始まりの場所に戻ってきただけなのかもしれない
──リリース直後の11月23日には、アルバムと同じタイトルを冠したさいたまスーパーアリーナ公演も控えています。こちらでアルバム収録曲の披露の予定は?
カイ アルバム曲のボリューム感は考えたいなと思っています。
ユーキ 結成10周年のお祝いが最優先かなと思っていて。
カイ 新曲の発表会にはしたくないんだよね。10周年のお祝いをベースにするという考えがユーキの中にあるから。新曲が多すぎると8号車も付いて来れないと思うしね。
──ちなみに、今回のアルバムには東南アジア地域をモチーフにした曲がないのですが、それはすでにインドネシアのファンコットを取り入れた「バッタマン」(2016年)先輩や……。
カイ タイがモチーフの「ขอเสียงหน่อย」(コーシエンノイ / 2018年)先輩などがいるので。
タカシ そうそう。
タクヤ 「バッタマン先輩」って、なんかかわいい。
ユーキ 先輩方、意外といるね(笑)。
──そう思うと、超特急はこれまでも楽曲で世界を旅していたんですね。
カイ そうなんですよ。なんなら超特急の結成時のコンセプトは“リスペクト韓流”だし。今作で始まりの場所に戻ってきただけなのかもしれないです。
想像していた自分たちは東京ドームに立っていた
──続いて、12月に迎えるグループの結成10周年についても聞かせてください。「10周年ですね」と言われたとき、皆さん真っ先にどのような気持ちになるでしょうか。
ユーキ 僕的には、なんだろうな……もっと高い場所に立っていたかったという思いもありますし、だからこそ10周年という節目を今後のための“きっかけ”にしないとなって。あと、ダンサーメンバーは27歳の年なので、30代を前に暴れつくすぞ!みたいな気持ちもある(笑)。気持ちはずっと、とんがっていたいなと思います。
タクヤ 皆さん「節目の10周年ですね」とおっしゃるんですけど、僕の中で節目に際しての思いがないんですよね、正直……(笑)。
カイ ほぼナポレオンです。彼の辞書に「節目」という文字はありません!
タクヤ むしろ「10」より「8」を大切にしたいですよね、僕らは。
カイ 次は88周年かあー。78年後……。
タクヤ いや、18周年でもいいじゃん(笑)。8号車が待ちくたびれるでしょ!
カイ 僕ら78年後は100歳超えだよ(笑)。でもね、みんなで「같이 가자」とか踊ろうねー!
タクヤ (笑)。とはいえユーキが言ったように、昔想像していた10年目の自分たちは、もう“夢の終着駅”の東京ドームに立っていたので。30歳になる前には実現したいですよね。
──ユーキさんもタクヤさんも、過去を振り返るよりもこれから先のことに意識が向くんですね。
タクヤ 確かに、先のことになっちゃうね。未来を予見できるとか、そういうわけでもないんですけど……。
今生きている証を残すために踊る
──素敵な思考だと思います。加えて聞きたいのが、皆さんそれぞれと「ダンス」の関係性についてで。ダンスを軸にこの10年を振り返ると、どんな思いがあるでしょう。
カイ 自分はグループに入る前からダンスが好きで習っていて、その思いはずっと変わらずなんですけど、「EUPHORIA」(2019年のツアー)のタイミングでより好きになったんです。理由は自分でもわからないんですけど、心境の変化があって。「よりダンスを突き詰めたい」と思って、ライブごとに勝手にテーマを決めて踊ったりしていましたね。
──転機があったんですね。
カイ ツアーに帯同してくれていたU★Gさんと試行錯誤しながら、いろいろ挑戦していました。そのタイミングで自分の中でダンスに対してのアプローチが変わったと思う。そう、その頃からいろんな曲を聴くようになったんですよ。それこそ「ラジナタ」(カイがMCを務めた2018年11月スタートのナタリーのラジオプログラム)のタイミング。たぶんその影響もあると思う。
リョウガ 自分は……10年間、ずっと発見があり続けるなという思いはありますね、ええ。最近の発見で言うと、リハ中に鏡で自分自身を見れていないことに気付きました。なんか、視界の隅でしか自分を捉えていなくて。
タクヤ それ、意味なくない?(笑)
リョウガ 自分を直視すると踊れなくなるっていう発見がありましたわ(笑)。
カイ ダメじゃん!
タクヤ ステージに立つと超特急のリョウガになるってことか。アニメの主人公みたい。
ユーキ フウー!
リョウガ いや、全然だけどさ。そういう感じです(笑)。
タクヤ 僕はなんだろう。もちろん踊ることは楽しくて好きなんですけど、結局なんのために踊ってるの?と突き詰めたら、応援してくれる8号車を喜ばせたい、感動させたいという気持ちに行き着く感じ。8号車がいなかったら成り立たないし、8号車のために踊っているんだなということはずっと思っていますね。
リョウガ えらそうな発言になっちゃうんだけどさ、タクヤってダンスうまくなったよね。
ユーキ うん。
リョウガ タクヤは超特急に入ってからダンスを始めたから、初期の映像を見ると下手くそなんですよ。や、もちろん僕もですけどね?
タクヤ この野郎(笑)。
リョウガ だから、タクヤの進化がすげえなって。
──リョウガさんの言葉、わかる気がします。自分が超特急を取材している範囲の年月でも、タクヤさんの表現がどんどん大きくなっているなと感じていました。タクヤさん自身はそういった変化の自覚はありますか?
タクヤ 1つひとつの振りの形にこだわりはすごくあって、そのこだわりは昔よりも強くなったと思います。高いシンクロ率を保つのがグループのパフォーマンスのよさだと思うから、そういう自分の個性は5人でそろえる部分じゃない、自由なパートで出したいなとか。そういう欲は出るようになりましたね。
ユーキ 僕は、超特急に入っていなかったら自分が「これ!」と決めたジャンルのダンスに絞っていたと思う。この10年でジャズ、ヒップホップ、コンテンポラリー……とジャンルレスに挑戦して、新しい刺激をたくさんもらって踊ることができているなと感じますね。あと、感情の部分を大事に踊るようになりました。昔は「音にハマっていればカッコいい」と思っていたし、海外のダンサーのニュアンスを真似する感じで踊っていたんですよ。だけど超特急の曲の表現者になってからは、歌詞のメッセージや世界観といった形じゃないものを届けること、そのために気持ちで踊ることが大事だよなと感じるようになった。それに、8号車の前で踊るようになったことで、自分の人生観を体で表現している感覚にもなったんです。今生きている証を残すために踊るっていう、独特な感じ。それがアーティスト的な感覚なのかな?とも思いますし、ただのダンサーだった自分の意識が変わったんだと思います。
──ユーキさんはいろいろな表現に挑戦できる超特急の個性に面白みを感じているんですね。
ユーキ そうですね。毎回新鮮な気持ちになれている気がします。「この曲の振り、どうするかな……」と悩むことが多いけど、それも楽しいです。今回のアルバムでもまた新しい表現に出会って、苦労するんじゃないかなと思います(笑)。
──バックボーカルのタカシさんも、ずっとダンスと向き合ってこられたと思います。
タカシ そうですね。昔は踊る分量が少なかったとはいえ「ダンスボーカルグループの一員なんだから踊れないと」という思いがありました。僕のせいでグループのレベルが下がるのが、どうしても嫌だったんです。高校生のときは学校が終わったらすぐに地元のダンススクールに行って。「とにかく習得しないと」という焦りがずっとありましたね。でもね、スクールには僕よりうまい小学生がざらにいるんです。自分はついて行けなくて「高校生なのに恥ずかしい……」という思いを何度も味わい(笑)。ただ、自分は困難にぶつかったときにムキになる性格なので、そこに助けられた部分はすごくあります。グループの体制が変わって行く中で踊る機会も増えているから、うまく踊れるに越したことはないし。ダンスもモノにできたとき、自分が理想としている真のボーカリストになれるのかな?とも思います。ダンスはこれからも僕にとって天敵かもしれないけど(笑)、うまく共存して、歌でも体でも表現できる人間になりたいです。
──ありがとうございます。では最後に、この先の超特急の歩みについて、今の思いを聞かせてください。
ユーキ みんなが思うように進めない現状ではあるんですけど、この困難な時期が“意味のある停車”だったと思ってもらえるよう、これからの僕らの姿を見せていきたいなと思います。超特急が突き進んでいく姿を皆さんの目に焼き付けますので、8号車が「応援していてよかった」と思い続けられるグループでいたいですね。
カイ ワクワクさせましょう!
次のページ »
リョウガ ソロインタビュー