生き切りたいと死に切りたいは一緒

──「天馬空を行く」ってすごく象徴的な言葉だから、今後の方向性が見えているのかと思いました。　

俺は自分で歌詞を書いてあとで気付くことのほうが圧倒的に多いから。実はタイトルは一番最後に出てきて。「空を行け」って言いたいんだけど全然違うなあって思ったときに、その言葉に出会ってパズルがパチンってはまって、バババババって全部整った。だから、「天馬空を行く」っていう言葉を知って書いた歌詞じゃないのね。

──天馬が空を駆けるように、着想などが自由なさまを示す言葉じゃないですか。生き方の指針にしたい言葉というか。

自由な生き方を求めていいのに、誰もが自分たちで勝手にそれをセーブしてしまって、社会全体もなんとなくそうなっているわけじゃない。でも、本当は自由でいいわけで。自由を求めるために自分が何をするかが大事だからさ。もしかしたら、俺がバンドを始めた原点の思いに近いのかもしれない。なんで表現を選ばなきゃいけなかったのか、っていう原点に近いというか。

──社会に対する考えも込められているんですね。

すべて呼応してしまうから。考えているっていうか……感じているんじゃないかな。感じていることしか出せないっていうか。考えてあざとくしたくないっていうのもあって。考え抜いて、こうなんですって言うんじゃなく、今、なんかこうなんだよね、なんでこんななんだろうっていうほうがリアリティがあると思う。

──それが表現の原点なんですかね？

わかんない、頭がぼやっとしてるから、それすらわからない。

──20周年を終えて、原点に向かったというか。

バンドの原点は20周年を終えて見えてきたけれど、自分の原点ってなんだろうって考えると、もっとさかのぼると思うわけよ。理由がわからないんだけれど、最近子供の頃のことをすごく思い出すの。他愛もないことだよ、小学校の頃あんなことがあったなとか。

──さっきの「人生の折り返し地点を迎えたと感じる」という話と、なんとなくつながってくるような気がしますけれど。

ね、なんかあるんだろうね。

──何が起こってるんでしょうね。

普通は、そういうのを「こうです」って答えたものが文字になるじゃん。それを2人で、「なんだろうね」って言ってたらつまんないでしょ（笑）。

──そうですよね（笑）。

でもしょうがないんだよね。ぼやっとしているときはあるんだもん。無理矢理言葉を捻りだすことはできるよ。でも、それは嘘だから。「あえて言うなら」みたいなものはいらない。こういうの、俺にとっては珍しいんだよ。本当は言いたがりだし。だから次のアルバムのとき「あのときに言っていたことはこうだったんですね」ってなればいいなあ。もしくは謎が解けないままか。

──いや、今までだって見えてきたんだから、次も何か見えるはずですよ。

「A FORLORN HOPE」の頃みたいに、自分が死ぬ・生きるっていうところで迷っていたら、楽だったと思うんだ。頭が混沌としていても、カッコつけて言語化していたから。でも、今、死ぬことなく、こうして生きていて。そのときに思っていたことは嘘とは思わないけれど、答えの出ないところはいまだにあるから、20年経って解決したとは、すごく嘘臭くて言えないっていうか。ただ、昔はそうやってカリカリしたときには人に攻撃的に出ていたのが、今はぼやーっとしているっていう。それは人を傷付けないためなのか、自分を傷付けないためなのか、わからないけれど。

──年齢なんですかね？

わかんない。更年期かもしれないね（笑）。

──思いもよらない言葉が（笑）。でもさっきの話じゃないですけど、そうやって変化して死に近付くことを実感すると、たいていそれを見据えられずに抗いたくなる人が多いと思いますよ。

でも、100パー死ぬんだよ。無理なことをしててもしょうがないじゃん。だから、生き切りたいと死に切りたいは一緒でしょ。死が明日でもしょうがないと思って生きているから。なのにまた「次は40周年ですか!?」なんて言われたら、ぞーっとするよ。死ねない、って。

──確かに、それって苦しいですね。

未来のことを考えるのは一番苦痛で。でも、どんなことがあっても生き抜こうと思っているよ。それはなぜかというと、さっき言ったように死に切るためだよ、っていう理念は変わっていなくて。

──そういう話って、お子さんにもします？

俺はしてんじゃないかなあ。「人生は有限だよ、だけど無限だよ。可能性が有限なわけじゃないよ。自分次第で無限大になるんだよ」って。明日死んでしまうことをニヒリズムに捉えられれば、もう何もやる気が起きなくなると思うけれど、明日死なないかもしれないときに、いろんなものは続くから。それも本当じゃん。だから有限だし無限だ……っていう感覚って、ない人にはないと思うんだよ。俺はあるから。

──それを知っていたほうが、逆に面白く生きられますよね。

俺も豊かになれると思うよ、そっちのほうが。半分しか知らないより、両方知ったうえで半分を選んだほうが面白いと思う。そりゃわかってるさ、損とか得とかいうものを第一にした人生のほうが楽だと思っている人もいるのは。だけど、そうじゃないんだよ。