ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN
4人の言葉&AR座談会で読み解く「RAY」の物語
今まで開かなかった扉を開けていかなきゃいけない
──3年ぶりという事実に不思議な感覚を覚えるのは、コンスタントなリリースと、ライブも含めてバンドが人前に立つ機会が多かったからだと思うんですね。
藤原 そうかもしれないですね。僕もすごく曲を書いてたっていう気持ちでいたんですけど、いざアルバムにまとめてみたら未発表の曲がそんなになかったなと思って。それはタイミングタイミングでシングルをリリースしてたからだし。
──ホントにこれまでにないくらいリスナーと開かれたコミュニケーションを取ってきた3年間でもあったと思うんですよね。
藤原 まず基本的にいい音楽を作りたい、いいライブをやりたい、そしてそれを1人でも多くの人に届けたいという気持ちがあって。その思いは歳を重ねるごとに、バンドがキャリアを積むごとに、より強くなってるんですけど。そのことは何年も前からインタビューのたびにお話ししてきたと思うんです。
──うん。
藤原 それはずっと変わりなくて。何か新たな局面を迎えるたびに、自分たちがなぜそういう行動を取ったのかとか、振り返るとそこには理由があって。結局それはいい音楽を作りたい、いいライブをやりたい、1人でも多くの人に届けたいということに行き着くんです。僕らが歩んできた道のりはその精神が作ったものであって。ただ、ここ数年はその道のりの続きに、今まで開かなかった扉を開けていかなきゃいけない局面が多かったんですね。それはすごく勇気を必要とするものでもあったんですけど。
──今にして思えば、新しい扉を開いていく最初の分岐点はどこにあったと思いますか?
藤原 一番わかりやすいのはベスト(2013年7月リリースの「BUMP OF CHICKEN I [1999-2004]」「BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]」)だったのかなと思うんですけど、もっと考えてみるとライブ映像作品(2013年3月リリースの「BUMP OF CHIKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」)をリリースするのもそうだし、MTV(2012年6月の「MTV VMAJ 2012」)に出たのもそうだし。
──今までは重たいと感じていた扉が開いていったと。
藤原 でも、ホントに今まで歩いてきた道のりの上にそういう出来事があったので、あるときに考え方を劇的に変えたみたいな感覚はないんですよね。今まで通りがむしゃらにやってたらそうなっていたというか。
──RPGで例えるなら、新しい鍵を手に入れたからまだ見ぬ街へ行くみたいなね。
藤原 そこにまた新しい敵がいたりね(笑)。それはあくまで例えですけど、新しい何かを手に入れたという感覚もそこまでないんですよ。あと、強く思うのは楽曲が僕たちを牽引してくれるということで。「COSMONAUT」以降にシングルとしてリリースした楽曲やこの「RAY」に収録されている楽曲が持ってきてくれた物語が、それだけいっぱいあったんですね。僕らはその物語にできるだけ忠実に従うべきだと思っていて。それも昔からそうなんですけど。
毎回新しい挑戦にドキドキ
──「firefly」は「GOLD GLIDER TOUR」中に生まれましたが、ツアー中に新曲を作ることは初めての経験でしたよね。それはライブで得がたい喜びと刺激を得たからだと思うし、その延長線上にQVCマリンフィールドや武道館公演が実現して、エンタテインメント性の高い演出を取り入れてもなおBUMPの音楽性は揺らがないことを証明してみせた。メンバーは1つひとつ新たな経験をしながら、その経験がバンドにもたらす影響を実験していったんじゃないかと思います。
藤原 そうだと思いますね。毎回、新しい挑戦にドキドキしながら。おっかなビックリのときもあるし。
──おっかなビックリなところもあったんだ。
藤原 やっぱりそういうところもありましたよ。
増川 QVCのスタジアムライブをYouTubeで生配信することもそうだったよね。
藤原 うん。どんなふうに聴いてもらえるのか、とかね。
直井 そういう不安はありつつ、必然性を持っていくつもの新しい扉を開けられたっていうのは、僕らにとってこんなにうれしいことはなくて。ベストを出すというのも、ライブで昔の曲では盛り上がってる人が最近の曲ではあんまり盛り上がってないとか、あるいはその逆もあるとなったときに、そういう選択肢が自然と出てきた。で、ベストの記念ライブをQVCでできて。あのライブでホントにオーディエンスのみんなのカッコよさが証明されたと思うんですよ。ライブ映像作品をリリースするときも考えたんですけど、僕らはやっぱりライブは生がいいという思いでずっとやってきて。スタッフからのライブ映像作品を出してみないか?という打診は過去にも何度かあったんですけど、やっぱり生がいいと言い続けてきて。でも、その裏側で物理的にライブに来れない人がいる状況があって。じゃあそういう人たちにも作品として届けようって気持ちになれたのも、お客さんと一緒にずっとライブを作ってこれたからであって。さっきも言いましたけど、お客さんがホントにカッコいいから。タイアップも作品の監督さんやプロデューサーの方が僕らの音楽を愛してくれているからこそ実現できたものばかりだし。
増川 ライブDVDやベストアルバムをリリースするのって一般的には普通のことだと思うんですけど、僕らはそこへ踏み出すのにとことん話し合って、考えて。ヘタしたら会議中に泣き出す人が出てくるくらいめんどくさいんですけど(苦笑)。そういうときに常に曲があってレコーディングできていたのはすごく幸せなことだった。前に一度録ったけど1年後くらいに録り直した曲もあったし。それは「morning glow」なんですけど。
──そんなに長期間向き合ったんだ。
升 レコーディングを思い返せば1曲1曲がすごくチャレンジだったし、それは1本1本のライブもそうで。例えば「morning glow」は年表を見ると2010年7月には曲があったんですけど、当時は自分の納得いくテイクが録れなくて。ああでもない、こうでもないって何回もプリプロを重ねて、去年ようやく録れたんですね。そうやって頭の中に曲の存在があることが音楽と向き合う上ですごくモチベーションになったし、ホントに密度の濃い制作期間でしたね。
- BUMP OF CHICKEN ニューアルバム「RAY」/ 2014年3月12日発売 / TOY'S FACTORY
- 初回限定盤[CD+DVD] 3900円 / TFCC-86456
- 初回限定盤[CD+DVD] 3900円 / TFCC-86456
- 通常盤[CD] 3059円 / TFCC-86457
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収録曲
- WILL
- 虹を待つ人
- ray
- サザンクロス
- ラストワン
- morning glow
- ゼロ
- トーチ
- Smile
- firefly
- white note
- 友達の唄
- (please) forgive
- グッドラック
初回限定盤DVD 収録内容
Music Video
- 虹を待つ人
- ゼロ
- Smile
- firefly
- 友達の唄
- グッドラック
2013.8.9 Live at QVC Marine Field
- Stage of the ground
- firefly
- 虹を待つ人
- プラネタリウム
- 花の名
- ダイヤモンド
- メーデー
- K
- 天体観測
BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)
藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって1994年に結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録し、ロックファンを中心に熱狂的な支持を集める。その後も人気を拡大させ、2008年には22万人を動員する大規模なツアーを成功に収めた。2010年に6thアルバム「COSMONAUT」をリリースし、2011年2月には「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~」の主題歌に「友達の唄」を提供。同年12月から2012年7月にかけて約3年半ぶりのライブハウス&アリーナツアーを開催した。2013年3月に初のライブ映像作品「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」、7月に初のベストアルバム「BUMP OF CHICKEN I [1999-2004]」「BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]」をリリース。2014年3月12日には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」をリリースする。藤原の書く情景描写に優れた文学的な歌詞、緻密に練られたバンドアンサンブルが大きな魅力。