音楽ナタリー Power Push - BUMP OF CHICKEN
20周年の記念碑となった奇跡の一夜が映像化
BUMP OF CHICKENが現在のメンバー4人で初めてライブを行ったのは1996年2月11日。それから20年後、2016年2月11日に彼らの地元・千葉県の幕張メッセにて、結成20周年ライブ「BUMP OF CHICKEN結成20周年Special Live『20』」が行われた。この模様を収録したBlu-ray / DVDが、7月13日にリリースされる。このライブでは初期のレアな楽曲やライブ初披露の曲、さらに最新のヒット曲まで、幅広いセットリストで集まった2万5000人のファンを楽しませた。
今回の特集では待望の映像化となった今作の見どころを紹介すべく、音楽ライター・三宅正一によるレビューを掲載。さらにバンドを長年追ってきた古溪一道によるライブ写真の数々も披露する。
文 / 三宅正一 ライブ撮影 / 古溪一道
DISC REVIEW
2016年2月11日。BUMP OF CHICKENはニューアルバム「Butterflies」をリリースした翌日に幕張メッセにてバンド結成20周年を記念したスペシャルライブを開催した。その模様を記録したこのライブ映像作品「BUMP OF CHICKEN結成20周年Special Live『20』」には、ダブルアンコールの「DANNY」を除く全17曲が収録されている。やはり本公演のチケットはプラチナ化し、一夜限りのあまりに貴重なライブを望みかなわず目撃できなかった人も相当数いたようで、ファンにとってはまさに待望の映像化となる。
「みんな聴いてくれたから20年やり続けることができました。どうもありがとう」
ライブの終盤、藤原基央が口にしたとてもシンプルな、だからこそ感謝の念が切実に浮かび上がる言葉と共に、4人は2万5000人のオーディエンスに向かって深々と頭を下げた。彼らはインタビューの場でもたびたび「僕らは自分たちの音楽を聴いてくれる人たちがいて、初めて楽曲が完成するという気持ちが人一倍強い」と語っているし、ライブのMCではその事実に対して「いつもそれ以外の言葉を探すけれど、結局『ありがとう』以上に感謝を伝える言葉がないから、『ありがとう』と言うしかない」と、どこかもどかしそうにしながらも、「ありがとう」の一言にありったけの謝意を込める。バンドの「ありがとう」を1つの記念碑のように具現化したのがこの「20」というスペシャルライブだったのだ。本作を鑑賞してまず思ったのはそんなことだった。
この日、アンコールで演奏した初期楽曲「BUMP OF CHICKENのテーマ」(これが初のパッケージ化となる)の歌詞の最後にある「僕らは 君をベッドから引きずり出して 手を繋ぐため 魔法をかけた へなちょこの4人組」というフレーズにBUMP OF CHICKENの原型を見る。藤原基央、増川弘明、直井由文、升秀夫の4人がBUMP OF CHICKENというバンド名を掲げて初めてステージに立ってから、20年。「へなちょこの4人組バンド」は──こういう表現を本人たちは好まないかもしれないが、動かしようのない事実として──日本のロックシーンを代表すると同時に孤高とも言える存在になった。
スペシャルライブ「20」において、何よりも特筆すべきはセットリストの内容だろう。オーディエンスの大歓声に迎えられ、おそらくあえて派手な装飾を排したシンプルなステージに現れた4人が1曲目に「天体観測」を鳴らすのが象徴的だが、通常のツアーにおけるライブとは明らかに様相が異なる選曲で、楽曲が紡がれている。この日のライブにおいては、セットリストとそこに組み込まれた1曲1曲を丁寧に体現することが最高の演出なのだ。バンドのそういった声が画面を通して聞こえてくるようだ。1stアルバム「FLAME VEIN」収録の「バトルクライ」と「ナイフ」、1stシングル「ランプ」といった楽曲は初期からBUMP OF CHICKENの楽曲に触れてきた人たちの当時の記憶を鮮やかに呼び起こさせるだろうし、あるいは近作でBUMP OF CHICKENに出会った人たちにとってはバンドの原風景が閉じ込めれた楽曲に新鮮な響きを感じるかもしれない。ライブ初披露となった「ベル」しかり、初期の楽曲でありながら現在もライブ終盤のクライマックスを担うことが多い「ガラスのブルース」しかり、「Butterfly」や「Hello,world!」といった最新の楽曲しかり、色あせることを知らない名曲群を通してBUMP OF CHICKENがこの20年で培った音楽力が映像でもダイレクトに伝わってくる。
BUMP OF CHICKENがカントリーやブルーグラス、ブルース、アイリッシュトラッドといったルーツミュージックを昇華し、また近年はコンテンポラリーなダンスミュージックの方法論なども吸収しながら、ギターロックのフォーマットで独創的かつ普遍的な音楽像を提示し続けているということ、一貫して人生の真理と向き合った歌を描き続けているということを、いつも以上に一回性の趣が強いセットリストだからこそ改めて強く思い知るのである。
本作を鑑賞する誰もがBUMP OF CHICKENが歩んできた20年を追体験し、ここから先の未来にも思いを馳せるに違いない。
次のページ » LIVE PHOTO GALLERY
- ライブBlu-ray / DVD「BUMP OF CHICKEN結成20周年Special Live『20』」2016年7月13日発売 / TOY'S FACTORY
- Blu-ray初回限定盤 [Blu-ray+LIVE CD] 7560円 / TFXQ-78144
- DVD初回限定盤 [DVD+LIVE CD] 6480円 / TFBQ-18188
- Blu-ray通常盤 [Blu-ray] 6480円 / TFXQ-78145
- DVD通常盤 [DVD] 5400円 / TFBQ-18189
Blu-ray / DVD収録内容
- 天体観測
- R.I.P.
- バトルクライ
- ランプ
- 車輪の唄
- ひとりごと
- ナイフ
- Butterfly
- ロストマン
- ベル
- 66号線
- K
- ダイヤモンド
- ray
- ガラスのブルース
- EN1. Hello,world!
- EN2. BUMP OF CHICKENのテーマ
初回限定盤付属ライブCD
- 天体観測
- R.I.P.
- バトルクライ
- ランプ
- ひとりごと
- ナイフ
- ロストマン
- ベル
- ダイヤモンド
- ray
- ガラスのブルース
- BUMP OF CHICKENのテーマ
- BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"(※終了分は割愛)
- 2016年7月16日(土)神奈川県 日産スタジアム
- 2016年7月17日(日)神奈川県 日産スタジアム
BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)
藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録した。2014年には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」の発表をはじめ、初音ミクとのコラボレーション、初の東京ドーム公演などでも話題を集めた。2015年4月にはテレビアニメ「血界戦線」の主題歌「Hello,world!」と映画「寄生獣 完結編」の主題歌「コロニー」を収録した両A面シングルをリリース。同年末には初めて「NHK紅白歌合戦」に出場した。結成20周年となる2016年2月、約2年ぶりのフルアルバム「Butterflies」を発表し、地元・千葉県の幕張メッセにて「BUMP OF CHICKEN結成20周年記念Special Live『20』」を行った。4月からは全国ツアー「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」を開催中。7月に結成20周年ライブの模様を収録したライブBlu-ray / DVD「BUMP OF CHICKEN結成20周年Special Live『20』」をリリースする。