- WORLD OF FANTASY (Extended-Mix)
- STRIKER (Extended-Mix)
capsule(かぷせる)
Perfumeのプロデュースをはじめ、日本人初となるカイリー・ミノーグへのリミックス提供など、国内外数々のアーティストを手がける“中田ヤスタカ”自身のメインの活動の場となるユニット。ボーカルにこしじまとしこを迎え1997年に結成。サウンドメイキング、アートディレクション&デザイン、スタイリングのすべてを中田ヤスタカ自身が担当する。2001年にシングル「さくら」でデビュー。エレクトロやハウスを基調にした革新的なサウンドはクラブシーンはもちろん、ファッションシーンでも絶大な人気を誇る。また、中田ヤスタカは映画のサウンドトラックやテレビ番組のテーマ曲などを手がけるかたわら、DJとしても自身主催のレギュラーイベントを実施。さらにゲストDJとしても数多くのイベントに参加するなど、多方面にて活躍中。