ナタリー PowerPush - capsule
さらに純度を高めた意欲作「WORLD OF FANTASY」
capsuleのニューアルバム「WORLD OF FANTASY」が5月25日にリリースされる。この作品はベスト盤「FLASH BEST」のリリースや「LIAR GAME 2」サウンドトラック制作などを経て、前作「PLAYER」以来約1年2カ月ぶりに発表される待望の新作だ。
今回ナタリーでは首謀者である中田ヤスタカに初のインタビューを実施。このアルバムに込めた思いをじっくりと聞いた。
取材・文/大山卓也
capsuleでは純粋にカッコいいことだけを集中してやる
──攻撃的かつ高品質な、capsuleらしいアルバムになりましたね。
そうですね。capsuleだからできることがあるというのが、ほかの仕事をやってるうちによくわかってきたんで。
──というと?
capsuleはアマチュアのときから唯一続けてるものだし、誰かに頼まれてやってる音楽じゃないんですよね。ただ自分が好きだからやってるっていう、その純度をもっと上げていこうかなって。だから今回は何よりも“音楽先行”で、純粋にアルバム作るぞっていう気持ちが強かったです。
──サウンド面で今回、特に心がけたことはありますか?
capsuleにはこしじまさんっていうボーカリストがいるんですけど、僕はプロデューサーとボーカリストって感じじゃなくて、“2人でcapsule”っていうバランスでやりたいんです。これまでは模索を続けてきたけど、今回やっとそのバランスが見えてきた。だから僕が歌ってるわけじゃないけどツインボーカルみたいな感じというか。
──ツインボーカル?
この曲はインスト、この曲はポップな歌モノとかって分けるんじゃなく、capsuleならではの融合感にこだわってみたくて。歌と間奏も分けずに、僕の出してるフレーズもボーカル並に立ってるっていう、そういう意味でのツインボーカル感ですね。象徴的なフレーズを1曲の中に絶対入れて、この曲=このフレーズみたいなものを全部の曲が持ってるっていうふうにして。2人ユニットならではの面白さを出したかったんですよね。
──それは、例えばこしじまさんが音作りに関して要望を出すということではなく?
あ、そういうことではないです。作業的には博士と助手みたいな感じですから。ただ、これまではボーカルを素材として録って、僕のほうで音にあわせて加工してたんですけど、今回はこしじまさんから近づいてもらう部分も増えたんです。今まで聴いたことのない声の出し方をしてもらったりもしてます。
──それは今回新たに思いついたやり方じゃなく、ずっとやりたかったことなんですか?
そうですね。
──今回、それが実現できたのはなぜなんでしょう?
いや、もう一気に作ったからっていうのもあるし、タイアップものを全部ソロでやっちゃったからっていうのもあるし。capsuleでは純粋にカッコいいことだけを集中してやろうと思ったんじゃないですかね。
自分にとって100%以上の力を出さなきゃいけない場所なんです
──今回の制作は短期間で集中して行ったそうですね。
うん。capsuleの場合は、なんか制作中に「おっ!」って思うタイミングがあるんですよ、毎回。
──それはレコーディングの途中で?
そうです。「おっ!」て思ってからは早いんですよ。プロデュースの仕事だと、レコーディングで歌を録ってからボツにしたりできないけど、capsuleの場合はこしじまさん呼んで何回も歌ってもらって一番最後に「今日のテイク全部なし!」みたいなこともできるんで、だから始めのほうは実験ですね。で、途中でアルバムの芯になりそうなものが見えてきたら、もうその後は完成まですぐです。
──いつまで経ってもアルバムの芯になるアイデアが出てこないとか、スランプで全然曲ができないとか、そういう状況にはならないんでしょうか?
そういうのはないですね。確かに、作り始めるまで一番大変なのはどう考えてもcapsuleなんですけど。でもまったくできないってわけじゃないですからね。
──確かに好きなものを自由に作ってるという感じは、音を聴いてるとすごく伝わってきます。
だから一番大変だけど一番面白いっていう感じ。一番しんどくて一番興奮してるんですよね。
──プロデュースワークとcapsuleの一番の違いはやっぱりそこですか?
うん、実験できる量がやっぱり全然違いますからね。スタジオでいろいろ試行錯誤したけどなんにもできなかったとかって、プロデュースの場合は無理ですから。みんなスケジュール割いて来てくれてるのに「今日はなんか気分じゃないからごはん行くか」とかできないし(笑)。
──でも、逆にそういう制約があるほうが作りやすかったりもするんじゃないですか?
そうですね。逆に楽できる部分はあります。
──その点capsuleは自由すぎる分、何を作ればいいか迷うこともあったり?
まあ、自分がカッコいいと思えるものを作るっていうだけなんですけどね。だからスタジオで「これヤバい!」って思えるかどうかが一番重要で。capsuleは、自分にとって100%以上の力を出さなきゃいけない場所なんです。それってすごい難しいことだし、楽しいことなんですよね。サントラの仕事とかだと監督に「すげえ」って言わせたいっていうところがあるけど、capsuleだと自分に「すげえ」って言わせたい。その違いはありますね。
──中田さんにとって「これヤバい!」って思えるのは具体的にどういうときなんですか? 良いメロディが書けたときですか?
いや、そういう具体的な何かっていうのはなくて、カッコいいなって思える音がスピーカーから出てるときですね。どこか一部分がカッコよくて、ほかが引き立て役っていうんじゃなくて、全部がカッコいいと思える部品でできてるものを作りたい。その純度を上げるためにもう10年以上やり続けてるんです。いつになったら完成するのかはわかんないけどやり続けてるんですよね。「これができたら死んでもいい」と思えるアルバムが作れたら、capsuleやめようと思ってるんですけど(笑)。
──でもその言葉どおり、capsuleは毎回100%以上の力で純度を上げ続けてるわけですよね。
それによって自分の幅が広がるのを感じる瞬間が一番楽しいですからね。でも難しいですよ。ミラクルを量産しろって言われてるようなもんですから。
──(笑)。
でもやりがいはありますね。
DISC 1
- OPEN THE GATE
- WORLD OF FANTASY
- I JUST WANNA XXX YOU
- STRIKER
- KEEP HOPE ALIVE
- I WILL
- WHAT iS LOVE
- I CANT SAY I LIKE YOU
- PRIME TIME
- CLOSE THE GATE
DISC 2
- WORLD OF FANTASY (Extended-Mix)
- STRIKER (Extended-Mix)
capsule(かぷせる)
Perfumeのプロデュースをはじめ、日本人初となるカイリー・ミノーグへのリミックス提供など、国内外数々のアーティストを手がける“中田ヤスタカ”自身のメインの活動の場となるユニット。ボーカルにこしじまとしこを迎え1997年に結成。サウンドメイキング、アートディレクション&デザイン、スタイリングのすべてを中田ヤスタカ自身が担当する。2001年にシングル「さくら」でデビュー。エレクトロやハウスを基調にした革新的なサウンドはクラブシーンはもちろん、ファッションシーンでも絶大な人気を誇る。また、中田ヤスタカは映画のサウンドトラックやテレビ番組のテーマ曲などを手がけるかたわら、DJとしても自身主催のレギュラーイベントを実施。さらにゲストDJとしても数多くのイベントに参加するなど、多方面にて活躍中。