音楽ナタリー Power Push - BRADIO×「Peeping Life」監督 森りょういち
アニメを介して行われた痛快なキャッチボール
「Peeping Life」はセッションと一緒
──BRADIOのメンバーからアニメの制作に関することなど何か聞きたいことはありますか?
大山 「Peeping Life」って、台本がない状態で声を吹き込んでいるんですよね?
森 そうですね。
大山 そのときの空気の作り方とか、作品の世界観の作り方で意識されていることはありますか?
森 先ほど「誰か1人が引っ張っていくわけじゃなくて、全会一致じゃないと話が進まない」とおっしゃりましたが、それって「Peeping Life」の作り方にも当てはまるんです。僕はもともとフリーランスでCGの請け負いの仕事をしていたんですけど、末端の仕事だったから作品のクレジットには名前も載らないし、ただ上の人に言われるまま作っていかなきゃいけない状態がつまんないなと思っていて。自分が監督になって世に何かを出すときは、関わる人みんなが頭を使える場を作りたいなと思って「Peeping Life」は基本的に台本がない中で収録をするようにしています。
真行寺 セリフが用意されていないアニメの収録なんて、聞いたことないですよ。
森 あるわけがないですよね(笑)。でも役者さんや声優さんもその場でストーリーを作りたいって、どこかで思っているはずなんです。だから台本なんていらないからしゃべってもらって、あとは編集で面白くするようにしています。
大山 即興という意味では、音楽のセッションとすごく似てますね。
森 そうだと思います。曲作りと一緒で面白かったら採用、ダメだったら使わない。だから「Peeping Life」の場合は大まかなシチュエーションだけ用意しておいて、とりあえず30分くらい役者さん2人にしゃべってもらう。それで得た素材を僕らが持ち帰って編集して5分くらいに縮めているんです。
大山 へー!
森 バラエティ番組の素材みたいなものですね。僕らは箱を用意するからあとは面白おかしくお願いします!って投げているわけです。で、現場では役者さんに頭を使ってもらって、編集では僕らが頭を使う。キャラクターデザインとか映像に関しても僕は50%くらいしか道筋を示さないんです。そうすることで作品に携わる全員が頭を使うようにならないかなって。
大山 ちなみに声の収録をした段階で、「これじゃどうにもならないよ」みたいなときもあるんですか?
森 もちろんあります。それはもう採用されませんね。
真行寺 あ、じゃあ没もあると。やっぱりセッションと似てますね。
森 奇跡的にもBRADIOさんの作曲作業と「Peeping Life」の作り方や理念が一緒だったのはうれしいですね。まさかここでもキャッチボールしてるなんて(笑)。
真行寺 すごい、心がつながってますね。
ライブを観て監督嫉妬
──今回オープニングテーマを担当してもらって、森監督が考えるBRADIOの魅力ってどんなところだと感じましたか?
森 BRADIOさんの曲は聴いてるだけでテンションが上がりますし、ワクワクするようなすごいエネルギーが曲に込められている。でも本当に彼らの魅力を感じられるのは、ライブだなと思っているんです。今回「HOTELエイリアン」を書いていただく前に一度ライブに誘っていただいたんですけど、会場ではCDなどでは感じられない熱量、情報量が入ってくるんです。お客さんもすごく盛り上がっていてまさにお祭りという感じで。
真行寺 ありがとうございます!
森 もちろん音楽だけでも最高にいいんですけど、MCも面白くて。ライブを観にきてくれた人を楽しませようというエンターテイナーとしての意識が高い。「なんだこの人たちは」ってちょっと嫉妬してたんです。
大山 うれしいですね。
森 それと同時に「これはオープニングで下手なことはできないぞ」と気を引き締めましたね。
チーム力を高めたい
──BRADIOの皆さんは10月にアルバムを携えたツアーがファイナルを迎えました(参照:BRADIO、ゲストあり寸劇ありの熱狂パーティナイトでツアー終幕)。活動のタイミングとしては一区切りつくタイミングだと思うのですが、今後はどういう展開を考えていますか?
真行寺 年明けからは今回の「HOTELエイリアン」のツアーも決まってますし、僕らけっこうなんでもやっちゃうタイプのバンドなので、いろんな方々と一緒になって活動を盛り上げられたらなと思っているんです。今回の「Peeping Life」のチームとも何かやっていきたいですし。いろんな方をひっくるめての“チーム力”をもっと高めていきたいですね。
──バンドのリーダーである酒井さんはどう考えてますか?
酒井 今回「Peeping Life」をアニメのスタッフと一緒にやらせていただいて、けっこう人間臭さというか生々しさみたいなものを出せたかなって僕は思っているんです。BRADIOって「元気」とか「ポジティブ」とかそういう要素が目立っていると思うんですけど、これからはポジティブを栄えさせるための「悲しさ」とかをあえて表現していきたいなと個人的には考えています。これからはいろんなことにチャレンジして大きくなっていきたいですね。
大山 シングルが発売されて「HOTELエイリアン」がどう広がっていくのかは、ホントに楽しみなんですよ。いろんな人に届いてほしいですし。
森 本当に素晴らしい曲をいただいたので、アニメもぜひ引き続き注目してほしいです。
- ニューシングル「HOTELエイリアン」 / 2015年11月11日発売 / HERO MUSIC ENTERTAINMENT
- エイリアン盤 [CD] / 1080円 / HRME-1008
- Peeping Life盤(店鋪限定)[CD+DVD] 1404円 / HRME-1007
CD収録曲
- HOTELエイリアン
- Super Wonderful
- HOTELエイリアン(Hidden AFRO ver.)
- Super Wonderful(Hidden AFRO ver.)
Pepping Life盤 DVD収録内容
- TVアニメ「Peeping Life TV シーズン1 ??」オープニング映像収録
BRADIO(ブラディオ)
真行寺貴秋(Vo)、大山聡一(G)、酒井亮輔(B)、田邊有希(Dr)の4人からなる“日常に彩りを加えるエンターテインメント”をコンセプトに活動するロックバンド。多彩なビートを生み出すリズム隊を軸にしたサウンドや、シャウトやファルセットを使い分ける個性的なボーカルが話題を呼ぶ。2013年10月に1stミニアルバム「DIAMOND POPS」をリリース。2014年には「TREASURE05X」や「イナズマロック フェス」といったライブイベントにも出演した。2015年2月にはアニメ「デス・パレード」のオープニングテーマ「Flyers」を収録したシングルをリリース。同年6月には1stフルアルバム「POWER OF LIFE」を、11月にはアニメ「Peeping Life TV シーズン1 ??」のオープニングテーマとして書き下ろした新曲「HOTELエイリアン」を表題曲に据えたシングルを発表した。
森りょういち(モリリョウイチ)
アニメ監督、CGアニメーション作家。2006年に発表した作品「EACH LIFE」がNHKの番組「NHKデジタル・スタジアム」にてピエール瀧ベストセレクションを受賞し、2007年には同作品がデジタルクリエイターズコンペティションにて優秀賞に選ばれた。2008年に自身の監督作品である「Peeping Life」を発表。アドリブで収録した声優のやり取りに3DCGを組み合わせた同作品は“脱力系”アニメとして話題を呼び、DVDは累計60万本の売り上げを記録するなど大ヒット。2010年には株式会社FORESTHuntingOneを設立し、代表取締役社長を務めている。2015年10月には、日本テレビほかで「Peeping Life TV シーズン1 ??」のオンエアがスタートした。