ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN

ツアーの熱を封じ込めた「firefly」誕生

今やりたいサウンド、今歌いたい言葉が詰まった「firefly」

──ここからはニューシングルの話を訊かせてください。「firefly」はアリーナツアー中に生まれた曲なんですよね。確かにサウンドの疾走感、演奏や歌のテンションからライブでのみなぎっているような熱を感じ取ることができる。そもそもツアー中に曲を完成させ、レコーディングまでしたのはBUMP史上初なんですよね。

藤原 そうなんです。まず、前提として4年前に「ホームシック衛星」というライブハウスツアーと「ホームシップ衛星」というアリーナツアーがあったんですけど、「ホームシップ衛星」のときはライブが週2回とかで、東京にいる時間が長くあったんですね。でも、当時はライブのことで頭がいっぱいで、曲を作ることが全くできなかったんです。ツアーが終わったら終わったで、抜け殻みたいになっちゃって。いざ曲を書くぞって思っても「曲ってどうやって書くんだっけ?」みたいな感じで。それから全然曲が書けない時期が続いたんです。

──「R.I.P.」が書けるまでそういう状態が続いたんですよね。

藤原 そう、以前にもそのときのことはお話したと思うんですけど、曲が書けない時期はホントにつらくて。もうあのときのような思いは二度としたくないと思って。

──ある種のトラウマにもなっていたし。

藤原 そうですね。でも、「R.I.P.」以降は曲作りのためのスタジオに入ることで、テンポよく曲を書けるようになって。「COSMONAUT」の曲もそれ以降のシングル曲やカップリングも順調に生まれたんです。

──ホントに「R.I.P.」以降は順調に曲が生まれていますよね。今や藤原さんに寡作家のイメージはないし。

藤原 僕自身、ツアー中もこの状態を維持したいと強く思ったんですよね。もちろんライブは大切なことだし、ツアーに出たらまたライブのことしか考えられなくなるかもしれないけど、同じ音楽なんだからライブも曲作りも同じ時期に自然とできないものかと思って。今まではそれを試そうともしてなかったから、今回はやってみようと思ったんです。それで、ツアー中に曲を書くという目標を立てて。書ける、書けないは別にして、スタッフにお願いして、とにかくツアーの合間にスタジオに入ってみようと。「ホームシック衛星」のときと同様に「GOOD GLIDER TOUR」ではライブハウスツアーでスケジュールも詰まっていたし、難しいなと思ったんですけど、「GOLD GLIDER TOUR」では東京にいる時間が結構あったので、無理のない程度でスタジオに入ったんです。それで結果的に5月に「firefly」が書けたんですよ。

──「firefly」の曲調がアッパーになったのは、やっぱりツアー中に書いたことが影響していますか?

藤原 そうですね。ライブで感じたことが自然と形になったんだと思います。全国のお客さんが見せてくれたいろんな表情は、僕にとってものすごい情報量だったから。彼らと一緒にライブという空間を共有して、作り上げた経験がこの曲につながっていったんだと思いますね。ホントに曲作りって生理的なものなので、後付けの理由ではあるんですけど。今やりたいサウンド、今歌いたい言葉がこれだったっていう。ただ、ツアー中に書いた曲であることが何よりも雄弁な事実だとは思います。

──特に意識して速い曲を書こうとは思ってなかった?

藤原 確かにシングルのリード曲で速い曲は久々なんですけど、「COSMONAUT」の収録曲にも速い曲はありますし、シングルのカップリングでもあるんですけどね。

──確かに「HAPPY」のカップリングの「pinkie」も速い展開があるし、「友達の唄」のカップリングの「歩く幽霊」もアップテンポな曲ではあるんですよね。ただ、いわゆるギターロック的なアプローチの速い曲がシングルの表題曲にくるのはホントに久々で。「ついに来た」と思っているリスナーも多いと思う。

藤原 うん、だからそれだけシングルの印象ってデカいんだなって思います。そういうことを意識していなかったのは、僕たちにそういう視点が欠落してるのかなとも思うし(笑)。シングルのリード曲、カップリング曲、アルバム曲という住み分けがあんまりないので。

“別の速い曲”も録音してある

──「グッドラック」のときのインタビューで、僕は「ここ最近のシングルは速い曲がないじゃないですか?」という質問をしていて。そのときも藤原さんは今と同じような言葉を残していました。

藤原 はい(笑)。

──直井さんは、「発表してないだけで、速い曲もあるんですよ!」って言っていたんですね。

直井 ああ、言ってたと思います(笑)。

──で、そのとき言っていた速い曲と、ツアー中に生まれたこの「firefly」は別の曲ということになりますよね。

藤原 そうそう、別ですね。

直井 その僕が言ってた速い曲はアリーナツアーに出る前に録ってます。

──おおっ。

藤原 余談になりますけど、僕らがずっとお世話になっていた一口坂スタジオが今年の1月に閉鎖されたんですね。その別のほうの速い曲が、一口坂スタジオでの最後のレコーディングになったんです。

 いいスタジオだったよね。

藤原 うん、最高のスタジオだった。

直井 でも、最後に録ったのはアレじゃない? 藤くんがアリーナツアーのオープニング映像のために書いたインスト曲。

 ああ、そうだ。あの曲も一口坂で録ってたね。

藤原 でもあれは1人の作業だったから、バンドで最後に録ったのはその別の速い曲だね。

直井 その曲もぜひ楽しみにしていてほしいです!

BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)

プロフィール画像

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって、1994年に結成。高校入学後に本格的な活動をスタートする。地元・千葉や下北沢を中心にライブを続け、1999年にインディーズからアルバム「FLAME VEIN」を発表。これが大きな話題を呼び、2000年9月にはシングル「ダイヤモンド」で待望のメジャーデビューを果たす。

その後も「jupiter」「ユグドラシル」といったアルバムがロックファンを中心に熱狂的な支持を集め、2007年には映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」主題歌に起用されたシングル「花の名」を含むメジャー3rdフルアルバム「orbital period」をリリース。2008年には全国33カ所41公演、22万人動員の大規模なツアーを成功させた。

2009年11月に両A面シングル「R.I.P. / Merry Christmas」を発表したあとは、精力的なペースで楽曲をリリース。2010年4月にシングル「HAPPY」「魔法の料理 ~君から君へ~」を、10月にシングル「宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル」を発売。12月には宇宙飛行士を意味する単語をタイトルに冠したアルバム「COSMONAUT」をリリースした。

さらに2011年2月には「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~」の主題歌として書き下ろした「友達の唄」をシングルとして、5月には東日本大震災被災者を支援する「復興支援ポータルサイト」のテレビCMソング「Smile」をチャリティシングルとして発表。10月に、PSPゲームソフト「FINAL FANTASY 零式」テーマソングとして書き下ろした「ゼロ」をシングルリリースし、同年12月から2012年1月にかけて、約3年半ぶりの全国ツアー「BUMP OF CHICKEN 2011-12 TOUR『GOOD GLIDER TOUR』」を開催した。

また2012年1月には、3D映画「ALWAYS三丁目の夕日'64」の主題歌に起用されたシングル「グッドラック」を発表。さらに4月から7月にかけて全国13都市20公演のアリーナツアー「BUMP OF CHICKEN 2012 TOUR『GOLD GLIDER TOUR』」を行い、大盛況のうちに終了させる。そのツアー中に生まれた「firefly」を、9月にシングルとしてリリース。