音楽ナタリー Power Push - BURNOUT SYNDROMES
“リスナーの耳”で作り上げたメジャー1stフルアルバム
リスナーからしたら変な曲なんだろうな
──このアルバムは「アタシインソムニア」「エレベーターガール」「ナイトサイクリング」「エアギターガール」と、女性目線の楽曲が入っているところも印象的です。特に「エレベーターガール」と「アタシインソムニア」はどちらもエッジの効いたサウンドで、強い女性が主人公ですよね。この女性像っていうのはどういうところからきているのでしょうか?
熊谷 僕の女性の理想像なんだと思います。「BLACK LAGOON」っていうマンガのあとがきを読んだときに、作者の広江礼威先生が「僕は強い女性がカッコいいと思う。そういう人に惚れる」みたいなことを書いていて「俺もそうだな」って思ったんですよ。「ナイトサイクリング」も少女マンガの世界観を想像して書いた楽曲なんですけど、主人公の女性は男らしい性格だし、変にじめっとしてないんですよね。
──なるほど。「エレベーターガール」には女性のセリフが入っていますね。
熊谷 自分で言う歌詞ではないのかなと思って、声優の名塚佳織さんにお願いしたんです。名塚さんは「トトリのアトリエ」っていうゲームの主人公・トトリの声をやっていて。錬金して物を作るゲームなんですけど、錬金したときの「できた!」っていうセリフに何度も励まされて。ちょうど大学を退学した頃だったんですけど、とにかく曲作りで煮詰まったらそのゲームをやって「できた!」っていう声を聴いて、「じゃあ俺も錬金しよ!」って曲を作ってました(笑)。名塚さんはすごく声の幅が広い方だし、僕の中ではこの人しかいないなと思って。
石川 僕はそのゲームをやったことがなくて、熊谷がやってたのも知らなかったです(笑)。
──ファンとして、名塚さんのアフレコを生で見てどうでした?
熊谷 感動しましたね。「ああ、スピーカーの向こうにトトリがいるわあ」と思って……三次元と二次元の壁を超えた瞬間を僕は見ました(笑)。イメージにもピッタリで、名塚さんの声が入って「ああ、完成した!」と思いました。
──名塚さんのセリフから始まって、そこに熊谷さんのラップが入ってと、構成が面白い曲ですよね。歌詞も“エレベーターガール”を彷彿とさせるセリフや単語が並んでいますし。
熊谷 でも僕らの中ではかなり普通になり始めてます。リスナーからしたら変な曲なんだろうなと思いますけど(笑)。
廣瀬 11年間変な曲をいっぱい作ってくれたからね。おかげさまで普通になってきましたね(笑)。
石川 普通というか、「熊谷やなあ」とは思うよね。これぐらいカロリーがあるほうが聴いてるほうは飽きないのかなと思いますね。
いつか「1曲丸々ラップして」って言われてもおかしくない
──「アタシインソムニア」「エレベーターガール」のようなエッジの効いた楽曲群とは対照的だなと思ったのがカントリー調の「君のためのMusic」です。“アタシ不眠症”という意味を持つ「アタシインソムニア」という楽曲もある中で、この曲ではすごく穏やかな朝が描かれていますよね。
熊谷 これは「優しい曲を書きたいな」と思ってアコギで作りました。けっこうデジタルなサウンドの曲が多いアルバムなので、そうなると歌詞もナチュラルな、無農薬な感じの曲がこのアルバムに1曲あってもいいのかなって。
廣瀬 「優しい曲だなあ……」って思いながら聴いてると、いきなり2番のところでラップが入ってきて(笑)。
──これって熊谷さんの声じゃないですよね?
石川 これは僕ですね。
熊谷 石川はDJ石川名義でラジオをやってるんですけど、もともとこの曲自体がラジオを意識して書いた曲なので、歌詞にDJっていう言葉が出てきた時点で石川くんがやるのがいいんじゃないかなと(笑)。
──石川さんはラップパートがあるっていうのはいつ聞いたんですか?
石川 もともとデモでは熊谷の声で入ってたので、「ふーん」と思ってたんですけど。僕、嵐がすごく好きで。それで「ちょっとここサクラップっぽくやろうや」って言ったら……。
熊谷 俺が「イメージがあるなら君がやるべきだ!」って言って(笑)。
──このさわやかなラップは嵐の櫻井翔さんにインスピレーションを受けていたんですね。熊谷さんは楽曲を制作する上で、好きな声優さんの声を入れたり、ラップを入れたりと躊躇なくいろんな要素を混ぜ込んでいるのが印象的です。
熊谷 躊躇ないっすね(笑)。そこは自分の持ち味だと思っていて、それはおそらく中学生のときにリスナー以前にクリエイターとして音楽を聴き始めたからだと思います。教科書がないから本当に自由なんです。そして11年かけてそれを可能にする“腕力”を培ってきた。「よし、転調だ!」「ラップやろう!」とか。
石川 ずっと一緒にやってきてるんで、何が起きても「OK!」って言えるようにはしておきたいなと。いつかもしかしたら「1曲丸々ラップして」とか言われてもおかしくないので(笑)。
熊谷 自分でも何やるかわからないです。というか曲が言ってくるんですよね。「ここはこうしろ!」「面白いところないと寂しいからこの曲は!」みたいな。「じゃあ入れるよ」っていう、そういうイメージですね。
石川 熊谷がいろんなものを取り入れてくるっていうのは散々わかってるし、僕らは一番の熊谷のファンなので。
熊谷 僕が脳みそだったら2人は“筋肉”なんですよね。僕が考えたことをうまくフラットに出してくれる大事な存在ですね。
11年間で初めての「愛してるよ」
──アルバムのエンディングを飾る「Sign」は平和について歌った楽曲です。アコースティックギターの柔らかな音色が印象的です。
熊谷 災害だったり、外国で起こったテロだったり、最近暗いニュースが非常に多いなと感じて。それで「こういう時代に必要な歌が書けないかな?」と思って書きました。
──この曲を書くにあたって災害のことについても考えましたか?
熊谷 そうですね。自分が被災者の立場だったらどうなるかっていう想像力が、きっと次の明るい段階に進むために大事なことだと思うんです。それで、仮にそういう不運が自分の身に降りかかったとして、一番大切なのは結局人との絆のような気がして。たとえ大切な人と離れ離れになってしまったとしても、それもまた1つ生きる力になるんじゃないかなと想像して書きました。
石川 11年間やってきて、熊谷が初めて「愛してるよ」という言葉を使った曲なんです。彼の思いが全部入ってるのでそこを聴いてほしいですね。
廣瀬 この曲は熊谷の歌詞が伝わればいいなと思ったので、サウンドも優しい感じに仕上がってますね。ドラムもシンバル以外ほとんど入ってなくて。
──この曲を最後に入れた理由は?
熊谷 13曲目まで聴いてくれた人に「1回腰を下ろしてみんなで考えてみませんか?」っていう思いを込めて入れました。災害や人の死を歌った重いテーマの曲だと思うので、たまに「CDまるっと聴こう」ってときに平和について考えてもらえたらいいなあって。
──「Sign」が最後に入ることで、アルバムのバラエティ豊かな印象がより増しますね。
熊谷 僕は曲を作るときに「ここ足りねえだろ」っていう必要なパーツを入れていくやり方をするんですけど、アルバムも同じで、自然にバラエティに富んだ作品になります。それをこれからも続けていきたいなと思うし、リスナーとしてはそういうのが聴きたいんじゃないかなと。
廣瀬 BURNOUT節が散りばめられた作品に仕上がったなと思います。面白い曲もいっぱいあるし、最後の「Sign」みたいにメッセージ性の強いものもあったりするので、ぜひ皆さんに聴いていただきたいです。
石川 「FLY HIGH!!」「ヒカリアレ」と、「ハイキュー!!」のオープニングを2回やらせていただいて、この2曲しか知らない方もたくさんいると思うんです。このアルバムの13曲をぜひ聴いてもらって、僕らのことをもっと知ってほしいですね。今回ツアーでは憧れだった渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブもできるので、皆さんと一緒に夢だった1日が作れるのを楽しみにしています。
- メジャー1stフルアルバム「檸檬」/ 2016年11月9日発売 / EPICレコードジャパン
- 「檸檬」
- 完全生産限定盤 [CD+グッズ] / 3500円 / ESCL-4735~6
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / ESCL-4732~3
- 通常盤 [CD] / 3000円 / ESCL-4734
CD収録曲
- 檸檬
- Bottle Ship Boys
- FLY HIGH!!
- アタシインソムニア
- エレベーターガール
- ナイトサイクリング
- 君は僕のRainbow
- 君のためのMusic
- ヒカリアレ
- 人工衛星
- エアギターガール
- タイムカプセルに青空を
- Sign
初回限定盤DVD収録内容
- 「FLY HIGH!!」ミュージックビデオ
- 「ヒカリアレ」ミュージックビデオ
※副音声にメンバーがMVを解説するオーディオコメンタリー付
- 最新シングル「ヒカリアレ」/ 2016年10月26日発売 / EPICレコードジャパン
- 初回限定盤 [CD+グッズ] / 1500円 / ESCL-4717~8
- 通常盤 [CD] / 1000円 / ESCL-4719
全国ワンマンツアー「ヒカリアレ~未来への祈りを合図に火蓋を切る~」
- 2016年11月11日(金)
- 愛知県 ell.FITS ALL
- 2016年11月13日(日)
- 宮城県 enn 3rd
- 2016年11月16日(水)
- 大阪県 梅田CLUB QUATTRO
- 2016年11月20日(日)
- 新潟県 CLUB RIVERST
- 2016年11月25日(金)
- 東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 2016年12月3日(土)
- 広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
- 2016年12月4日(日)
- 福岡県 Queblick
<料金>
前売り:3500円 / 当日:4000円(ドリンク代別)
BURNOUT SYNDROMES(バーンアウトシンドロームズ)
2005年に結成された熊谷和海(G, Vo)、石川大裕(B, Cho)、廣瀬拓哉(Dr, Cho)による関西在住の3人組ロックバンド。“青春文學ロックバンド”というキャッチコピーで活動しており、熊谷による日本語の美しさを大切にした文学的なリリックで支持を集める。2010年に開催された音楽コンテスト「閃光ライオット」では準グランプリを獲得。2012年に無料CD「リフレインはもう鳴らない」を全国各地のCDショップやライブハウスなどで1万枚配布する。2014年にはタワーレコード限定シングル「LOSTTIME」、初の全国流通アルバム「世界一美しい世界一美しい世界」をリリースし、2015年5月にいしわたり淳治プロデュースのもと2ndアルバム「文學少女」を発表。2016年3月にはテレビアニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」第2クールのオープニングテーマを表題曲としたシングル「FLY HIGH!!」でEPICレコードジャパンからメジャーデビューを果たした。10月には「ハイキュー!! 烏野高校 VS 白鳥沢学園高校」のオープニングテーマ「ヒカリアレ」をシングルリリースし、11月にはメジャー1stフルアルバム「檸檬」を発売した。