BRAHMAN「Three Times Three」特集|TOSHI-LOW&ハナレグミ・永積崇が振り返る、充実感に満ちた「中央演舞」

BRAHMANのライブ映像作品「Three Times Three」が4月27日にリリースされた。

「Three Times Three」は、BRAHMANが2021年末から2022年初頭にかけて行った3本のライブを収録した映像作品。DVD / Blu-ray3枚組仕様となっており、昨年12月31日に東京・Zepp Tokyoの閉館前ラストライブとして行われたELLEGARDENとのツーマンライブ「Zepp Tokyo Thanks & So Long! FINAL」、建て替えが決定している東京・中野サンプラザホールにて1月13日に行われたホールツアー「Tour -slow DANCE HALL-」東京公演、今年1月をもって閉館した東京・USEN STUDIO COASTで1月20日にハナレグミを迎えて行われたライブ「中央演舞」がそれぞれ収録されている。

音楽ナタリーでは「中央演舞」で競演した、TOSHI-LOW(Vo)とハナレグミ・永積崇の対談をセッティング。この2組の対談が実現するのは、2014年に音楽ナタリーで展開したOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND(現:OAU / 参照:OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「FOLLOW THE DREAM」&「New Acoustic Camp」 TOSHI-LOW×ハナレグミ対談)特集以来およそ7年7カ月ぶりとなった。2014年の対談後、ハナレグミは同年9月にTOSHI-LOWがオーガナイザーの1人を務める野外音楽イベント「New Acoustic Camp」に出演し、それ以降も同イベントに欠かせない存在に。2017年にはBRAHMANのシングル「今夜 / ナミノウタゲ」の収録曲「ナミノウタゲ」にゲストボーカルとして参加。2018年開催のBRAHMANの初の日本武道館単独公演「八面玲瓏」では、「ナミノウタゲ」をTOSHI-LOWとデュエットするなど親交を深めている。今回は当時と同じく音楽ライター・小野島大をインタビュアーに迎え、TOSHI-LOWと永積がお互いにシンパシーを感じるポイント、「中央演舞」での印象的なエピソードについて語ってもらった。

取材・文 / 小野島大撮影 / 森好弘取材協力 / Little Nap COFFEE ROASTERS

TOSHI-LOWと永積崇、お互いの印象

──そもそもTOSHI-LOWさんはハナレグミのシンガーソングライターとしての在り方に興味があったんですよね。

TOSHI-LOW 俺は1人で歌うということが基本的になかったの。だから、それまではたった1人でやっている人はバンドが組めないかわいそうな人たちだと思っていて。

永積崇 はっはっは!

TOSHI-LOW 人を信用できないとか、逆に裏切られてるとか(笑)。

永積 い、いい話だねえ(笑)。

TOSHI-LOW で、いざ自分も1人でやってみたら全然できなくて(笑)。1人でやっている人のすごさをまざまざと感じたの。ギターの弾き方から声の出し方まで、すごく計算してやっているんだなというのを痛感した。単純にギターをガシャガシャやっていれば歌えると思ってたんだけど、甘かったなと。それで崇にいろいろと話を聞いてみたら、すごく緻密に計算してやっているんだなとわかって。それから見方がめちゃめちゃ変わって、ハナレの音楽も「あ、こうやってんのかな」と想像しながら聴くようになった。

左からTOSHI-LOW、永積崇。

左からTOSHI-LOW、永積崇。

──ハナレグミの音楽とは対極にありそうなBRAHMANというバンドから声がかかったわけですけど、永積さんはオファーを受けたときどう思われたんですか?

永積 もちろん出会って話すようになる前は、一緒にやる日が来るなんて思ってもなかったです。でも、話していく中で同じ時間や時代を感じて物を作っているっていう意味で、なんかこうフィーリング的にどこかで交わる瞬間がありそうだなと感じていたんですよね。実際、「ニューアコ(New Acoustic Camp)」に行ったときにすごく多彩だなと思ったんです。チームとしても統制が取れているし、単純にとても完成されているフェスだなと思った。それでTOSHI-LOWはとてもバランス感覚のいいやつなんだなと。

──なるほど。

永積 TOSHI-LOWと話していると、いつも「適当にやってんだよ」とかって言うんですよ(笑)。どうやってチームを作っているかはわからないけど、とてもバランス感のあるフェスだなと実際に行ってみて感じました。

TOSHI-LOW まあ、暴力で統制してるから、すべてを。

永積 (笑)。

TOSHI-LOW ……なんかね、苦手なんだよね。そういうふうに言われるの。

──褒められるのに慣れていない?

TOSHI-LOW 慣れてない(笑)。でも崇がその総合力を見てくれていたのはうれしい。総合力とキャラで俺はやってきちゃったから。だからその……いちシンガーとかいちアーティストとして自分を戦わせたことがなかったからね。そういう意味で、ちゃんと1人で戦い抜いている人を見ると、俺がやっていない、避けていることをやってるなと思う。バンドが好きというのはもちろんあるんだけど、バンドがなかったらできないっていうのと、バンドがなくても自己表現できるというのは全然違うからね。俺はあえてバンドを選んでいるのではなくて、1人では何もできないから。結局はそこにつながっていくんだよね、全部。

TOSHI-LOW

TOSHI-LOW

──お二人はプライベートでも付き合いがあると聞いてます。

TOSHI-LOW ご近所なんでよく会う。

永積 少しずつ地元の話をしたりして理解というか、お互いを知る機会が増えていった感じなのかな。

TOSHI-LOW 種類が違うところから出てきた2人だから、話していると「そうなんだ」みたいな発見があるよね。

──自分とは違う文化の人と話せる面白さ、刺激みたいな。

TOSHI-LOW 都会の不良とはちょっと違う形でドロップアウトした人たちと、俺らみたいに単純な田舎のヤンキーみたいな感じ。でも年代が一緒だから話してみると「あ、わかる!」みたいな、共有しているものが実はめちゃくちゃ多いよねっていう。

──例えば?

TOSHI-LOW 女の好み?

永積 はっはっは! なんの話だよ!(笑)

TOSHI-LOW あのスケがよー、みたいな(笑)。

永積 スケの話なんてしたことないよ!(笑)

──永積さんから「スケ」なんて言葉が出てくるとは(笑)。

永積 いやいや、合わせただけです(笑)。言ったことない!

TOSHI-LOW

TOSHI-LOW

永積崇

永積崇

TOSHI-LOWが感じる、永積崇の“優しい”だけじゃない何か

TOSHI-LOW でも、安心するんだろうね。出身は違ってもずっと同じところに一緒にいたっていうか。

永積 BRAHMANとだいたい同じ頃に僕もバンドを組んで。「BARFOUT!」とかで自分のページの何ページか隣にTOSHI-LOWたちが載っていたりしたんですよ。たまに会って話すと、あーやっぱりあのときにあの場所にいたんだっていうのがポロッと出てくる。TOSHI-LOWたちはそれこそハイスタ(HI-STANDARD)のフェス(「AIR JAM」)とかに出てたけど、俺はハードコアというシーンが盛り上がっていくのを横で見ていて、「すごいシーンが盛り上がってきてるんだな。ファンクでやってる俺たち大丈夫かな?」みたいに思ってたよ(笑)。

TOSHI-LOW あの盛り上がりは俺もすげーなと思って見てたもん。

永積 あれ、出てなかった?

TOSHI-LOW 出てたけど、あれはみんなハイスタを観に行ってたから。自分たちの現象だなんて全然思っていなくて、スゲー客観的に見てた。アンダーグラウンドなライブハウスで、少し変わったへんてこな音楽をやっているハードコアバンドという意識が強かったから。逆に言ったら俺はバタードッグ(SUPER BUTTER DOG)のほうがなんつうかその……悪のニオイしかしない。

永積 なんで悪なの!(笑)

TOSHI-LOW ファンクとかああいう音楽でジャムってるやつって悪の感じしかしないじゃん。

永積 どういうこと?(笑)

TOSHI-LOW クスリ、クスリ。もう、大麻を超えて阿片とか(笑)。

左からTOSHI-LOW、永積崇。

左からTOSHI-LOW、永積崇。

──ひどい偏見ですね(笑)。

TOSHI-LOW パーマかけてるやつはたいだい阿片やってると俺は思っていて。

永積 それもどういうことよ(笑)。

TOSHI-LOW レゲエは大麻だけど、阿片くらいやってないとファンクなんかやんねーよ、こえーわって(笑)。

永積 (笑)。

TOSHI-LOW またほら、この人(永積)が眼鏡を外したときの目つき、すごいでしょ?

永積 はっはっは! さすが、よくわかってる(笑)。

TOSHI-LOW びっくりすんのよ。遠くから見たらかわいい動物のように見えるけど、近付いてガッと眼鏡を外されたときにびっくりする。その……なんか「柔らかくて優しい永積崇」だけじゃないというのが、目つきの奥でわかるんだよね。

永積 ふふふ。

TOSHI-LOW だからって別に俺みたいな暴力系じゃない。奥に深い……それが闇なのかなんなのかわからないけど、そういうのがないと、やっぱりアーティストは面白くないと思うからね。それが渦巻いているのが、崇は眼鏡を外した目にすごく出てる。

──永積さんの優しく柔和な表情の奥に、そういう禍々しさがあると。

永積 そう言われると「ドキッ!」とする。なんか鍼灸みたいにビッ!と刺さって、「イテテテテ! バレてる!」ってなるんだけど、そこが柔らかくなっていくっていうか。刺されるんだけど、なんかこう解放されますね。そういうふうに言われると。

──なるほど。

永積 実際そうなんですよね。ハナレグミをやっていると「癒される」と言われることが多いんだけど、僕としてはそういうつもりじゃまったくない(笑)。もちろん聴き手がどう受け取るかを否定するつもりはないんですけど、そうじゃないところが自分でも出ているなという気はします。