両極端のものが1つになれた

──森監督から見たBRADIOの第一印象はどうでしたか？

森りょういち　「今こういうバンドいないな」って思いましたね。80年代ディスコとかをベースにしているんだけど打ち込みを使うような奇をてらったやり方ではなく、音楽をストレートに鳴らしてる感じにすごく好感が持てました。

真行寺貴秋（Vo）　あざーす！

森　「Peeping Life」は“日常モノ”のアニメになるんですけど、テレビで放送するに当たってオープニングをどうしようか、けっこう困ってたんですよ。今まで作ってたDVDにはオープニングがなかったのもあって。でも今回「HOTELエイリアン」をいただいたとき、すぐに映像が見えてきたんです。ご一緒できて本当によかった。

大山聡一（G）　あざーす！ これ、うれしいですね。

──BRADIOの皆さんは、もともと「Peeping Life」をご存知でしたか？

真行寺　僕の周りにもファンがいましたし、ヴィレヴァン（ヴィレッジヴァンガード）で「Peeping Life」が紹介されていると、必ず立ち止まって観ちゃうんですよ。

田邊有希（Dr）　僕も知っていた作品だったので、お話をいただいたときは驚きました。その分、逆にどういう曲を作ったらいいかってすごく迷いましたね。

森　あざーす！

BRADIO一同　（笑）。

大山　僕はお話をいただいたときに初めて知って、DVDを観たら「Peeping Life」ってすごくゆるい内容で。僕らはどっちかっていうと見た目も音楽もバッキバキなバンドだから、その組み合わせってすごく面白いんじゃないかなと思って曲作りを始めました。

酒井亮輔（B）　完成したオープニング映像を観て「音楽と映像がすごくマッチしてる」と言ってもらえることが多いんです。聡一が言った通り両極端なものが掛け合わさったからこそのよさが出せたというか、結果として1つになれたという手応えがありますね。

オープニングだけ無駄だ！

──アニメのオープニングで曲に合わせてキャラクターたちを踊らせたのは監督のアイデアなんですか？

森　そうですね。BRADIOさんの曲を聴かせていただいて「これは派手に踊るべきものだ」とすぐに思ったんです。これまで「Peeping Life」ではエンディングでキャラクターにゆるく踊らせていたんですよ。でも今回はテレビということもあって、エンディングが「静」だったら、オープニングは「動」。ゴリゴリ動かしてやろうと思って。

真行寺　けっこう激しいダンスだったので、僕らもビックリしました。

森　「Peeping Life」のキャラクターは3DCGで作ってるんですけど、実はデータ上では激しい動きに耐えられるように作り込んでいないんです。でも今回のオープニングは、もうグチャグチャに動かしてます。

BRADIO一同　あははは（笑）。

森　「うわ、オープニングだけ無駄だ！」って思わせたら勝ちだから。そのためにエネルギッシュな音楽が必要だったんで、BRADIOさんに作ってもらった曲はピッタリでした。振り付けはラッキィ池田さんにお願いしたんですけど、もう一発OKな面白いダンスをいただいて。

大山　ラッキィさんが踊っている振り付け動画を拝見して「うわ、すごい踊りが付いた」ってメンバーも喜んでました。

森　かなりクセになる踊りですよね。オープニングムービーがニコニコ動画さんとかで公開されてるんですけど、すごく評判がよくって。ヘタしたら本編より……。

大山　それはない！ それはないですよ！（笑）。

カレーにソース派＝エイリアン

──今回のオープニングテーマのタイトルが「HOTELエイリアン」ですが、そもそも「HOTEL」と「エイリアン」を掛け合わせたこの言葉、どういう意味なんですか？

森　僕もそれを伺ってなかったんですよ。なんとなくフィーリングは感じてましたけど。

大山　そうですよね。タイトルや歌詞を考えるのは貴秋なんですけど、最初は僕も同じ質問をしましたから。

真行寺　この話をするときは必ずカレーの話で例えてるんです。僕、カレーライスに福神漬けを乗せるだけの人なんです。でも友人のAくんはカレーに醤油をかける。それでBくんはカレーにソースをかけて食べる。僕からしたらAくんもBくんも“未知との遭遇”、つまりエイリアンなんです。

森　なるほど。確かにエイリアンと言えるかもしれませんね。

真行寺　でも逆に、醤油をかける人からしたら福神漬けだけの僕とソースをかけるBくんのほうがエイリアンだと思うんですよね。「Peeping Life」も「アトムが裏ではこんな話してるんじゃないか」っていうような、僕らの知らない世界を描いた作品だから今回は「エイリアン」という言葉を使うことにしたんです。「HOTEL」はあとから付けたんですけど、「Peeping Life」ってホテルの一室を覗いてるようなシチュエーションだと思って。「自分たちにとって未知な存在であるエイリアンが、本当はたくさんいるんだよ」というのをたくさんの部屋が並んでいるホテルというもので表現できたらなという結果が「HOTELエイリアン」なんです。

森　まさにアニメで描きたかったことを曲にしていただいたと思っています。「Peeping Life」の1つの理念として「自分を否定して欲しくない」というものがあるんですよ。みんな違ってみんないい、自分が悪くて他人がいいわけでもなく、いろんな人がいるんだってことがまさに人間で、それを全肯定したい。「Peeping Life」って観たあとに嫌な気持ちにならなくて、観たあとに不思議とモヤモヤが晴れてると思うんです。いろんな価値観とか生き方、カルチャーを1つのパッケージにした作品だから、ホテルという場所を比喩として使うのはまさにその通りだなと思いました。カッコよく言うと、BRADIOさんとはいいキャッチボールができました。

真行寺　監督からのボール、投げ返させていただきました！

──アニメのオープニングでは流れませんが「HOTELエイリアン」のCメロでは「不器用でいいんだよ」という歌詞も登場します。まさに監督が話していた「みんないい」の精神を歌詞に込めているわけですよね。

真行寺　僕がこの曲で一番言いたかったことがCメロのメッセージだったんです。ホントに僕からしたら海外の人はある意味エイリアンだし、逆に向こうからしたら僕がエイリアンだろうから。「もうみんなエイリアンでいいじゃん！」っていう思いが曲のテーマだったので、そこが作品とリンクしていたのはうれしいですね。まさにキャッチボールです。