超特急が11月10日にニューアルバム「Dance Dance Dance」をリリースする。
12月25日に結成10周年を迎える超特急。アルバムをリリースするのは、2018年11月発表の「GOLDEN EPOCH」以来、3年ぶりのことだ。ひとクセもふたクセもある斬新なコンセプトの楽曲とパフォーマンスで、シーンにおいて常に存在感を示してきた彼らは、今作で「世界各国に超特急の名前と音楽を広げ、世代を超えて踊れる作品」というテーマを掲げた。
世界各地のダンスミュージックや言語、文化を14の収録曲に取り入れ、ギュッと詰め込んだアルバムは、さながら色鮮やかな世界地図のよう。超特急のディスコグラフィの中でも類を見ないほど挑戦的な今作は、いかにして作られたのか。音楽ナタリーではメンバー5人にインタビューを行い、この意欲作についての思い、さらにはダンスと歩んだそれぞれの10年について話を聞いた。加えて、特集後半にはグループのリーダー・リョウガのソロインタビューを掲載する。10周年を目前に、リーダーの胸に去来する思いとは。大ボリュームのリリース記念特集を楽しんでほしい。
取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 須田卓馬
収録曲、一発で全部読めた人にプレゼントあげたい
──世界中のダンスミュージックを集めたアルバム「Dance Dance Dance」が完成しました。今年の超特急はサンバをテーマにした「CARNAVAL」(7月リリース)、K-POPを意識した「같이 가자」(カチ カジャ / 9月リリース)と配信で楽曲を発表してきましたけど、これらは最初からアルバムに集約させる流れだった?
タカシ 「CARNAVAL」から、アルバムにつながる伏線が張られていた感じですね。でも捉え方次第なんですよ。僕らの“妹分”のBULLET PINKちゃんがリリースした「Guilty」(4月リリース)はミュージックビデオの舞台が空港なので、そこを出発点に飛び立っていったのかな?とも思えるし。
──確かにそうですね。「CARNAVAL」のリリースタイミングのインタビューでは、ユーキさんの「暗い世の中をとことん明るく照らしたい」という言葉をきっかけにサンバ調の楽曲が作られたというお話をされていましたが、その言葉が広がりに広がって、世界のダンスミュージックをテーマにした今作が制作されたのでしょうか。
ユーキ はい。最初に言ったときには、ここまで広がるとは思ってなかったけど(笑)。でも、世界へ視線を向けて僕らのエンタテインメントを発信していくぞという気持ちが今作には表れていると思うし、今は世界中が元気になりづらい状況にあると思うので、僕らの音楽があらゆる人の元気の源になったらいいなという思いも込めています。
──ただトラックリストを見たときに、タイトルが多言語すぎて。ぱっと視認できるのは唯一「大大大地」だけという……。
一同 あはははは!
タクヤ 僕らもわからなかったので大丈夫ですよ!
カイ 収録曲、一発で全部読めた人にプレゼントあげたいくらい。
リョウガ 読み方や国名を横に書いてほしいよなあ(笑)。
──しかも、各曲のモチーフとなった国や地域をタイトルと照らし合わせていくと、スイス、中国、ニューカレドニア、アイスランド……と幅広い場所がピックアップされていて、ますます「どんな内容なんだろう?」と興味が湧きました。
ユーキ 僕らもビックリしました。
タクヤ ユーキは「こういう感じの曲をやりたい」とリクエストをしたりはしてたけど、さすがに国の指定まではしていないので。
──いざ聴いてみると曲のジャンルも歌詞に使われている言語も多彩すぎますね。何よりボーカルのタカシさんが……。
ユーキ 歌うの大変でしたよね、絶対。
カイ そうですね……大変でしたけど、がんばりました。
タカシ 僕の話や(笑)。タイトなスケジュールで歌入れをしたので、忙しさはありましたね。自分はしっかりと下準備をしたいタイプなので。
──タカシさんはソロアルバムも9月にリリースされましたけど、歌入れの時期は?
タカシ 両方重なっていたので、交互に録っていたんですよ。でも途中で「これは大変だぞ」と思い(笑)、まずソロアルバムを終わらせてこちらに向き合いました。「Dance Dance Dance」の曲はいろんな言語を発音から練習しないといけないし、「しっかり会得して臨まないと」って責任を感じていたので。
──今回のようなテーマの作品を制作するにあたって、異文化への理解を深めることは大事な作業になってきますよね。
タクヤ 簡単ではないですよね。振り入れをするときにも、そういった作業はしっかりやらないとなと思います。
いや、今回はメインボーカルなんで
──先行配信された「Добрый день」(ドーブリジェン)はダンサーの4人がすべてのパフォーマンスを担うという、初めての試みが行われた曲です。「この曲をダンサーチームだけでやってみよう」と、スタッフさんから提案があったんですか?
タクヤ そう言われた記憶がないんですよね。渡された歌詞カードの歌割りに、ダンサーの名前しかなかったんです。何も説明なし!(笑)
リョウガ 突如「レコーディング」っていうスケジュールが入ってね。
タカシ 曲が届いて「これも覚えなきゃ、聴こう」と聴きながら歌詞カードを見たら「あれ、俺の名前ない?」となりましたから(笑)。
カイ 僕はビジュアルのディレクションを担当したので、一応先に聞いてはいました(笑)。
──そうだったんですね。急に歌を割り振られ、曲はロシアンハードベースという馴染みがあるとは言い難いジャンルで、歌詞にはロシア語が使われていて……と、なかなかすごい状況ですね。
ユーキ 僕はEDMが大好きなんで、この曲は気持ちよかったですよ。昔、自分のイベントでDJをやったりもしていたし……。
カイ 懐かしい、ユーキのDJ!
──DJユーキを復活させるにはピッタリの曲じゃないですか。
カイ いいじゃん、やんなよ!
ユーキ いや、今回はメインボーカルなんで。俺の声、いいパートに入ってますから!
──レコーディングはいかがでしたか?
カイ すごく新鮮でした。普段僕らがやっているガヤ入れとは違って、みんな歌い方を調整しながら少しずつ進めて。今回は“逆号車順”でのレコーディングだったので僕はみんなの歌をずっと聴いてたんですが、ダンスでは見られない一面を見られた感じ。
タクヤ リョウガは褒められてましたよ。担当しているBメロの主旋律を録ったあとに「ハモリも歌って」とリクエストされたんですけど、それも一発で当てるからスタッフさんに「お前、なんでもできるなあ!」って。
リョウガ 僕ね、歌に感情が乗らないんですよ。だから逆に助かりました。無機質な雰囲気のボーカルだったので。
タカシ じゃあ、みんなコーラスとか追っかけもやったってこと?
タカシ以外全員 やったやった。
タカシ おお、そうなんや。
──タクヤさんご自身はどうでした?
タクヤ 楽しかったです。ブースに入っている一瞬だけでも自分に酔えるような感覚で、気分がよかったです。良し悪しは別として。
リョウガ いや、すげえカッコよかったよ。タクヤ、ラップうまいんだよなあ。クールでさ。
タカシ わかる。
──ダンスパフォーマンスも実際4人だけで?
ユーキ はい、その想定で動いてます。
カイ タカシは振り入れの日はお休みね!
ユーキ たださ、自分たちのライブではその形でいいけど、外部のフェスに出るときはどうしようかなって考えてる。この曲、たくさんやりたいんだよなあ。
──タカシさんがDJブースに入るとか……?
ユーキ それが一番しっくりきますよね(笑)。
今までになかった方向性の夏ソングやな
──収録曲はどれを取っても個性的なので、それぞれに「この曲キてるな!」と思う曲を1曲ずつピックアップしていただけますか?
タカシ 僕は、中国をテーマにした4曲目の「荣光」ですね。中国っぽいメロディラインを取り入れつつも程よい塩梅で、純粋にEDMとしてカッコいい曲になっていると思う。間奏のトラックにもいろんなギミックが入っていて楽しいです。ボーカルは力強さで押し通す感じではなく、ファルセットと地声の行き来をどれだけなめらかにできるかという、自分の課題としている要素も入っていたので印象深くて。あと、この曲はデモ音源では英語だった部分が中国語になったんです。
──そうだったんですね。
タカシ 中国語は発音がホントに難しいのでがんばりました。メロディに乗っているからこそ表現できた、という側面もあるかもしれないです。
ユーキ 僕は6曲目の「Magnifique」が好きですね。ニューカレドニアをモチーフにした曲なんですけど。
──南太平洋にあるフランス領のニューカレドニアですね。
ユーキ “天国に一番近い島”をイメージしたこの曲はすごくさわやかで、かつ疾走感があって好き。
──ストレートにさわやかなポップスで、個性派ぞろいの楽曲群の中にあって清涼剤的なポジションを担っているなと思いました。
ユーキ そう。夏にめっちゃ流したい感じ。
──超特急の新たな“夏曲”として定番化するかもしれないですね。
タカシ 確かに。今までになかった方向性の夏ソングやな。
──ちなみに、ユーキさんのリクエストが反映されたのはどの曲なんですか?
ユーキ 「You Don't Care」(通常盤のみ収録)です。夏に出した「CARNAVAL」のインパクトがすごかったから、カッコよく締まった曲をやりたいという思いもあって「R&Bの曲が欲しいです」と。年末のライブを見据えてリクエストさせてもらったので、収録されてうれしかったですね。