80年代後半~90年代前半の音と、EDM以降の“方程式”
BRIAN SHINSEKAIというプロジェクトは、楽曲面でも興味深い取り組みがなされている。一聴して感じるのは、80年代後半~90年代初頭のシンセポップやニューウェイブのテイスト。ただ、それを現在のEDM以降のサウンドとしてアップデートしてリバイバルしている。この志向性には彼自身のルーツも大きく関係しているとのこと。
自分が大きく影響を受けたのが80年代のシンセポップやニューウェイブ全般、一部のニューロマンティック、それに90年代のダンスミュージックで。そういうルーツはまず大きいですね。それに、今の空気感として、80年代後半~90年代初頭くらいのファッションや音楽が新鮮に映る感覚があるんです。自分もそう感じるし、街でそういう音楽が流れていたりする。例えばアヴィーチーのインタビューを読むと、そのあたりの音楽に造詣が深かったりするんですよね。だから、自分のルーツと今やるべきことが合致したものを作ろうと思って。そうして80年代後半~90年代前半の音を選びました。
今回配信された3曲の中でも「首飾りとアースガルド」はそういったサウンドメイキングがストレートに反映された曲だ。
「首飾りとアースガルド」はアルバム収録曲の中で最初にできた曲ですね。いわゆる80年代的なリズムパターンを使いつつも、90年代初頭あたりの少しドライにフィルターがかかったようなドラムの音色をセレクトしました。コード進行も80'sっぽいけど、EDM以降の最近のクリエイターたちの方程式をそこに当てはめた感じですね。僕からすれば、今のEDMというのは80年代後半から90年代前半の宅録アーティストのシンセポップの再解釈みたいなイメージがあって。そういうやり方が自分としてもしっくりくるものだったので、これを1つの軸にしていろんな曲を作っています。
アリーナでシンガロングできる良質なシンセミュージックを
「TRUE/GLUE」は跳ねるピアノとシンセベースのフレーズが印象的なディスコナンバーだ。
「TRUE/GLUE」はサウンドメイキング重視ですね。自分が考える2017、18年に耳なじみのいいダンスミュージックを作ろうと思った。そこでやっぱり80年代後半~90年代前半あたりのさまざまな音を取り入れ、EDM以降の感覚で仕上げていきました。例えばマドンナの「Vogue」(1990年発売のシングル)の硬いピアノの音色や、Primal Screamの「Screamadelica」(1991年発売のアルバム)のハウスサウンド、そういう雰囲気の再解釈をやってみたいと思ったんです。あとはジョージ・マイケルの「Faith」(1987年発売のソロデビューアルバム)や「LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL. 1」(1990年発売のアルバム)あたり。あの頃の音楽って、クールな雰囲気とホットな雰囲気が共存している感じがして。それを今の形にしたダンスミュージックです。
「2045(Theme of SHINSEKAI)」はインストゥルメンタルのナンバー。チェコの作曲家アントニン・ドヴォルザークの「交響曲第9番 ホ短調 作品95『新世界より』」のフレーズが引用されている。
この曲は歌ではなくサウンドの空気感で自分の音楽性を明確に示しました。ドヴォルザークの「新世界より」も好きでしたし、その曲を、自分が影響を受けてきた音楽、1960年代や70年代のイギリスのロック、80年代のニューウェイブやシンセポップ、90年代のオルタナティブロックやインダストリアル、そういうのを全部経過したうえで、今の音として表現したかったんですね。なので、クラシックだけでなく、70年代のデヴィッド・ボウイ的な匂い、Roxy Musicのようなプログレッシブロックの感じも入れているつもりなんです。そういうものを全部入れたうえで、自分が思う最新の形としてパッケージした。2045年には人工知能が発達して人間を超える、いわゆるシンギュラリティが訪れると言われていますよね。そのときにどんな変化が訪れるかはわからないですけれど、少なくとも自分が本質的に音楽を楽しんでいることは変わらない。そういう、変容していくものと不変なものに対する「どうなっていくんだろう?」という思いを曲として作ってみようと思ったんです。
この先、10月、11月、12月と配信は続く。デビューアルバム「Entrée」に向けて、BRIAN SHINSEKAIの才能の全貌は、少しずつ明らかになっていく。
メインストリームにちゃんと通用するポップスを作っていきたいと思っていますね。プロジェクトとして音楽を作っているので、フィーチャリングを迎えたり、映像作家とコラボしたりと、いろんなことをやれる可能性がある。広いアリーナでシンガロングできる良質なシンセミュージックを作り、複合的なエンタテインメントを提供していきたいと思っています。
「首飾りとアースガルド」
「TRUE/GLUE」
「2045(Theme of SHINSEKAI)」
- BRIAN SHINSEKAI「Entrée」
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2018年1月24日発売
Victor Entertainment / AndRec
- 収録曲
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- 首飾りとアースガルド
- TRUE/GLUE
- 東京ラビリンス ft. フルカワユタカ
- FAITH
- ゴヴィンダ
- バルバラ
- ルーシー・キャント・ダンス
- CICADA
- クリミアのリンゴ売り
- Loving the Alien
- 2045(Theme of SHINSEKAI)
- トゥナイト
- BRIAN SHINSEKAI(ブライアンシンセカイ)
- 2009年、17歳のときにブライアン新世界名義で出場した「閃光ライオット」でファイナリストに。2011年に1stミニアルバム「LOW-HIGH-BOOTS」、2012年に2ndミニアルバム「NEW AGE REVOLUTION」を発売した。2013年にはバンドBryan Associates Clubを結成してライブ活動を展開。2016年11月に活動を休止したのち、2017年9月に新プロジェクトとしてBRIAN SHINSEKAIを始動させた。2018年1月にビクターエンタテインメントよりデビューアルバム「Entrée」をリリース。収録曲をアルバムの発売に先駆けてサブスクリプションサービスで順次先行配信するという試みで話題を集めている。
2018年1月24日更新