ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN
4人の言葉&AR座談会で読み解く「RAY」の物語
ストーリー自体がアルバムを伝える力のブースター
──ブックレットのイラストに「BOC-AR」アプリをかざすと、ARの空間の中で何かが起きるわけですね。
川田 そうですね。まずはブックレット自体がそのままでも読んで楽しめるものになっていて。
山崎 そこにアプリをかざすと、いろんなムービーが始まったり、立体物が出てきたりするわけなんです。
川田 監督の描いた絵が3次元になって動き出す。別の次元に進化するんです。やっぱり映像作家の方が描いた絵だけあって、そこからARとして映像が出てくると、すごくつながりがある。ちょっと見たことのない体験になっています。
──その内容はどういうふうに決めていったんでしょうか?
直井 全員で会議して作っていきましたね。
藤原 どこのページでどういうことが起こるのか、「こうなったら面白い」ってみんなで意見を出し合って決めていきました。
──そもそも、CDのブックレットでARを用いて物語を表現するということが初めてなわけで。やり方はいくらでもあるわけですよね。
増川 僕らの話し合いで出たのは、ARであることの必然性が大事ということですね。「YouTubeで観ればいいんじゃない?」みたいなものが出てきても意味がない。絵があって、そこから先にARがあることの楽しさが大事で。
藤原 ストーリーもそうですね、ただ入っていればいいわけじゃない。このアルバムにこのストーリーが付属している意義がやっぱり欲しかった。このストーリーあってこそのこのアルバムなんだって思えなきゃいけない。そういうものになったと思います。
──単に新しい技術を使って面白いことをやるというだけではなく、バンドの音楽、伝えたいことと密接にリンクしているのが大事なことだったんですね。
山崎 そこが重要なところですね。伝えようとしているストーリー自体が、アルバムで伝えようとしていることとうまく一緒になっている。こういう技術とか映像とかって、単なるオマケになってしまいがちなんだけれども、これはそうじゃないんです。実は彼らの表現の一部になっている。ストーリー自体がアルバムを伝える力のブースターになっているし、音楽に技術や映像がプラスされることで、表現として上の次元に達している。そういう作品なんですね。
僕らのやりたいことはまだ終わっていない
──お話を聞かせていただいて、新しい表現の可能性というものをすごく感じました。「音楽の未来」と言うと大袈裟になってしまうかもしれないけれど、そういう可能性を切り拓いた手応えもあるんじゃないか、と。
藤原 秀ちゃん、どう? やっぱ切り拓けたんじゃない?
升 切り拓けたねえ(笑)。
一同 (笑)。
升 僕らは技術を作る側ではないですけれども、今回僕らが伝えたいことというのは、技術があってこそ表現できたものだったんで。
直井 ただ、僕らのやりたいことは正直まだ終わっていないんですよ。まだまだアイデアはたくさんあって。でも山崎さん、川田さんとこのチームでできたということには本当にワクワクしているし、「世界で一番ここがすごいぞ!」っていう手応えがあるんですよ。何より、こんなに楽しい会議はないって思う(笑)。
増川 ほんとにね、会議はいつも面白いです(笑)。
──ARという技術にとっても新しい可能性が生まれましたね。
山崎 ARというのはまだ始まったばかりの最新の技術で、今の世の中ではまだ物珍しさで捉えられていると思うんです。「そんなこともできるんだ」って、その技術自体が面白がられている段階だというか。でも、今回BUMP OF CHICKENがARという世界に踏み込んだことで、ARが物語性を獲得した。ARという技術でしか語れない物語が生まれたと思うんです。それがすごく画期的なことだと思いますね。
──なるほど。
山崎 これは、彼らがただ新しい技術を面白がるだけではなく、もう一歩進んでその先にあることをしようと思ったからできたことなんですよね。ただ一方通行で映像を見せられるのではなく、イラストだけで伝えられるわけでもなく、1つひとつの体験を獲得していく作業を通して物語が伝わってくる。それは結局ARじゃないと伝えられないような内容になっているんですね。
藤原 ありがとうございます。すごくうまく言ってもらえて。
川田 あの、今の僕が言ったことにならないですか? なんとかARの力を駆使して。
一同 ははははは!(笑)
──ARじゃないと伝えられないというのが大事なことだった。
山崎 そうですね。しかもそれはアルバム、音楽と一体になったときに初めて効果が出ることで。だから最初のアイデアをもらったときに「これはやる価値があるな」って思ったんです。単純にアルバムの付録じゃなくて、ある物語を伝えるためのツールとしてARが活きている。そんなこと、今まで誰もやってないと思うんです。
直井 やっていないですね。
山崎 だからこそ「いくら忙しくてもこの瞬間に立ち会っとかないといけない」と思ったんです。これは、もしかしたらARが物語を獲得した歴史的な瞬間かもしれない。これから先ARという技術がどうなるかわからないですけれど、やれることの限界値は相当広がったと思いますね。
- BUMP OF CHICKEN ニューアルバム「RAY」/ 2014年3月12日発売 / TOY'S FACTORY
- 初回限定盤[CD+DVD] 3900円 / TFCC-86456
- 初回限定盤[CD+DVD] 3900円 / TFCC-86456
- 通常盤[CD] 3059円 / TFCC-86457
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収録曲
- WILL
- 虹を待つ人
- ray
- サザンクロス
- ラストワン
- morning glow
- ゼロ
- トーチ
- Smile
- firefly
- white note
- 友達の唄
- (please) forgive
- グッドラック
初回限定盤DVD 収録内容
Music Video
- 虹を待つ人
- ゼロ
- Smile
- firefly
- 友達の唄
- グッドラック
2013.8.9 Live at QVC Marine Field
- Stage of the ground
- firefly
- 虹を待つ人
- プラネタリウム
- 花の名
- ダイヤモンド
- メーデー
- K
- 天体観測
BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)
藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって1994年に結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録し、ロックファンを中心に熱狂的な支持を集める。その後も人気を拡大させ、2008年には22万人を動員する大規模なツアーを成功に収めた。2010年に6thアルバム「COSMONAUT」をリリースし、2011年2月には「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~」の主題歌に「友達の唄」を提供。同年12月から2012年7月にかけて約3年半ぶりのライブハウス&アリーナツアーを開催した。2013年3月に初のライブ映像作品「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」、7月に初のベストアルバム「BUMP OF CHICKEN I [1999-2004]」「BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]」をリリース。2014年3月12日には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」をリリースする。藤原の書く情景描写に優れた文学的な歌詞、緻密に練られたバンドアンサンブルが大きな魅力。