音楽ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN

“変わらない4人”の新曲とドキュメンタリー

劇場版「WILLPOLIS 2014」番場秀一監督インタビュー

12月5日から18日までの2週間限定で劇場公開される映画「BUMP OF CHICKEN "WILLPOLIS 2014" 劇場版」は、4月から7月にかけて行われ25万人を動員した全国ツアー「WILLPOLIS 2014」のドキュメンタリーと、ツアーのオープニングを彩ったCGアニメーションの完全版からなる2部構成。ここではドキュメンタリーパートの監督を務めた番場秀一へ話を聞き、長年バンドに深く関わってきた人物だからこその視点で映画やメンバーについて語ってもらった。

取材・文 / 鹿野 淳(MUSICA)

シナリオのないドキュメンタリー

──ご自分の作品が映画になるのは何作目なんですか?

2作目ですかね? THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(「THEE MOVIE-LAST HEAVEN 031011」)が映画と考えたら、あれが1本目ですね。

──2作目の完成、おめでとうございます。

ああ……(笑)。

──もしかして、(インタビュー時点で)まだ完成してない?(笑)

はい……まあほとんど完成に近付いたなって感じはあります。

──番場さんはたくさんビデオクリップを作られてると思うし、そのビデオクリップも作品性が高いものがたくさんあると思うんですけど、映画になるっていうこととか、映画の映像を撮るっていうときは、何か特別なことをされるんですか?

「BUMP OF CHICKEN "WILLPOLIS 2014" 劇場版」のライブドキュメンタリーパートのワンシーン。(c)TOY'S FACTORY / LONGFELLOW

今回はもともと映画になるっていう予定もなかったので、特に違いもなくいつもの感じで仕事してました(笑)。初めから映画だってわかってたら、もしかしたら違ったかもしれないですけど。……プレッシャーに負けてたかもしれないし(笑)。

──(笑)。番場さんは、バンドのドキュメンタリーを何度か手がけられてると思うんですけど、そういうときに注意することとか一番大事にすることって、どういうことなんですか?

できるだけ存在を消そうと思ってますね。そのやり方しかできないんですよね。そのやり方しかできないから、そうしてるだけですね。

──つまり、自分が演出した世界を出すっていうんではなくて、彼らの世界をどう覗くのかっていうほうがいい作品になるってことですよね。

そうですね。もしかしたら入り込んでいったほうがよかったのかもしれないんですけど、そういうのができないんで、こういうやり方しかできなかったんですけど……シナリオがないっていうことなんですよね。こっちで方向付けしないので……ありのままなんだと思います。

──それって、ミュージシャンの映像だからそういう感じで撮るのがいいんですか?

そうとは言い切れないと思います。あくまでも個人的なやり方なんじゃないかなと思ってます。……入り込んでいって撮ってるのも観てて面白いですし、ちゃんと筋書きがあるものも面白いと思いますし。でも、自分はこうやってちょっと遠巻きに見てるしかないっていう感じです。川口潤さん(bloodthirsty butchersやeastern youthなどのドキュメンタリー映画を始め、数々のディープなドキュメンタリー作りに定評がある映像作家)みたいなやり方もあるじゃないですか。ああいうのは僕すごいなと思っていて。観てて心から面白いですし。

グッとくるものを作ることに答えはない

──BUMP OF CHICKENのPVの中で、いつも子役の使い方がすごくお見事ですよね。それこそ「天体観測」から始まって、「車輪の唄」も本当に素晴らしい作品だと思います。

「BUMP OF CHICKEN "WILLPOLIS 2014" 劇場版」のライブドキュメンタリーパートのワンシーン。(c)TOY'S FACTORY / LONGFELLOW

そうですね、僕の(作品の)中にはいっぱい出てますよね。「天体観測」は、彼らの子供の頃っていうイメージがあるので。……子供の頃の景色みたいなのが浮かぶからですかね?

──BUMP OF CHICKENの音楽から?

はい。子供を使ってるときはいつもそんな気がしますね。……つながってるけど、もう戻れないみたいな感じですかね。

──ああ、まさに。過去のビデオクリップの中ですごく覚えていることとかってあります?

失敗したのもいっぱいありますし(笑)、「だったらもう1回撮ろうよ」みたいに彼らから励まされたことも何回かあります(苦笑)。そんなことで励まされるの、1回だけにしとけって感じですけど(笑)。「しょうがないから、もう1回やろうぜ!」みたいな。……思うんですが、やっぱり、僕の映像より音楽のほうがすごいなって感じてて、それに見合うような映像がなかなか作れないんですよ、正直。

──僕はジャーナリストで「音楽は言葉にできるのか」っていう命題とずっと闘い続けてるんですけど、そう聞かれたときに、「音楽を言葉にする意味はあると思ってます。それは、言葉でしか表せない音楽もあるんじゃないかと思っているからで、自分がやっていることが音楽として無意味なことなのか、音楽を汚していることなのかっていったら絶対違うと思っています」っていつも思ってるんです。番場さんはどうですか?

僕はまだ自信を持って音楽と映像が幸せな状況になっているとは言えないですね……自分がそんなにいいものを作っているかはわからない、本当によくわかってないです。とても難しいです。

──その難しい仕事を選んだきっかけはなんだったんですか?

藤原基央(Vo, G)(c)TOY'S FACTORY / LONGFELLOW

僕は音楽に、ビデオクリップとして音楽と映像がくっついてる状態から入ったんですよ。そういう音楽番組を観たところから始まってるんです、自分の音楽が。だからビデオクリップが作りたいと思いました……すっごいカッコいいと思ったんですよね。

──実際やってみてどうだったんですか?

……グッとくるものを作るっていうことには答えがないなって気付きました(笑)。なかなかうまくいかないんですよ、カッコいいロックをカッコいいビデオにするのって。今でもそうなんですけどね。

──ご自分の型を作るのが一番ラクなんでしょうけどーー。

それをやるとなんかつまんないものしかできないって思うし。

──音楽も映像も一期一会ですよね。

そうなんですよね。毎回毎回一期一会です。だからかなり見失います。でも……音楽ってそういうものだと思いますね……。

映画「BUMP OF CHICKEN “WILLPOLIS 2014” 劇場版」2014年12月5日公開(※2週間限定上映)
BUMP OF CHICKEN WILLPOLIS 2014 劇場版

出演:BUMP OF CHICKEN(藤原基央、増川弘明、直井由文、升秀夫)

●CGアニメーション
監督:山崎貴
出演:松坂桃李 / 杏 / 水田わさび / 平幹二朗 / 山寺宏一

●ドキュメンタリー
監督:番場秀一

BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって1994年に結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録し、ロックファンを中心に熱狂的な支持を集める。2011年2月には「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~」の主題歌に「友達の唄」を提供。2013年3月に初のライブ映像作品「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」、7月に初のベストアルバム「BUMP OF CHICKEN I [1999-2004]」「BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]」をリリースした。2014年は7枚目のオリジナルアルバム「RAY」の発表をはじめ、初音ミクとのコラボレーション、地上波テレビ番組への生出演などでも話題を集める。同年11月、羽海野チカ「3月のライオン」のテーマソングとして書き下ろした「ファイター」、映画「寄生獣」の主題歌「パレード」をそれぞれ配信リリースする。12月にツアー「WILLPOLIS」を追ったドキュメンタリーとオープニングムービーで構成された映画「BUMP OF CHICKEN "WILLPOLIS 2014" 劇場版」が2週間限定で劇場公開され、2015年2月にはDVD / Blu-ray化される。

番場秀一(バンバシュウイチ)

京都府出身の映像作家。1997年にFANATIC◇CRISIS「SLEEPER」でディレクターとしてデビューして以来ビデオクリップを中心に数々の映像作品を手がけており、BUMP OF CHICKENがメジャーデビュー以降に発表したほぼすべてのビデオクリップで監督を務めている。2005年より映像制作会社・祭(MAZRI)に所属。