音楽ナタリー PowerPush - BRADIO×「デス・パレード」監督 立川譲

シリアス×パーティチューンの不思議な関係

どうにもならないネタから

立川 作曲はバンドでやっているんですか?

田邊有希(Dr) そうですね。みんなでスタジオに入って。

立川 「Flyers」を作るときはどんな感じでしたか?

真行寺 「Flyers」って実は僕らの中では、ちょっと今までにないテイストの曲で……。

大山 そうなんです。もともとの曲ネタはスタジオに入ってるときに、「もう時間がないから、最後一発なんか出そうぜ」って言って出した、30秒から1分くらいの音だったんです。最初は「どうにもなんないね、コレ」みたいな話になってたんですよ。それを今の踊れる曲にしていくのはけっこう難しかったですね。

立川 その音って今の曲でいうサビの部分ですか?

大山 このとき出てきたのはオープニングの「ダーン、ダーン」みたいなところですね。

酒井亮輔(B)

酒井亮輔(B) 僕らも音を出してみたもののどうしていいかわからず、ずっとその部分をループさせていたんです(笑)。

大山 でもその後、別のネタと一緒にやったらハマるんじゃないかなってことになって。もともとサビのメロディは全然別のところでできたもので。もしかしたらハマるんじゃないかと思って、2つをマッシュアップしたら今の感じになったんですよ。

──「今までにないテイスト」というのはどういう部分だったんですか?

大山 これまでの曲ってカッティングを多用していたというか、細かく動くフレーズが多かったんです。でも「Flyers」の「バーン!」って鳴らして盛り上げる要素とか、開放感のあるコードの感じとかはこの曲ならではの部分ですね。

立川 ライブでも盛り上がりそうですよね。

真行寺 去年のツアーファイナル(参照:BRADIO、渋谷“FPP”踊らせた「大人達よ、遊べ」ツアーファイナル)でやったんですけど、初披露なのにオーディエンスがすごく盛り上がって(笑)。いい手応えでした。

最初の「ダーン」でイメージが出てきた

大山 アニメのオープニング映像のアイデアってどうやって作っていくんですか?

立川 まずテーマ曲をいただいたら、ずーっと聴くんですよ。そうすると動きのイメージが頭に浮かんでくるんで、順番関係なくそれを描き留めていって。それを最後につないでいくって感じですね。

──ダンスのイメージはすぐに出てきたんですか?

立川 曲の最初の「ダーン」って音を聴いた時点で、デキムが指を上げて立っているポーズのイメージは出てきましたね。あとは曲のテンションに合わせたって感じです。今回いただいた曲って、新しさももちろんあるんですけど、ちょっと昔風なところもあるんじゃないかなって思って。それで1980年代とか90年代前半くらいの映画を観ながら、「サタデー・ナイト・フィーバー」とか「パルプ・フィクション」に出てくるダンスの動きも入れて、最新のダンスではないちょっと古いテイストを映像でも出しています。

真行寺 最初のオープニングのポーズ(人差し指を立てる)は、もうライブでパクろうかなって思ってます。

一同 (笑)。

真行寺 絶対やります(笑)。それとファンの方から「オープニングの感じがBRADIOのPVの雰囲気に近いね」ってけっこう言われるんですよ。

立川 僕も思いました。実はオープニングの映像を作り終わったあとに、BRADIOさんの「オトナHIT PARADE」のビデオクリップを観たんですけど、色味とか雰囲気がすごく近かったんですよね。PVではバーで女をはべらしてましたけど(笑)。

田邊有希(Dr)

田邊 むしろ僕は、オープニング映像の雰囲気をPVに寄せてもらったのかなって思ったくらいなんですよ。「デス・パレード」って文字が映し出されるところも、PVで似たような見せ方をしたことがあって。寄せてもらっちゃって光栄だなって思ってたんです。

立川 そう思いますよね。でも実は偶然なんです。僕もあとで皆さんのPVを観て、すごく近いものを持ってたんだなあって気付きました。

田邊 偶然でも、それはそれでうれしいです(笑)。

2回目にいろんな発見がある

大山 アニメのストーリーとか作中に出てくるゲームの展開って、どういうふうに考えているんですか?

立川 まず一番始めに決めるのは核となる部分ですね。観てない人にはネタバレになってしまいますけど、アニメの1話と2話はセットになっていて、具体的に言うとこの2つの話は真智子っていう登場人物が“死”という恐怖を乗り越えて旦那さんを救おうとする話が核になっているんです。この部分が決まったら、あとはミスリードを誘ったり、どうすれば視聴者が最後にどんでん返しで驚いてくれるかな、面白く観てくれるかなっていうところを考えて、細部の描写をバランスよく配置していく感じですね。

大山 先行上映会のときに1話と2話を観させていただいて。今回テレビの初回放送のときに改めて1話を観たんですけど、最初のときは気付かなかったキャラクターの表情とかがよくわかっていろんな発見がありました。

立川 あとから観返して「だからこのときこうだったのか」ってなるように、表情とかには気を遣ってますね。あとはあえて見せないようにしている部分もあって、裏の裏まで読み取ってもらえるようにしています。

大山 話の核になりそうなネタってどうやって見つけるんですか?

立川譲

立川 バンドと一緒だと思いますよ。いつか使おうと思っていたネタみたいなものを頭の中にストックしてるんです。「デス・ビリヤード」を作っているときに、「ダーツの話もできるな」っていうのが頭にあったので、それを1話に持ってきてみたり。「あのときのネタが使えるかも」っていうのはよくありますね。

──バンドの皆さんは、アニメの本編を観てどんな感想を持ちましたか?

大山 初めて試写会で1話を観させていただいたとき僕が思ったのは、もしこういう立場に置かれたらどうするかなあってことで。アニメの登場人物のように追い込まれてしまったら自分はどうなるのかって考えさせられました。すごく面白かったです。

真行寺 僕はアニメの“あとを引く感じ”がすごくいいなあと思って。ちょっと暗いトーンなんですけど、作品に入り込んで夢中になって観ました。観終わっても自分と登場人物の境遇を照らし合わせて、さらに考え込む感じ。小説とかドラマでも、そういう“あとを引く”作品に惹かれるんですよね。

立川 ありがとうございます。アニメって今世の中にすごくたくさんあって、1週間に何十本も放送されているんですよ。だから埋もれないようにというか、心に楔を打つ作品を作ろうと心がけていて。それはハラハラドキドキかもしれないし、モヤモヤする感じとか、「うーん」っていうものでもアリなんじゃないかと思ってるんです。いろんな感情を呼び起こさせるような作品になればいいかと。

──確かに「デス・パレード」は、ハラハラする展開もありますし、最後まで答えをハッキリ提示せず、視聴者に考えさせる終わり方ですね。

立川 僕は個人的に100%答えが用意されている作品ってあまり好きじゃなくて。誰が観ても同じところにたどり着くような演出とか、脚本のものですね。例えば、人と会話してても相手の心の内はわからないじゃないですか。なので制作者の答えはこうですって提示するより、考察の余地があるというか、余韻が残るほうがいいかなって。まあ賛否両論はあると思うんですけど。

大山 これから先って「デス・パレード」はどんなふうになっていくんですか?

立川譲監督を囲むBRADIO。

立川 最初のほうはゲームをする側の人間にスポットが当たってるんですけど、4話とか5話が過ぎたあたりから、舞台となるバーの世界のことが徐々に明らかになってくるんですよ。そういう物語の背景とかも楽しみにしていただければと思います。ちなみに毎回重い話ばかりではなく、スカッとした話もあったりするので(笑)。1話と2話はチャレンジのつもりで、視聴者に投げかけた感じの作風にしてみたんです。

真行寺 オープニングの映像には僕らがまだ知らないキャラクターがいっぱい出てきてるから、気になってしょうがないんです。

立川 途中にかなりシビアな話も入ってくるんですけど、最後まで観てもらいたいですね。

ニューシングル「Flyers」 / 2015年2月25日発売 / 1080円 / HERO MUSIC ENTERTAINMENT / HRME-1003
ニューシングル「Flyers」
収録曲
  1. Flyers
  2. 感情リテラシー
  3. Flyers(Hidden AFRO ver.)
  4. 感情リテラシー(Hidden AFRO ver.)
TVアニメ「デス・パレード」日本テレビほかにて毎週金曜日25時58分~放送中
TVアニメ「デス・パレード」

死者たちが招き入れられる不思議なバー「クイーンデキム」に現れる人間は、白髪のバーテンダー・デキムによって自らの死に関する記憶をなくしたまま“命懸けのゲーム”に参加させられる。ゲームを通して次第に極限状態に追い込まれ、その本性を露わにする参加者たち。やがてデキムは、自らが死者を天国か地獄に振り分けるための“裁定者”であることを彼らに明かす。

BRADIO「FUNKY PARTY ONE MAN TOUR~ようこそどうぞはじめまして~」
2015年3月27日(金)愛知県 ell.SIZE
2015年4月4日(土)大阪府 ROCKTOWN
2015年4月8日(水)東京都 TSUTAYA O-WEST
BRADIO(ブラディオ)

BRADIO

真行寺貴秋(Vo)、大山聡一(G)、酒井亮輔(B)、田邊有希(Dr)の4人からなる“日常に彩りを加えるエンターテインメント”をコンセプトに活動するロックバンド。多彩なビートを生み出すリズム隊を軸にサウンドや、シャウトやファルセットを使い分ける個性的なボーカルが話題を呼ぶ。2013年10月に1stミニアルバム「DIAMOND POPS」をリリース。2014年には「TREASURE05X」や「イナズマロック フェス」といったライブイベントにも出演したほか、1stシングル「オトナHIT PARADE」を発表。2015年1月から放送がスタートしたアニメ「デス・パレード」に新曲「Flyers」を提供し、同曲を表題曲としたシングルを2月25日にリリースする。

立川譲(タチカワユズル)

アニメ監督、演出家。「BLEACH」「キルラキル」「進撃の巨人」など人気のアニメ作品の絵コンテや演出を担当している。2013年には自身が原作、脚本、監督を手がけたアニメ「デス・ビリヤード」が全国の映画館などで公開された。2014年に放送されたアニメ「残響のテロル」では助監督を務めている。2015年1月には自身が原作、監督、シリーズ構成を担当するアニメ「デス・パレード」の放送がスタートした。