音楽ナタリー Power Push - BULL ZEICHEN 88

10年経っても変わらない絶対的な信頼関係

BULL ZEICHEN 88がニューシングル「傘」をリリースした。

淳士(Dr)が作詞作曲を手がけた表題曲は、高揚感あふれるメロディに乗せてポジティブな思いを高らかに歌い上げるロックチューンに仕上げられた。音楽ナタリーでは栄二郎(Vo)と淳士にインタビューを実施。最新シングルの制作秘話や結成10周年を迎えたバンドの現状、そして年末に開催されるワンマンライブ「BULL ZEICHEN 88円 ~おごるぜマジで~」についてまで、ざっくばらんに語ってもらった。

取材・文 / 土屋恵介

燃え尽きるまで一緒に音楽を奏でたい

──シングルの表題曲「傘」は、メロディが際立つエモーショナルなナンバーですが、制作はどのように進んでいったんですか。

淳士(Dr) 「傘」は僕が作詞作曲した曲なんです。これまでシングルの表題曲はベースのIKUOくんが作曲したものだったんですが、初めて違う形になりました。もともと僕とIKUOくんの中に、10周年だし、いつもとは違うアプローチでいこうという考えがあったんです。そんな中で、僕が書いた曲が思いの外いい仕上がりになって、IKUOくんと相談して10周年シングルの表題曲にしようということになったんです。アレンジはいつも通りIKUOくんが組み立ててくれて、一気にBULL ZEICHEN 88っぽい楽曲になりました。

──歌詞は明日に向かっていく思いを歌ったものとなっています。

淳士 歌詞の軸になっているのはバンドメンバーへの愛と友情です。もちろんファンやスタッフへの思いも込められているんですが。そもそもBULL ZEICHEN 88を作ったときに僕とIKUOくんは「10年続くバンドにしたいね」って話していたんです。なので1つの目標が達成できて、その節目に、この曲を作ることができて本当によかったなと思います。

栄二郎(Vo)

栄二郎(Vo) 淳兄(淳士)の歌詞が、すごく真面目だったのが意外だったというか(笑)。でも素直にいい歌詞だなと思いました。楽曲的には、すごく歌を重視した作りになっているなと。歌いこなすのは、ちょっと大変でしたけど。

淳士 BULL ZEICHEN 88の曲ってアレンジが凝ってて演奏するのが大変なんですよ。なので今回も栄二郎には楽に歌わせるわけにはいかないなと(笑)。サビの一番高いところの歌詞は、高い声が出しづらい“い”とか“う”にしてあります(笑)。

栄二郎 「メンバーへの愛と友情」とか言いながら、そういうトラップはちゃんとあるっていう(笑)。

淳士 うちのバンドは愛情表現がちょっと変わってるんです(笑)。

──歌詞で特にこだわったところはどこですか。

淳士 最後のサビに出てくる、“いつの日にか生まれ変わって 君の声も顔も忘れるだろう”っていうフレーズです。よく、「生まれ変わってもまたキミを探すよ」とか、「君とまた出会いたい」とか言うじゃないですか。でも僕が思うに、生まれ変わったらきっとすべてを忘れてしまうと思うんです。だからこそ、一緒にいられる今を大事にして、本当に燃え尽きるまで一緒に音楽を奏でようという思いを言葉に込めたんです。ここ、自分でもアツいなと思ってるんですよ(笑)。僕が考える友情や愛情表現がこの一節に凝縮されています。

──栄二郎さんが歌っていてグッとくるポイントは?

栄二郎 一番グッとくるのは、やっぱり淳兄が今話してくれた最後のサビの部分ですね。いつもサビではだいたいスクリームをして高い声を出してるんですけど、今回は全編通して、きっちり地声で歌い通す感じが新鮮でした。淳兄は歌のディレクションにこだわりがあって、いつも演技指導みたいな感じなんですけど、今回初めて「いつもとは違う優しい歌い方で歌って」って言われたんですよ。それで今までにない歌い方をして。結果的に、ボーカリストとしての新しい自分を引き出してもらえたなと思います。それと、曲の最後の「空は晴れ渡る」っていう歌詞は、どれだけ歌ったかわからないです。淳兄が「まだ晴れてないな」って言い続けて、最後の最後でやっと晴れた歌を録れました(笑)。

──それだけ言葉へのこだわりがあったわけですね。

淳士 はい。ここまで歌い方について細かく注文したことはなかったので、今回の歌詞については、僕自身思い入れがいつも以上に強いんでしょうね。あと、このバンドは、みんながほかのメンバーにもっと高いものを要求しちゃうんですよ。

栄二郎 バンドって10年もやってたら小慣れた感じが出てくるのかもしれないけど、BULL ZEICHEN 88って作品を1枚作るたびにハードルがガンガン上がっていくんです。なので新しいことに挑戦せざるをえないバンドなんです。

淳士 シングルに付属するDVDに、メンバーがそのハードルを飛び越えられるか飛び越えられないかという様子が収められていて、すごく面白いのでぜひ観ていただければ。

「傘」には人という字が4つ入っている

──エレクトロニックかつラウドなサウンドの中に、さりげなくジャジーな展開も出てくる今作のアレンジについては、どんな印象を持ちましたか?

淳士 IKUOくんのアレンジって、だいたい壮絶な展開になるので大好きなんですよ(笑)。それぞれがやるべきことをちゃんとわかってくれていて、各自の持ってるものを容赦なく引き出してくれるというか。そこはすごく信頼してるんです。ただ年々楽曲のBPMが上がっていて、ライブがしんどいところが唯一の不満ですね(笑)。でも、「傘」は、メロディと歌詞を重視したいい感じのテンポ感になっていてホッとしました(笑)。

栄二郎 僕がいいなと思ったのは、先ほどおっしゃっていただいたジャズっぽいアレンジが施された箇所。イク兄(IKUO)からそういうものが出てくるのが意外でした。本番では有名なピアニストさんに弾いてもらったんですよ。

淳士 僕もIKUOくんも共演したことのある、白井アキトさんっていうピアニストに弾いてもらいました。

──「傘」というシンプルなタイトルも、すごく印象的でした。

淳士(Dr)

淳士 僕、曲のタイトルはいつも最後に決めるんですね。タイトルを考えようと思って、改めて楽曲を聴き直したとき、最後まで印象に残ったのが、「傘」という言葉だったんです。2番のサビに出てくる「壊れてるけど傘だってあるし」っていうフレーズがいいなと思って。漢字で書いてみたら、傘の中には「人」っていう字が4つあって、しかも10周年の「十」という字も入ってたんです。

──おお、全部入ってますね。

淳士 これはすごいぞと思って、一発で「傘」にしようと思いました。でも、「傘」って言葉だけ聞くと、ちょっと謎じゃないですか。メンバーにも最初、「タイトルを『傘』にしようと思う」って言ったら、ちょっと困惑してました(笑)。でも、カッコつけて「アンブレラ」とか付けるのはダサいなと思って。今回は「傘」一択でしたね。

──なるほど。では、カップリング曲にも触れていきましょう。「Who am I」は、栄二郎さんが作詞作曲を手がけたパワフルなロックチューンです。

栄二郎 いつもシングルでは、カップリング曲を僕が書いてるんですけど、今回ほかの2曲でちょっと変わったことをしてるので、逆に僕はいつも通りのストレートでアツい曲を出したんです。いつもイク兄のフィルターを通すと、アレンジが複雑になってテンポもガンッと上がるんです。だけど、この曲は逆にテンポが下がって。なんでテンポを下げたのかイク兄に聞いたら、単純に演奏が難しくなりすぎて自分でも弾けなかったと言ってました(笑)。

──また、今作には疾走感あふれる「I.B.Z」が収録されています。

栄二郎 これは10年前に結成したときからイク兄が持ってた曲なんですよ。

淳士 当時のBULL ZEICHEN 88にはちょっとポップすぎるってことで眠ってた曲を引っぱり出してきてくれたんです。なんせ10年も経ってるんで、存在自体もうろ覚えでしたけど。でも、実際にやってみたら、すごくいい曲だと思いました。ライブで盛り上がる、お客さんが絶対に楽しめる曲になるだろうなって思います。

BULL ZEICHEN 88 10th Anniversary Tour「BULL ZEICHEN 傘傘 ~カッサカサだぜ要保湿~」

2016年10月26日(水)
東京都 CLUB PHASE
2016年10月27日(木)
新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
2016年11月6日(日)
宮城県 darwin
2016年11月8日(火)
北海道 cube garden
2016年11月16日(水)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2016年11月17日(木)
大阪府 梅田CLUB QUATTRO
2016年12月8日(木)
広島県 SECOND CRUTCH
2016年12月9日(金)
福岡県 BEAT STATION

「BULL ZEICHEN 88円 ~おごるぜマジで~」

2016年12月26日(月)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO
BULL ZEICHEN 88(ブルゼッケンハチハチ)

栄二郎(Vo)、sebastian(G)、IKUO(B)、淳士(Dr) による4人組ロックバンド。淳士とIKUOが中心となり2006年に結成。2007年4月に1stシングル「Infinity」をリリースし、テクニカルなプレイとヘヴィかつキャッチーなメロディが融合した独自のサウンドで注目を集める。以降、コンスタントに作品を発表。2017年10月にニューシングル「傘」をリリースした。10月26日の東京・CLUB PHASEを皮切りに全国8都市を回る10周年ツアー「BULL ZEICHEN 傘傘 ~カッサカサだぜ要保湿~」を実施。12月26日には88円という破格のチケット料金が話題を呼んだワンマンライブ「BULL ZEICHEN 88円 ~おごるぜマジで~」を開催する。