音楽ナタリー Power Push - BUMP OF CHICKEN

光に彩られた真夏の思い出、命を描いた真冬の新曲

BUMP OF CHICKENが今年4月から7月にかけて開催した初のスタジアムツアー「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」。最新アルバム「Butterflies」を携えて行われたこのツアーでは全国で約30万人を動員し、ツアーファイナル公演は神奈川・日産スタジアムにて2日間にわたり実施された(参照:BUMP OF CHICKENスタジアムツアー終了「20年前も今も同じ気持ちでステージに」)。

このツアーの模様を収めたライブBlu-ray / DVDが12月21日にリリースされる。初回限定盤はメンバーのインタビューやすでに発表済みのミュージックビデオの別バージョン、360°カメラで撮影されたライブ映像などが特典として追加収録されるほか、ライブ音源を収めたCDも付属する豪華な内容となっている。さらに同じ12月21日には、テレビアニメ「3月のライオン」のオープニングテーマとして書き下ろされた新曲「アンサー」を配信リリース。彼らのこれまでの歴史とこの先の未来を表現したアイテムが、一挙にファンの手元に届く。

この同時リリースを記念した今回の特集では、ライブBlu-ray / DVDの見どころや新曲「アンサー」の魅力、バンドの現在の姿を分析。全4会場の様子をとらえたフォトギャラリーと合わせて楽しんでもらいたい。

文 / 柴那典 ライブ写真撮影 / 富永よしえ、古溪一道

DISC REVIEW

今年4月から7月にかけて、バンド初のスタジアムツアー「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」を行ったBUMP OF CHICKEN。約30万人を動員したツアーから、最終公演である神奈川・日産スタジアム公演の模様を全曲収録したライブBlu-ray / DVD「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY" NISSAN STADIUM 2016/7/16,17」が、12月21日にリリースされる。

本作を観てまず感じたのは、単にライブの模様を収録しただけでなく、そこに集まった2日間合計で14万人の高揚感、ワクワクするような気持ちもちゃんとパッケージされている作品だということ。

映像は開演5分前から始まる。今回のツアーのために藤原基央(Vo, G)が書き下ろしたアコースティック楽器と電子音が混じりあうインストゥルメンタルの楽曲と共に、カウントダウンの映像がLEDビジョンに映し出される。それと重なり合うようにして、手拍子をするオーディエンス、開演前のスタジアム周辺の風景、お客さん1人ひとりの笑顔が映し出される。そして会場の熱気が最高潮に達したところで藤原、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の4人がステージに登場し、藤原がギターを高く掲げて「Hello,world!」からライブはスタートする。そこまでの流れが、まるで映画のオープニングのような、とても美しいものになっている。

「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」日産スタジアム公演の様子。

アルバム「Butterflies」のリリースツアーという位置付けもあり、この日のライブで披露されたのは最新アルバムからの楽曲が中心だ。序盤は「パレード」や「ファイター」など、スリリングでドラマチックな展開を持つ楽曲で盛り上がりを生み出す。客席の中に設けられた小さなサブステージに移動し、アコースティックセットで「孤独の合唱」を披露する場面も見ものだ。ちなみに、サブステージからメインステージに戻る際のインストも藤原が書き下ろしている。

途中から空はだんだんと暗くなり、後半はとてもきれいな光の演出がスタジアムの大きな空間に広がる。圧巻は終盤だった。「ray」「虹を待つ人」から本編ラスト「Butterfly」へ。夜空をレーザー光線が舞い、オーディエンスの手首に巻かれたPIXMOBの放つLEDの光が客席を虹色に彩る。スタジアム全体を光が包み、「虹を待つ人」ではカラフルなチームラボボールが飛び交う。ライブのためにスペシャルなアレンジが加わった「Butterfly」では紙吹雪が舞う。アンコール「天体観測」の最後では花火が上がる。ツアーのクリエイティブディレクターを担当した東市篤憲を筆頭に多数のクリエイターが参画し最先端の技術を駆使したカラフルな演出が、幻想的でキラキラとした曲の世界観と見事に溶け合っていた。とてつもない高揚感だった。

そしてもう1つ印象的だったのは、ここまで大きな会場でも、BUMP OF CHICKENの音楽は「7万人の大観衆」ではなく「集まった1人ひとり」と呼応して響いているのが感じられた、ということだ。本作の特典映像に収録された「"BFLY" スペシャルインタビュー ~ツアーを振り返って~」で、藤原自身もそういう感慨を語っている。PIXMOBの光も、単に会場に一体感をもたらすだけでなく、1人ひとりのファンの興奮や感動を可視化しているかのように見えた。

「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」日産スタジアム公演の様子。

12月21日には、BUMP OF CHICKENの新曲「アンサー」も配信リリースされる。この曲は、彼らが10月よりNHK総合にて放送中のアニメ「3月のライオン」のオープニングテーマとして書き下ろした1曲だ。

もともとBUMP OF CHICKENと「3月のライオン」には深い関係がある。2014年11月に原作コミックスの10巻が刊行されたとき、バンドはマンガの世界観と呼応した楽曲「ファイター」を書き下ろし、それを聴いた原作者の羽海野チカが作品の前日譚の物語を描いたこともあった。今回のアニメでもその「ファイター」がエンディングテーマとなっているが、「アンサー」も、文字通り「ファイター」へのアンサーソングのような内容となっている。

「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」日産スタジアム公演開演前の様子。
「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」日産スタジアム公演開演前の様子。

「ファイター」には「ここにいるためだけに 命の全部が叫んでいる 涙で出来た思いが この呼吸を繋ぐ力になる」という歌詞がある。一方で「アンサー」では「心臓が動いてる事の 吸って吐いてが続く事の 心がずっと熱い事の 確かな理由を」と歌う。これまで多くのインタビューで語っているように、藤原はタイアップや主題歌を作曲する際には、作品の描いているものと自分の内奥にあるものとの重なり合う部分を探して、それを歌にするのだという。「3月のライオン」は、17歳のプロ将棋棋士・桐山零を主人公にした物語。東京の下町で暮らす3姉妹に出会って生まれた人間関係と心の変化、そして勝負の世界を生きる男たちの生き様が描かれる。「ファイター」と「アンサー」が、共に生命力や熱のようなものをモチーフにした楽曲になっているのは、ちゃんと必然的な理由があるのだと思う。

結成20周年を迎えた2016年のBUMP OF CHICKENは、とても旺盛な活動を繰り広げてきた。2月にはアルバム「Butterflies」をリリースし、幕張メッセにてバンド結成20周年を記念したスペシャルライブを開催した。4月から7月にかけてはバンド初のスタジアムツアーを開催し、8月には日産スタジアムで初披露した「アリア」、そしてこの「アンサー」と、新曲を続けざまにリリースしてきた。

BUMP OF CHICKENメンバーから、ナタリー読者に向けた直筆メッセージ。

単に活発なだけでなく、そのサウンドや世界観に統一した軸のようなものが感じられるのも、今年のBUMP OF CHICKENの活動を振り返っての印象だ。そのモードは、2014年にリリースした「RAY」から続くものであるように思える。眩しい光に包まれるような多幸感と、その裏側にある気高い孤独。そういうものを鮮やかに描く楽曲の力が、バンドが進んできた「音楽の冒険の旅」を引っ張っているように思える。

2017年、彼らの向かう先も、とても楽しみだ。

ライブBlu-ray / DVD「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY" NISSAN STADIUM 2016/7/16,17」 / 2016年12月21日発売 / TOY'S FACTORY
「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY" NISSAN STADIUM 2016/7/16,17」
Blu-ray初回限定盤 [Blu-ray+CD] / 8640円 / TFXQ-78147
DVD初回限定盤 [DVD2枚組+CD] / 7560円 / TFBQ-18190
Blu-ray通常盤 [Blu-ray] / 6480円 / TFXQ-78148
DVD通常盤 [DVD] / 5400円 / TFBQ-18191
Blu-ray / DVD収録内容
  1. Hello,world!
  2. パレード
  3. K
  4. カルマ
  5. ファイター
  6. 宝石になった日
  7. アリア
  8. 流星群
  9. 大我慢大会
  10. 孤独の合唱
  11. ダンデライオン
  12. GO
  13. 車輪の唄
  14. supernova
  15. ray
  16. 虹を待つ人
  17. Butterfly
  18. 天体観測
初回限定盤特典映像
  • "BFLY" スペシャルインタビュー ~ツアーを振り返って~
  • Opening Countdown Concept Movie
  • "GO" Stage Background Movie
  • "宝石になった日" Music Video "BFLY" Special Edition
  • "Butterfly" 360° Stage Movie
  • "流星群"@YAHUOKU! DOME
初回限定盤付属ライブCD収録曲
  1. Hello,world!
  2. パレード
  3. ファイター
  4. 宝石になった日
  5. アリア
  6. 流星群
  7. 孤独の合唱
  8. GO
  9. supernova
  10. Butterfly
配信シングル「アンサー」 / 2016年12月21日配信 / TOY'S FACTORY / iTunes Store・レコチョクほかにて配信
「アンサー」
BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によるロックバンド。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録した。2014年には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」の発表をはじめ、初音ミクとのコラボレーション、初の東京ドーム公演などでも話題を集めた。2015年末には初めて「NHK紅白歌合戦」に出場した。結成20周年となる2016年2月、約2年ぶりのフルアルバム「Butterflies」を発表し、地元・千葉県の幕張メッセにて「BUMP OF CHICKEN結成20周年記念Special Live『20』」を行った。4月からはバンド初のスタジアムツアー「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」を開催。12月21日にこのツアーの模様を収めたライブBlu-ray / DVD「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY" NISSAN STADIUM 2016/7/16,17」を発売するほか、テレビアニメ「3月のライオン」オープニングテーマの新曲「アンサー」を配信リリースする。