ナタリー PowerPush - BUCK-TICK

櫻井敦司&今井寿が明かすバンドの在り方

今回初めて櫻井がアルバムのプロットを作った

──BUCK-TICKはこの25年の間、その時代ごとにいろんな要素を取り入れて新たなことにチャレンジしてきたと思います。ですが特にここ何作かに関しては原点回帰というか、すごくシンプルなバンドサウンドが主軸になっていて。今回の「夢見る宇宙」もデジタル的な要素やブラスを取り入れたりっていう装飾はあるものの、基本はメンバー5人で作り上げるバンドサウンドです。ここ最近はそういったテーマでいきたいという思いが皆さんの中にあるんでしょうか?

今井 はい。今はこれが一番やりたいことであって、魅力が感じられるものですね。

──今回はこういう作品にしよう、こういう路線でいこうっていう話し合いはバンド内でするんですか?

今井 一応メンバーとスタッフで集まって、テーマ的なものを出し合ったりレコーディングのやり方を話し合ったりはします。でも今回は先に櫻井さんからアルバムのプロット的なものを出してもらって、そこから曲を作っていきました。

──櫻井さんはそういうプロット作りは今までもしていたんですか?

櫻井 いや、コンセプトアルバムは別ですけれど、1曲ごとに短編の詞を使ってみんなに「こんな物語で、僕はこういう曲を待ってます」みたいに説明するやり方は初めてでした。

──その詞には具体的にどんなことが書いてあるんですか?

櫻井 ひとつの物語を3~4行の中に凝縮させてるんですけど、歌詞というよりは単語の羅列だったり、内容を端的にまとめたようなものだったりするんです。「夢見る宇宙」っていうタイトルや、「夜想」「ADULT CHILDREN」「INTER RAPTOR」といったキーワードも最初に出てきていて、歌詞の核になるようなものが並んでいる感じです。

──曲調までは指示しない?

櫻井 そういう縛りはなんか窮屈ですし。そこまでやるのは作曲者に対して失礼ですからね。

──ちなみにアレンジは5人で決めるんですか?

今井 いえ、アレンジはその曲の作曲者がやります。

──あ、今井さんや星野(英彦 / G)さんが?

今井 そうです。ただ、アルバムの曲順については、今回はほとんどが櫻井さんが決めました。

──その曲順は最初のプロットの流れに沿ったものになってるんですか?

櫻井 アルバムの中には今井さんの歌詞もあるので、必ずしもそうとは言えなくて。ただ「夢見る宇宙」って曲はアルバムのラストにしたいなっていうのはずっと思ってました。そこだけは譲れないかなと思っていて、それ以外の1曲目から10曲目まではほかのメンバーからこうしたいっていう意見があればすり寄せていきました。あ、でもユータ(樋口豊 / B)の意見は却下しましたけど(笑)。

今井 あはは(笑)。

──そうなんですか?(笑)

今井 決まりかけてたのに、最後に余計なことを言うから却下されて(笑)。

「CLIMAX TOGETHER」はフェスに向けて作った

──アルバム2曲目の「CLIMAX TOGETHER」というタイトルは、恐らく古くからのBUCK-TICKファンにとっては馴染み深いものだと思います(過去に同タイトルのライブを実施。のちに映像作品化されている。今年5月には同タイトルの特別番組もニコニコ生放送で配信)。このタイミングに改めてこの言葉を曲名に用いたのはどうしてですか?

今井 まあ25周年っていうことで、フェス(9月22、23日の野外イベント「BUCK-TICK FEST 2012 ON PARADE」)に向けての曲を作っていて。明るくてノリの良い感じの曲ができたんですけど、タイトルをどうしようかなって考えていたら、曲調と同じく明るい言葉が一番わかりやすいなと。それで急にこのタイトルを思い出したんです。

──アルバムの初回限定盤にはこの曲のPVが収録されたDVDが付きます。撮影は8月に新宿LOFTで行われたそうですが、久しぶりにLOFTのステージに立ってみてどうでしたか?

今井 まあ……特に……。

──あはは(笑)。

今井 LOFTはLOFTでも今は別の場所だし。でも市松模様の床は昔と一緒で、「ああ、やっぱりこれなんだ」って思いました。一応写真は撮りましたけど。

──あともうひとつ、「ONLY YOU -WE ARE NOT ALONE-」という曲にはブラスサウンドを取り入れてますが、とても意外だったのがSOIL & "PIMP" SESSIONSのタブゾンビさん(Tp)と元晴さん(Sax)が参加していることで。これはどういうつながりで実現したんですか?

今井 そういう音が欲しいなってアイデアがディレクターさんから出て、だったらそっち方面から参加してもらったほうがいいんじゃないのかってことになって探してもらったんです。

──じゃあ元々皆さんと面識があったわけではなく?

今井 ではないですね。で、実際に会ってちょっと話をしたら、まあ微妙に飲み屋関係でつながりがあることがわかって(笑)。

ニューアルバム「夢見る宇宙」 / 2012年9月19日発売 / Lingua Sounda

CD収録曲
  1. エリーゼのために -ROCK for Elise-
  2. CLIMAX TOGETHER
  3. LADY SKELETON
  4. 人魚-mermaid-
  5. 夢路
  6. ONLY YOU -WE ARE NOT ALONE-
  7. 禁じられた遊び -ADULT CHILDREN-
  8. 夜想
  9. INTER RAPTOR
  10. MISS TAKE –I'm not miss take-
  11. 夢見る宇宙 -cosmix-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「CLIMAX TOGETHER」ビデオクリップ
  • Live at 日比谷野外大音楽堂 2012.6.10
    SE
    1. エリーゼのために
    2. REVOLVER
    3. 疾風のブレードランナー
    4. 夢見る宇宙
    5. MY FUCKIN' VALENTINE
BUCK-TICK(ばくちく)

櫻井敦司(Vo)、今井寿(G)、星野英彦(G)、樋口豊(B)、ヤガミ・トール(Dr)の5人からなるロックバンド。現在に至るまでメンバーチェンジをすることなく活動を続けている。1987年にメジャーデビューし、翌1988年にシングル「JUST ONE MORE KISS」のヒットにより本格的なブレイクを果たす。ダークな世界観を追求する一方で、グランジやブレイクビーツ、ドラムンベース、エレクトロニカ、ポストロックなど常に音楽要素を積極的に取り入れている。2005年には初のトリビュートアルバム「PARADE ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~」をリリース。2007年には同アルバムに参加したアーティストたちとともに、初の主催フェス「BUCK-TICK FEST 2007『ON PARADE』」を横浜で開催して大成功を収めた。デビュー25周年を迎える2012年には、新レーベル「Lingua Sounda(リンガ・サウンダ)」を設立。シングル「エリーゼのために」「MISS TAKE ~僕はミス・テイク~」、トリビュートアルバム「PARADE II ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~」に続いてニューアルバム「夢見る宇宙」をリリースした。さらに9月22、23日には千葉ポートパークにて主催フェス「BUCK-TICK FEST 2012 ON PARADE」を開催する。