ナタリー PowerPush - CANTA

ベテランロッカー3人組が鳴らす 電子音 meets ハードロック

楽器の演奏は相当うまい

──今回、レコーディングはどんな感じで進めていきましたか?

雷電湯澤 まずは僕とルークでスタジオに入ってドラムを録っていきました。とは言え曲を作っている最中にレコーディングが始まるから、ドラムを録ったあとで曲の展開が決まることもあります(笑)。

──MASAKIさんはスタジオに行かないんですか?

MASAKI(B)

MASAKI 僕がベースを入れるのはだいたい最後なんですけど、スタジオに行かずに家でコンピュータで録っています。

ルーク篁 以前使っていたレコーディングスタジオは地下にあったんですけど、エレベーターがなくて。それでMASAKIくんがアンプをスタジオに入れるのをあきらめて「家で弾きますわ」って言って……(笑)。それ以来、ベースの音をスタジオで聴くことがなくなりました(笑)。

MASAKI アンプシミュレーターや録音機材もどんどん進化しているから、実際にアンプを鳴らさなくてもいい音で録れますからね。

──確かに皆さんは演奏は抜群ですから、録り直しや細かな編集作業もいらなそうですよね。

MASAKI 楽器の演奏はみんな相当うまいです(笑)。それに僕は家で録音したほうが細かくできるというか。スタジオで録る場合はルークさんが「今のテイクいいね」って言ったらそこでOKですけど、家だと自分でジャッジしなければならないので、より厳しくなるんですよ。

雷電湯澤 確かに判断基準が自分っていうのは大変だと思う。僕の場合はルークにお任せだから、逆に1人で録るとOKテイクを出しにくいな。

ギター好きにはシンセやピアノを嫌う人もいる

──各楽曲について伺っていきます。「HEAVEN'S WAITING」は作品中でもっともエレクトロ色が濃い曲でしたね。

MASAKI この曲はメロディがすごくよかったので、僕もレコーディングのときからアルバムの1曲目になるだろうと予想してましたね。

ルーク篁 イントロからシンセが入ってきて、途中で歌とピアノだけになる展開なんですけど、そこが聴きどころです。あと、この曲のメインフレーズはシンセで弾いているんですけど……ギター好きな人ってシンセやピアノを使った曲を嫌う人もいるじゃないですか? それが心配だったので、先ほど話したようにライブで先に試しました。一方で3曲目の「Flower Song」はダンスミュージックっぽくはありませんが、最初はダンスビートとの融合を目指していたんです。でも進めていくうちにTHE WHOっぽい雰囲気になっていって。そういう意味でも結果として面白いアレンジになったと思います。

雷電湯澤 「Flower Song」は最初はシーケンスのビートが全面に出ていたけど、最終的には打ち込みの音がかなり減ったことで大きく印象が変わったし、メリハリがつきました。ルークの言うようにTHE WHOっぽい雰囲気になっていったから、レコーディング中は「キース・ムーンが降りてこないかな」と考えながら叩きました。

──ダンスビートと言えば、「Fantasize」も「HEAVEN'S WAITING」のようにシンセと打ち込みのサウンドをふんだんに取り入れていますよね。

ルーク篁 ええ、これは「HEAVEN'S WAITING」の感触がよかったので、もう1曲くらいエレクトロ色が強いものがあったほうがトータルのバランスもよくなるかなと思って書いた曲です。

雷電湯澤 この曲のおかげで作品全体が引き締まっているし、アルバムの中でも裏番長的な存在だと思いますね。

MASAKI ベーシスト的な視点の話をすれば、こういう4つ打ちの曲って、ベーシストはどうしてもディスコっぽいオクターブのフレーズを弾きたくなるんです。でもこの曲ではあえてそれをやらずにドッシリとした演奏に徹して、最後に少しだけディスコ風のフレーズを弾く……その“わかっている感”を匂わせておきたかった(笑)。そこを聴いてほしいですね。

ルーク篁 この曲は歌詞のテーマが非常に前向きなんです。タイトルの意味は「夢想する」っていう意味ですが、同義語の“imagine”なんかよりもこっちの方が僕にとっては夢のある言葉だと思っていて。それをテーマにして歌いました。

8分の6拍子は人生のビート

──一方で、パワーバラードという趣きの「Forgiveness」や、雷電さんのドラミングが光るラウドなロックナンバー「Round and Round」、スイングするようなロックンロールの「Happy End」あたりはCANTAらしい楽曲ですよね。

ルーク篁 「Forgiveness」は僕の得意な8分の6拍子のリズムです。「ズンズンズン……」っていうノリがメロディを聴かせるのにもピッタリだし、淡々とした雰囲気に日常や人生みたいなイメージを当てはめやすいんですよ。僕にとっては人生のビートですね。

MASAKI こういう跳ねたリズムって、ベーシストはいかにノリよく弾けるかがだいご味で。叙情的な歌に対してどうやってベースでメロディを当てはめるか……そのあたりに僕のセンスのよさが出ていると思います(笑)。

ルーク篁 「Round and Round」は変拍子なんですけど、これはプログレ好きな雷電の得意技なんです(笑)。だからひさびさにこういった曲をやってみるかと思って。

雷電湯澤 いやあ、燃えましたね(笑)。僕はCANTAのレコーディングではリズムパターンを決めずに即興で録るんですが、「Round and Round」は先に時間をもらってパターンを作って、趣味として遊ばせてもらいました。

──気合いが入っていたんですね(笑)。

MASAKI 間奏のパートなんか、RUSHっぽいですよね。変拍子なんだけどそう感じさせないところがルークさんのセンスのよさだと思います。あと「Happy End」みたいな曲はライブの盛り上げ役だから、ステージでどんなパフォーマンスをするかというところを、レコーディングの段階から意識していました。

雷電湯澤 ロックンロールってカッチリしすぎると面白味がなくなっちゃうから、ドラムもあえてラフなリズムで叩いて。

ルーク篁 タイトルは「Happy End」なんですが、僕は映画などではハッピーエンドで終わるものがあまり好きではなくて。だから作品としての物語は終わるけど本当の人生はそのあとも続いていく、その先が見たい……ということを歌詞にしました。こういったサーフロック的なアプローチの曲って、歌詞もパロディや皮肉っぽいことをのせやすいんです。

8thアルバム「My Generator」 / 2013年7月10日発売 / 3000円 / CNTA-003
8thアルバム「My Generator」
収録曲
  1. HEAVEN'S WAITING
  2. Forgiveness
  3. Flower Song
  4. Round and Round
  5. Goo-Choki-Pah
  6. Fantasize
  7. Born to Love
  8. Happy End
  9. Make My Day
  10. Heartbeat
  11. Gone
CANTA(かんた)

元聖飢魔IIの構成員のルーク篁(Vo, G)と雷電湯澤(Dr)、アニメタルなどで活躍したMASAKI(B)によって2002年に結成された3人組バンド。メロディを重視したハードロックサウンドや一筋縄ではいかないアレンジ、随所に散りばめられたメンバーの円熟した演奏などで人気を博し、卓越したライブパフォーマンスにも定評がある。2002年に1stアルバム「EVERYTHING'S GONNA BE ALRIGHT」をリリースして以降、コンスタントにアルバムを発表。結成6周年の2008年にはロックとバラードにわけた2枚のベストアルバム「きらきら」「めらめら」を発表。さらにデビュー10周年となった2012年には7thアルバム「セヴン」をリリースした。またこのベストアルバム発売に伴い行われたツアー「CANTAの10周年! THE創業祭“Amazing Days”」のツアーファイナルである東京・Shibuya O-EAST公演はDVD「120414 LIVE!」として発売された。2013年7月に8thアルバム「My Generator」をリリースした。