ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN

初ライブ映像集に息づくバンドとファンの絆

BUMP OF CHICKENのライブが初めて映像化される。

2011年末からのライブハウスツアー「GOOD GLIDER TOUR」と2012年4月からのアリーナツアー「GOLD GLIDER TOUR」で、ひさびさに全国各地へ音楽を届けたBUMP OF CHICKEN。今回収録されるのはアリーナツアー終盤にあたる7月3日の東京・国立代々木競技場第一体育館公演で、ファイナルにほど近い16公演目、ライブハウスツアーから数えると35公演目となる。

本作は単にライブの模様をまとめた映像集ではない。ここにはBUMP OF CHICKENが鳴らした音楽だけでなく、あの日集まった1人ひとりの思いがあり、同時にこの映像を観る人の思いまでも連れてくる磁場がある。

この映像作品にはステージを見つめる観客の顔が何度も差し挟まれ、感極まったり、目を輝かせたりする表情が画面いっぱいに飛び込んでくる。さらに会場の外で漏れてくる音に反応して拳を上げる人の姿も映り込む。ここには映像を観ている自分と同じように、彼らの音楽を愛し、必要としている人々が確かに存在する。そしてその同じ思いを抱いた人たちがこの場で感じた気持ちや見せた表情は、ライブを追体験する自分のものであるかのように思えるのだ。

また、藤原基央(Vo, G)が肉声で「ありがとう」と叫ぶ姿、増川弘明(G)が耳に手をあて客席の声を拾おうとする姿、直井由文(B)が大きな身振りで意思を伝えようとする姿、升秀夫(Dr)が立ち上がりスティックを高く掲げる姿。彼ら自身が観客とつながろうとする瞬間は、映像を観ている人の胸にもぐっと熱いものが込み上げてくるのではないだろうか。

ハイライトシーンはいくつもある。藤原の優しげな声と増川のクリーンギターから幕を開けた「Smile」では、リズム隊を加えたバンドアンサンブルが高ぶる感情を表すように荒々しく歪んでいく。藤原の叫ぶようなギターソロが観る者の胸をえぐり、切なさを湧き上がらせる。「supernova」ではイントロが鳴らされた瞬間に拍手が起こり、観客は音に合わせていっせいに腕で弧を描く。この日一番喜びにあふれた時間は、メンバーも観客もひときわいい顔を見せたこのときだったのかもしれない。どの場面も観れば観たぶんだけ、大切な光景としてそれぞれの心に強く焼き付いていくだろう。

なお作品には、井上雄彦が描き下ろしたドローイングを背景に演奏された宮城公演での「Smile」のほか、各会場で終演時にステージ後方からメンバーと客席を撮影した写真「GOOD LUCK PHOTO」も収録される。彼らがこのツアーで何を届けてきたかは、全国のファンの笑顔が雄弁に物語っているはずだ。

文 / 伊藤実菜子

DVD / Blu-ray「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」/ 2013年3月6日発売 / TOY'S FACTORY
Blu-ray初回限定盤 [Blu-ray Disc+CD+ブックレット] 7500円 / TFXQ-78108
DVD初回限定盤 [DVD2枚組+CD+ブックレット] 6500円 / TFBQ-18135
Blu-ray通常盤 [DVD2枚組+ブックレット] 6500円 / TFXQ-78109
DVD通常盤 [CD] 5500円 / TFBQ-18136
Blu-ray / DVD収録内容
  1. 三ツ星カルテット
  2. 宇宙飛行士への手紙
  3. HAPPY
  4. ゼロ
  5. 友達の唄
  6. Smile
  7. グッドラック
  8. ハルジオン
  9. sailing day
  10. embrace
  11. メーデー
  12. イノセント
  13. supernova
  14. beautiful glider
  15. カルマ
  16. 天体観測
  17. ガラスのブルース
  • 2012/7/14 宮城 セキスイハイムスーパーアリーナ公演「Smile」
  • 「Good Luck」PHOTO(※各ライブ会場にて終演時にステージ後方からメンバーと客席を撮影した写真)
  • 山崎貴監督制作によるOPENING MOVIE
初回盤付属ライブCD収録曲
  1. 三ツ星カルテット
  2. 宇宙飛行士への手紙
  3. HAPPY
  4. ゼロ
  5. 友達の唄
  6. Smile
  7. グッドラック
  8. embrace
  9. メーデー
  10. イノセント
  11. beautiful glider
  12. カルマ
  13. 天体観測

2012/7/3 東京国立代々木競技場第一体育館より

BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって1994年に結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録し、ロックファンを中心に熱狂的な支持を集める。その後も人気を拡大させ、2008年には22万人を動員する大規模なツアーを成功に収めた。2010年に6thアルバム「COSMONAUT」をリリースし、2011年2月には「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~」の主題歌に「友達の唄」を提供。2012年1月に映画「ALWAYS三丁目の夕日'64」の主題歌「グッドラック」を発表したのち、同年12月から2012年7月にかけて約3年半ぶりのライブハウス&アリーナツアーを開催した。2013年3月、この全国ツアーより7月3日の東京・国立代々木競技場第一体育館公演の模様を収録した初ライブ映像作品「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」をリリースする。藤原の書く情景描写に優れた文学的な歌詞、緻密に練られたバンドアンサンブルが大きな魅力。