ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN
4人の言葉&AR座談会で読み解く「RAY」の物語
BUMP OF CHICKENが約3年3カ月ぶりのアルバム「RAY」を完成させた。昨年はライブ映像作品やベストアルバムのリリースといった初の試み、スタジアムライブの実施など新たな挑戦が続いた彼ら。今回はそれらの経験がバンドに与えた影響、時間にして約5年におよぶアルバム制作期間を通しての発見について聞き、「RAY」がどのように形作られていったのかを読み解いた。
さらに本作のブックレットに搭載されたAR(拡張現実)技術の仕掛け人となった映画監督の山崎貴、AR三兄弟の川田十夢を迎えた6人の座談会も実施。2本立ての特集で作品そのものの魅力を味わってほしい。
取材・文 / 三宅正一(P1~3)、柴那典(P4~6)
インタビュー撮影 / 古渓一道(P4~6)
メンバーインタビュー
このアルバムが持ってる歴史にビックリ
──「3年ぶりのアルバム」と口にするとどこか不思議な感覚があって。それは「COSMONAUT」以降、バンドがかつてないほどオープンな活動を展開したからだと思うんですね。そして、この「RAY」はあらゆる面でフレッシュなアルバムだと思った。サウンドも歌もリリックも。
藤原基央(Vo, G) なるほど、フレッシュか。
──そう、そのフレッシュなイメージが「光芒」「光線」「煌めき」という意味を持つ「RAY」というタイトルと共鳴しているなと。相変わらず各曲には精緻なサウンドプロダクションが施されているんだけど、それ以上にフレッシュな音楽像、作品像をたたえているのが感動的で。
一同 ありがとうございます。
──って、前置きが長くなっちゃったんですけど。
藤原 でも、そういう感想を聞けるのはすごくうれしいですね。
直井由文(B) この「RAY」には「COSMONAUT」の頃にレコーディングした曲も入っているので。「(please) forgive」がそうなんですけど……(スタッフに)あ、あの年表を三宅さんと俺たちにください。
──え、そんなのあるの?
藤原 これがね、あるんですよ(笑)。
──これも初めての試みだ(笑)。
藤原 そうですね。このアルバムのインタビューはこういう年表があったほうがいいだろうということで(笑)。この年表があることで、僕らの発言に裏付けが取れるっていう。
──じゃあ改めてチャマ(直井)に話してもらいましょう。
直井 はい。その「(please) forgive」という「COSMONAUT」の頃からレコーディングしていた曲、すでに皆さんの耳に届いてるシングル曲たちと並行してレコーディングしていた曲たちがあって。だから、各曲を聴いてると当時のことを思い出すんですね。「友達の唄」を初めて聴いたときのこと、藤くん(藤原)の家で初めて聴かせてもらった「ゼロ」──そのときの記憶を鮮明に思い出せる。自分で言うのはなんですけど、この3年はホントに贅沢な時間だったなって思います。
──その上でアルバムはどういう作品になったと思いますか?
直井 僕らは1曲1曲と向き合ってここまできたなという感覚が強くて。だから正直、どういうアルバムになったかという感想をまだしっかり持てていないんですよね。それはリリースしてから実感が湧くものかもしれないし。
──ツアーに出てからとかね。
直井 そうそう。あとでまたじっくりお話しすると思うんですけど、「RAY」というタイトルになったのも先に「ray」という曲があって、そこから僕らの中で「ray」という言葉がすごく気になりだしたんですね。じゃあそのままアルバムタイトルは大文字で「RAY」にしようってなって。それまでの作業はホントに1曲1曲と向き合っていく感じだったから、これからこのアルバムとじっくり向き合っていきたいなって思ってるところです。
──升くんはどうですか?
升秀夫(Dr) 僕もチャマと同じような感覚なんですけど、ちょっと俯瞰して全体を通して聴いてみると、シングル曲がまた違う表情を見せてくれるのが純粋に楽しいなって。例えばアルバムの最後に聴く「グッドラック」は今までとは違うグッとくる感じがあったりして。ちゃんとアルバムになったなという感覚をちょうど今、持ち始めてるところですね。あとは、早くみんなに聴いてもらいたいです。ツアーに出て、またさらに曲の表情の違いを見つけられるとも思うし。だから、ここが出発点だなって。ここから見つけていけること、知っていけることがあるのが楽しみです。
──増川くんは?
増川弘明(G) さっき言ってくれたフレッシュという感覚は僕もわかる部分があって。ただ、僕らがまだアルバム全体の感想をうまく話せないのは、ジャケットやアートワーク、すべてを含めた1つのパッケージとして手にして初めてイメージが固まってくるからだと思うんですね。そういう段階ではあるんですけど、アルバムのジャケットと曲たちが少しずつシンクロしてきている感覚があって。そこにフレッシュさを感じるんですよね。
──藤原くん、お願いします。
藤原 アルバムが完成して、音の面だったり全体像に関しては、僕もまだどうこう言える感想を持つに至ってないというのが正直なところなんですけど。アルバムをリリースして、ツアーに出てから実感を伴っていくのかもしれないというのもみんなと一緒で。それを踏まえてお話しすると、こうやって曲ができた時系列の年表を見ても、長いこと制作してたんだなと思いますね。一番古い曲が「(please) forgive」で、2009年8月ですもんね。
──そこから数えたら5年弱も経つんだもんね。
藤原 ねえ? チャマも言ってたようにホントに1曲1曲の作業なので、その時々はどういうアルバムになるかはまったく想定してないんですよ。それは最後に作った「ray」までそうでした。ただ改めて年表を見て、その時間の長さに、このアルバムが持ってる歴史にビックリしてます。でも「COSMONAUT」を作ってからそんなに時間が経ったという感覚がないというのも本心で。とはいえ、「友達の唄」のときにドラえもんと一緒に写真を撮ったのはずっと前みたいな感覚もあるし。その時間の感覚がすごく不思議なんですよね。
──メンバーにとってもそう感じるんですね。
藤原 ちなみにこの年表に書かれてある年月日は、僕が曲を書いてアコギで歌って完成とした日付もあれば、初めてみんなに曲を聴いてもらって、みんなでアレンジを練ってデモテープを作った日付もあったりして。「(please) forgive」は「COSMONAUT」を作っていた流れの中で書いた曲だったんです。そのときも「COSMONAUT」というアルバムができるという意識はまったくない状態でした。あくまで1曲1曲書いてる感覚で。当初はその時点であった新曲は全部アルバムに入れたかったから、「(please) forgive」も「COSMONAUT」に収録しようという話だったんですけど、1枚のCDの収録時間の容量をオーバーしてしまって。じゃあ1曲削るしかないねということで、全体のバランスを考えて「(please) forgive」を削ることになったんですね。
──それは、「(please) forgive」は次のアルバムに持ち越してもきっと大きな存在感を示す曲になるだろうという予測もできたからなんですか?
藤原 どうだろうなあ? わりと暗い曲が多かったから、暗いところから1曲外しておこうって感じだったのかな。暗いと言うと語弊があるか(笑)。
──うん、暗いだけでは片付けられない曲ですね。
藤原 そうですね。でも、さわやかな感じもありますよね?
──ある。豊かな広がりもあるし。総じてとても強い曲だと思う。
藤原 ありがとうございます。でも、意図したことはそんなになくて。何度も言うようだけど、どの工程においても1曲1曲やってきたという感覚だから。
- BUMP OF CHICKEN ニューアルバム「RAY」/ 2014年3月12日発売 / TOY'S FACTORY
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3900円 / TFCC-86456
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3900円 / TFCC-86456
- 通常盤 [CD] 3059円 / TFCC-86457
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収録曲
- WILL
- 虹を待つ人
- ray
- サザンクロス
- ラストワン
- morning glow
- ゼロ
- トーチ
- Smile
- firefly
- white note
- 友達の唄
- (please) forgive
- グッドラック
初回限定盤DVD 収録内容
Music Video
- 虹を待つ人
- ゼロ
- Smile
- firefly
- 友達の唄
- グッドラック
2013.8.9 Live at QVC Marine Field
- Stage of the ground
- firefly
- 虹を待つ人
- プラネタリウム
- 花の名
- ダイヤモンド
- メーデー
- K
- 天体観測
BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)
藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって1994年に結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録し、ロックファンを中心に熱狂的な支持を集める。その後も人気を拡大させ、2008年には22万人を動員する大規模なツアーを成功に収めた。2010年に6thアルバム「COSMONAUT」をリリースし、2011年2月には「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~」の主題歌に「友達の唄」を提供。同年12月から2012年7月にかけて約3年半ぶりのライブハウス&アリーナツアーを開催した。2013年3月に初のライブ映像作品「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」、7月に初のベストアルバム「BUMP OF CHICKEN I [1999-2004]」「BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]」をリリース。2014年3月12日には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」をリリースする。藤原の書く情景描写に優れた文学的な歌詞、緻密に練られたバンドアンサンブルが大きな魅力。