超特急「B9」ロングインタビュー|運命に導かれた9人が、“ベストナイン”になるまでの物語

超特急が3月22日にニューアルバム「B9」をリリースする。

2022年8月に9人体制となった超特急が、新体制で初めて作り上げたアルバム「B9」。9色のメンバーカラーを脱ぎ去り黒一色の衣装に身を包んだ9人が今作で見せるのは、“Cool & Stylish”な超特急の一面だ。

その姿や楽曲コンセプトは一見新鮮な印象を与えるが、ユーキは今作の作品性を「ある意味原点回帰」だと語る。超特急が「B9」で立った“原点にして新境地”、そして“9人の現在地”とは。音楽ナタリーでは、メンバーにロングインタビューを行い、アルバムについて、9人で過ごしてきた半年間の日々について。抱く思いをじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 須田卓馬

この方向性に僕たちが進んだらどうなるんだろう?

──今回のオールブラックの衣装が発表されたとき、8号車(超特急ファンの呼称)さんはその意外性に驚いたのではないでしょうか。9人体制となって初めてのアルバムのコンセプトは「Cool & Stylish」とのことですが、なぜこういったコンセプトに?

ユーキ 僕たち超特急には「ダサカッコいい」という持ち味があるけれど、「Cool & Stylish」はある意味原点回帰なんです。もともとは「カッコいい」から始まったグループなので、このタイミングでそっちの方向性に振り切ってみようと。8号車にも僕らのことをあまり知らない皆さんにも、「超特急ってこれだけカッコいいこともできるんだぞ」ということを知ってもらいたくて。

タカシ 最近の超特急からしたら、ある意味挑戦よね。収録曲に関しても、これまでは表題曲がクールだったらカップリングは必然的に弾けてる、みたいなバランスでしたけど、今回“全部カッコいい”の配分で曲が集められているのが新鮮です。

タカシ

タカシ

──新メンバー改め“2桁号車”チームのシューヤ(11号車)さん、マサヒロ(12号車)さん、アロハ(13号車)さん、ハル(14号車)さんは率直にどう感じましたか?

シューヤ ボーカルが先に新曲のデモを聴くんですけど、今までの超特急とはまったく違った印象を受けました。この方向性に今の僕たちが進んだらどうなるんだろう?って。あと自分はダンスパフォーマンスが楽しみになりました。マサ(マサヒロ)とアロハとハル、新しい力が加わってダンスは完全にパワーアップしたと思っているし、9人で踊ったらめちゃめちゃにカッコいいんだろうなと。

マサヒロ 僕は率直に楽しみになりました。これまで自分が踊ってきた曲の方向性に近いので、自分の持ち味を一番出せるんじゃないかなと思いましたし……力強い「MORA MORA」や「Typhoon」、おしゃれな「シャンディ」、僕の得意としているいろんな表現や表情を見せられるんじゃないかなって。

──まず意表を突かれるのが1曲目のイントロダクション「Introduction -THE EXPRESS to B9-」。中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES、THE SPELLBOUND)さんの楽曲提供に驚きました。

タカシ 「B9」から新たに僕らのチームに加わってくれたプロデューサーさんが今作のテーマを導いてくれたんですけど、その方のご縁もあって中野さんが楽曲を提供してくださったんです。ご一緒するのは初めてでしたけど、中野さんが思う超特急のイメージを表現していただき……聴く人を「B9」の世界観に誘うためのサウンドを作り上げてくださいました。カッコいいし気分もめちゃめちゃアガるし、すごいなって。

リョウガ そもそも、これまでの作品にイントロダクションなるものが入っていたことがないからね。初のイントロダクションがめちゃくちゃ豪華で、気合いの入りようを感じてもらえるかと思います。さっきタカシが言っていたように、「B9」のテーマは超特急らしいか?と言われたらそうじゃないかもしれない。挑戦とも言えるようなテーマだけど、1曲目で僕らが示したい世界にしっかりと導いてくれると言いますか。曲順通り聴いてもらうことで完成形を見せる作品になっていると思います。

タカシ 「B9」はジャケットビジュアルのメイクさんやスタイリストさんもはじめましての方にお願いしたんです。新たな方にお願いすると、また違った角度から新しい超特急のイメージが浮かび上がるんだ、という発見もありました。

“求愛ダンス”の真骨頂を

──そして、2曲目に収録されているのがリード曲の「MORA MORA」です。今までの超特急にないタイプのリード曲ですね。

タクヤ そうなんですよ。リード曲という感じがしないどころか、超特急の曲じゃないくらいに自分は思いました(笑)。

ユーキ マジでカッコいいからね。今回「求愛」というキーワードも大きなテーマとして1つあって、「MORA MORA」はそのテーマを表現した楽曲です。ダンスも「求愛ダンス」と名付けたんですけど、ミュージックビデオ撮影のときに「それ、MORAってんねー!」とかみんなで言い合うくらい(笑)、「MORA MORA」が体の一部になるくらい、僕らの中ではすでに浸透してます。踊っててめちゃくちゃテンション上がるし、超特急の新しい武器になったと思いますよ。

ユーキ

ユーキ

──タカシさんとシューヤさんのレコーディングはどんなふうに?

カイ まあ、そうですね……。

タカシ 誰よりも速く呼吸整える音がしたで(笑)。

カイ 一聴すると、何を言ってるのかわからないような雰囲気が……。

リョウガ 進めるな、進めるな!

アロハ あはははは!

タカシ (笑)。「MORA MORA」はしばらく僕らの顔になる曲でもあるので、とにかくこだわりましたね。1回レコーディングは済んだんですけど、もっといいテイクが録れると思ったので全部仕切り直して録り直したりもして。「MORA MORA」には「愛を網羅する」という意味があるから、この曲を聴いた人みんなを虜にできるように……セクシーなんだけどいやらしくない歌を意識したと言いますか。歌詞には生々しさもあるけどそれを露骨に表現せず、大人っぽい感じを目指しました。

ユーキ シューヤは間奏の音にすごくこだわってたよね。彼の提案で変わったところがあるんですよ。

シューヤ 一度無音になる部分があるんですけど、そこはデモ音源では間が空いてなかったところなんです。ここはダンスを見せるパートにしようと考えたとき、一度無音を挟んだのち、細かい音の展開から落ちメロにつながるほうがカッコいいなと思ったんですよ。細かく音を刻むところで1人だけが動いて、そこから流れるように展開していくイメージが見えたので……プロデューサーさんに相談したら「それいいね」と。そこからはユーキくんとマサに入ってもらって、どういう音だったらダンスが入りやすいかを2人に聞きつつ、僕たちからアレンジをリクエストしました。実際ダンスも付いて、ユーキくんがバシッと決めてくれているので注目してもらえたらと思います。

シューヤ

シューヤ

──では、ダンスパフォーマンスについても聞かせてもらえますか?

ユーキ さっきタカシが「露骨に表現しない」と言っていたけど、それはダンスも同じで。求愛がテーマだからセクシーではあるんですけど、スキルでセクシーさを見せているんですよ。今までだったら直接的な動きで表現していたであろう部分を、音のハメ方のおしゃれさで魅せていたり。かなり本格的な方向性に振り切っている印象です。振付はKAITAくんにお願いしたんですけど、KAITAくんの持ち味をすごく僕ららしく落とし込んでくれていると言いますか。僕らにしかできない統一感や色が出せていると思う。

ハル 全部の動きがカッコいいですし、サビには真似しやすさもあります。僕的には振りをそろえるのがちょっと難しくて、苦戦した部分があったので「もっと練習しないとな」と思ったりもしたんですけど……みんなで振り固めをしてMV撮影をして、しっかりと振りがそろった完成品を見たときには「どこのグループにも負けない強さがあるな」と思いました。

ユーキ サビは特にキャッチーだよね。手をお化けのようにして、3段階で落としていく動きなんです。全体の流れとしては、メロパートはどんどんヒートアップしていくんですけど、サビで一気に動きをローに落とす。で、間奏のテンポアップする部分でめちゃくちゃ踊り込みをしてから、ラストサビになった瞬間にそれまでのサビよりももっとローに落として、本当の愛を求めるダンスを……“求愛ダンス”の真骨頂を見せます。いい意味で観る人の期待を裏切っていく振付になっていると思いますよ。

ダンスも気持ちもひとつになれた気がして

──MVは撮影したばかりだと伺いました。

ユーキ 一昨日撮ってきたんですけど、今回はマジでダンスオンリーです。今までMV撮影でいっぱい踊ってきましたけど、俺、あんなに疲れた撮影は初めてだった気がする。

リョウガ 確かになあ。

タカシ イメージカットは1つ2つくらいしか撮ってないもんな。あとは全部ダンス。

シューヤ 昨日はみんな筋肉痛でした(笑)。

ハル ちなみに昨日はライブでした!

リョウガ 上半身バッキバキだったよな(笑)。

カイ MVのシチュエーションについては、僕が提案させてもらったんです。この曲は照明演出だけでダンスを見せるのが絶対カッコいいからとリクエストして、2パターンの照明で撮ったんですけど、結果すごくいいものになったんじゃないかなと。僕たちのダンスと光だけで表現することができたので、公開がすごく楽しみなんです。

──アロハさん、撮影を振り返っての思い出はありますか?

アロハ 本当に踊りまくって、踊ってはみんなでチェックして、お互いにアドバイスを送り合う作業を重ねて……。振りを固める時間を十分に取れていたわけではなかったので、リハの空き時間も使ってみんなで振りを確認したことも思い出に残ってます。そういう繰り返しの中で最終的にはダンスも気持ちもひとつになれた気がしているし、その一体感がちゃんと映像に出ていると思うので、ホントに最高傑作になっていると思います!

アロハ

アロハ

──超特急、9人体制に変化しても振りがきれいにそろっているのがすごいなとずっと気になっていました。ダンスを見せるとき、皆さんはどこをそろえることを特に意識しているんですか?

マサヒロ 角度だと思います。今トレンドのダンスって、角度が大事なんですよ。例えば、顔をまっすぐにして踊るよりも少し斜めに傾けて踊ったほうがカッコよく見えたりする振付が多いので、そのあたりはめちゃくちゃこだわっていますね。

──そうなんですね。では「MORA MORA」に関しては特にどんな部分にこだわりましたか?

マサヒロ サビにあるノリの部分ですね。足を左右に踏むだけの動きにグルーヴが入ることでダンスになるんですけど、そのグルーヴの出し方にこだわりました。表情や体の角度、ちょっとしたウェーブが効いてくるからこそグルーヴが出てくるんです。ただ単に振りを踊ってるだけ、という動きだとダサくなりがちなところを、9人でそろえてカッコいい見せ方のダンスに持っていきました。ここは、プロダンサーでも難しいんじゃないかなっていう振付だと思うので、皆さんにも注目して見てもらえたらと思います。