ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN
のび太とリルルの友情から生まれた やさしく力強い「友達の唄」
Aメロから涙が止まらなくて
──3人は藤原さんから上がってきた曲に何を感じましたか?
直井 藤くんにデモを聴かせてもらったときにイントロからグッときて、Aメロから涙が止まらなくて。まずドラえもんやのび太の顔が浮かんできて。そこからメンバー4人の想い出とか、幼なじみと薮のなかを駆けていた記憶とか……(笑)。いろんなことが頭を過りましたね。あとは、藤子・F・不二雄先生にもう「ありがとうございます」と言えないこととか……。
──この曲を先生にも聴いてもらいたかったですよね。
直井 ね。「ドラえもん」は僕らにとって空気のような存在でもありますから。それを吸い込んでる藤くんが作った曲だから、自然といろんなことを感じて涙が出てしまったんだと思います。で、「どうしようもなく涙が出る」って藤くんに言ったんです。そしたら藤くんはホッとした顔で「ホントによかった」って言ってくれて。今でもこの曲を聴くとヤバいですね(笑)。
──じゃあいつかライブで鳴らすときもかなりグッとくるものがあるでしょうね。
直井 でも、最近はけっこうライブで泣いちゃってますね。藤くんの歌で。レコーディングでは男として我慢したい部分があるんですけど、ライブではある種感情だけでいいと思っていて。最近は特にそう思います。4人がいちばん感動できるものを作る。それをいいと思った人が傍にいてくれる。ライブはその極みだと思うし。だからこそ僕らは心から感謝できるから。
──升さんはどうでしょう。
升 僕も最初に聴かせてもらったときからホントにすばらしい曲だと思いました。例えば子供だったら、この「友達の唄」をBUMP OF CHICKENの曲と認識しないで聴くわけじゃないですか。あくまで「ドラえもん」の曲として聴いてくれる。
──一生の記憶になる可能性が大いにある。
升 現に僕らにとっての「ドラえもん」はそういう作品だし。そういうふうに曲を届けられる機会をいただけてすごくうれしい気持ちです。あと「大長編ドラえもん」の最後って、ハッピーエンドなんだけど悲しいんですよね。必ずそこに別れがあって。
──そこは共通していますよね。
升 うん。「鉄人兵団」の物語に触れて、子供でも大人でも心が揺さぶられるときにこの曲が流れることを想像したら、今からすでに感動してます。
──増川さんは?
増川 この曲はうまく言葉にできない感動があるんですよね。直井くんと同じように、いろんなことを想起させられるし。「ドラえもん」に関して言えば、大長編の世界観は得体の知れない怖さも描かれていて。最終的にはそれを越えていく感動があるんですけど。この曲もそういう深いところを揺さぶるようなものになったと思います。
洋風の感じがあるけど懐かしい空気感を
──音について聞いていきたいんですけど、まずメロディがものすごい包容力と温かみをたたえていて。
藤原 ありがとうございます。うれしいなあ。
──どういうことを意識して紡ぎましたか?
藤原 サウンドの部分で考えたことはたくさんあって。最終的には理屈じゃないところに落とし込めていると思うんですけど。音楽的に難しいことをやっていても、シンプルに聴こえてなきゃいけないって常に思っていて。「ドラえもん」という作品もそうだと思うんです。現に僕は「ドラえもん」を頭で考えてみたらわからないことがたくさんあった。そして、これだけ魅力を感じていて。だから、今回はいつも以上に難しいことをやっていても、難しく聴こえないようにするという部分を意識しましたね。メロディの雰囲気に特化していうと……感覚的な言葉になりますけど、温もりがあるけど寂しいぞ、みたいな。寂しいけど温もりがあるぞ、みたいな。
──まさにそういうメロディですね。
藤原 で、全体的に洋風の感じがあるんだけどどこか懐かしいぞ、っていう。和風の懐かしさ、田舎くささがあるというか。電柱の向こうの夕焼けが見えるような。
──ストリングスとホーンが印象的に存在しているんですけど、このイメージは最初からあったんですか?
藤原 ストリングスのアイデアを言い出したのは、確かプロデューサーだったと思います。デモテープを作っていて……僕がデモの仮歌を録り終わったあたりですね。プロデューサーがデモの仮歌を聴いて「これ、ストリングスを入れたほうがいいんじゃないか」って言ってましたね。みんなに聴かせたときはドラムとか入ってた?
升 うん。
増川 入ってたよ。
直井 すごくシンプルなやつ。
藤原 ホーンも入ってたでしょ?
升 入ってたね。
──ホーンは最初から鳴っていたんですね。
升 入ってたけど、アウトロまで引っ張ったりはしていなかった。だから、そんなに強い印象はなかったんです。
藤原 そうそう、デモの段階ではアウトロはこんなに長くなかったんだよね。
BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)
藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって、1994年に結成。高校入学後に本格的な活動をスタートする。地元・千葉や下北沢を中心にライブを続け、1999年にインディーズからアルバム「FLAME VEIN」を発表。これが大きな話題を呼び、2000年9月にはシングル「ダイヤモンド」で待望のメジャーデビューを果たす。
その後も「jupiter」「ユグドラシル」といったアルバムがロックファンを中心に熱狂的な支持を集め、2007年には映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」主題歌に起用されたシングル「花の名」を含むメジャー3rdフルアルバム「orbital period」をリリース。2008年には全国33カ所41公演、22万人動員の大規模なツアーを成功させた。
2009年11月に両A面シングル「R.I.P. / Merry Christmas」を発表したあとは、精力的なペースで楽曲をリリース。2010年4月にシングル「HAPPY」「魔法の料理 ~君から君へ~」を、10月にシングル「宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル」を発売。12月には宇宙飛行士を意味する単語をタイトルに冠したアルバム「COSMONAUT」をリリースした。繊細かつ大胆なバンドサウンドと情感豊かな歌詞が多くのリスナーを引きつけ、絶大な人気を集めている。