超特急が2月20日に新曲「ソレイユ」を配信リリースする。
テレビ東京系「ドラマ24『フルーツ宅配便』」のエンディングテーマとしてオンエアされている「ソレイユ」は、ドラマの劇伴も手掛ける高田漣が超特急に提供した楽曲。“町でいちばんの美女”への甘くほろ苦い思いがフォーキーなサウンドに乗せて歌われ、これまでの超特急の楽曲とは一線を画すような聴き心地の1曲に仕上がっている。
高田の手によって超特急が新たな境地を開いた「ソレイユ」は、どのようにして生まれたのか。音楽ナタリーでは超特急と高田の対談をセッティングし、両者に今作へ注いだ思いを聞いた。また特集後半には、超特急の6人がこの冬の活動をリラックスモードで振り返った単独インタビューも掲載する。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 須田卓馬
どんな超特急が待っているんだろう?
──今回のコラボは誰も予想がつかなかった組み合わせだと思いますが、決まったときはどう思いましたか?
高田漣 正直「大丈夫かな?」と(笑)。
超特急 あはははは(笑)。
高田 自分でも想像がつかないというか。普段はそんなこと思わないんですけど、「本当に僕で大丈夫ですか?」というのが率直な印象でしたね。
──高田さんは、ダンスボーカルグループと作品を作るのはこれが初めてですよね。
高田 そうなんです。ダンスミュージック自体は好きだけど専門ではないですし、「作れるかな」という思いが大きかったですね。
タカシ 僕たちは僕たちで「え、僕らでいいんですか?」という気持ちでした。高田漣さんとコラボさせていただけるなんて思ってもいなかったですし、すごく光栄なことなんですけど……楽曲に合ったパフォーマンスができるのかな?と不安になったし。でも、やっぱり楽しみな気持ちがすごくあって。「いったいどんな超特急が待っているんだろう? どんな化学反応が起きるんだろう?」と……本当に、誰にもわからないから。
高田 あはははは(笑)。
タカシ 結果がすごく楽しみだからこそ、全力で取り組みたいなと思いました。
町でいちばんの美女
──「ソレイユ」の制作はどうやって進んでいったのですか?
高田 元となる曲のアイデアは、以前からあったんです。そこに今回お話をいただいて、超特急と一緒にやるということ、それともう1つはエンディングテーマとしてこの曲が使われるドラマサイドの意向みたいなものもあり。なので、もともと自分の中にあったアイデアを解体したりしながら、最終的にちゃんとダンスミュージックに落とし込めるものにしていく、という作業でした。普段の作曲の場合は自分が歌う前提なのでやりたいように作っているんですけど、今回は超特急がパフォーマンスするということが前提にあったから、普段の作曲とは違うものになりましたね。作業としてすごく楽しかったです。
──もともとあったテーマというのは、どういったものだったんでしょう?
高田 歌詞に「町でいちばんの美女」と出てくるんですけど、これはチャールズ・ブコウスキーの短編集のタイトルなんです。以前この言葉にすごく引っ張られて景色が浮かんで、曲を書き始めたんですよ。今回「フルーツ宅配便」というドラマのエンディングテーマとして曲を仕上げていく中でもブコウスキーのこの作品からインスパイアされているし、どんどん物語が広がっていった感じでした。
タカシ あの、初めて曲を聴いたとき、「好き……」って思いました。
一同 あはははは!(笑)
高田 ありがとうございます(笑)。
カイ それは楽曲に対して? 高田さんに対して?(笑)
タカシ どちらもです。僕自身が日本のポップスやフォークがすごく好きというのもあるし。あと、超特急はジャンルにとらわれずどんな曲もやるのが特徴なんですけど、この「ソレイユ」みたいに物語が広がるような曲って、今まではそんなになかったなという印象で。聴いていると自然と笑顔になって、太陽が明るく照っている感じが想像できる。イメトレをめちゃくちゃしなくても情景が浮かんできたことが僕の中では爽快で、すごく楽しくなったんです。
リョウガ ただ、超特急って“ぶっ壊す”みたいなイメージを持たれているケースもあると思うんですよ。フェスなどに出させていただくときのパフォーマンスなんかはそんな感じだし。だから僕は高田さんが作られた1つの作品を、僕たちが“ぶっ壊して”しまうと思われるんじゃないかという危機感を抱きまして……。
高田 あはははは!(笑)
リョウガ 「まずいぞ、うまく『ソレイユ』という曲の中で生きていけるのか?」と思ったりもしたんですけどね。これまでも僕らいろんなジャンルの楽曲を披露していますが、今回の曲は今までで一番の“変化球”じゃないですけど……。
ユーキ うん。
リョウガ 今までの領域とはかなり違う存在と出会わせていただいた感じです。それに、高田さんとご一緒させていただくことは「GOLDEN EPOCH」とタイトルを付けたアリーナツアーを終えて“黄金時代”に進もうとしている超特急の、その1歩目の証明になるような出来事でもあったので。いい意味で、すごく重みを感じました。
超特急となら「実験できるな」とも思ったんです
──「ソレイユ」には高田さんのセルフカバーバージョンもありますが、バンドサウンドのセルフカバーバージョンに対して超特急の「ソレイユ」は打ち込みを多用されています。これは先ほどおっしゃっていた「ダンスミュージックに落とし込む」ということを意識して?
高田 そうですね。生楽器はある程度入れようとは思っていたんですけど、例えばエド・シーランの楽曲のように、生楽器で従来のポップスの型を残しながらもきちっと現代の音としてアウトプットされている、というものをもともと作ってみたかったんですよ。
──そうだったんですね。
高田 ただ自分の作品の中では、僕の声質も含め作りあぐねていて。そんなときにちょうど今回の超特急とのお話をいただいたんです。だから、言葉が合っているかはわからないけど「渡りに船」と言いますか。アーティストとしてではなく、プロデューサーとして作りたい音を作らせてもらった、という感じなんです。
ユーキ あの、高田さんは普段どんな曲をよく聴かれるんですか?
高田 去年よく聴いたのはアンダーソン・パークやヒップホップのマック・ミラー、ノーネーム、サンダーキャットとかですね。2018年はなんとなく、音楽シーン全体……特に海外のものは音が急激に変わった年だったと思うんです。それはEDMとかいろんなものの影響がポップスにも入ってきたからだと思うんですけど、音像が変わった気がして。僕らもその音の解像度を無視できないような状態になったから、すごく意識して今の音を聴くようにしていたんです。そう、だから超特急と一緒にやるとなったとき「実験できるな」とも思ったんですよ。自分が今出したいサウンドがあって、それを超特急というアイコンが自分に絶対できないような表現で発信してくれるだろうから。
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歌の先にある光景を垣間見れた気がしたんです