ブギ連|内田勘太郎×甲本ヒロト、道しるべのない2人の共通言語“ブルース”

ブルースは底辺が広いぶん、頂点がすごい

──内田さんが過去にソロで発表したもう1つのボーナストラック「オイラ悶絶」以外は新曲ですが、全部セッションしながら制作したんですか?

左から内田勘太郎(G)、甲本ヒロト(Vo, Harmonica)。

甲本 「バットマン・ブルース」なんか1発だよ。レコーディングから帰るときにアイデアを話し合って、「明日やりましょうね」と言ったら「明日になったら忘れてるよ」って急に弾き始めたんです。で、急いでテープを回しました。その1回しか弾いてくれないし(笑)。

──本当にその場その場でのレコーディングだったんですね。アルバムには「軽はずみの恋」のようなスリーコードじゃないバラード曲もあれば、タイトル曲「ブギ連」のようなジョン・リー・フッカーを彷彿とさせるブギもあって、さまざまな形のブルースが収録されていますが、元ネタはお互いに出し合って?

内田 そうですね。リトル・ウォルターの「Boom Boom(Out Go The Lights)」みたいにポップな感じの曲をやろうと提案したら、次の日に彼が持ってきたのが「バットマン・ブルース」で。

甲本 ちょっとマイナー調にしてみたんですよ。ブリッジの音だけ先にいただいて。

内田 本当に多くを語らなくても、ブルースに関してはなんでもわかっちゃう感じ。合わせてくれるというより、知ってるんだよね。世の中にブルースの曲はいっぱいあるんですけど、大概はゴミのようなもので(笑)。でも底辺が広いから、三角形の頂点にあるものがすごくて、強烈なやつがときどきあるんですよ。凡百のブルースではつまらないし、我々もそこを目指さないといけないと思っていて。ブルースの話を語らずともわかってくれる人は、有山じゅんじくんと濱口祐自と、ヒロトくらいだね。演奏を始めたらすべて理解してくれる。

「ブギ連」の由来

──作詞についてはどのように進めたんですか?

内田 僕はわりとすでにあるものを提出したんですけど、ヒロトさんは「こんな感じで」と話したら、すぐ次の日に作ってきたよね。意外と勤勉な(笑)。

甲本 ワードだけいくつかヒントとしてもらって、そこから内容を全部創作して。「ナマズ気取り」も「ナマズ」というワードから連想する歌詞を書いていきました。

内田 へんてこで素晴らしい詞を書くよね。

──「ヘビが中まで」も同じように?

甲本 「ヘビ」というワードだけもらって、その2文字から湧き上がるものを自由に作っていきました。

──ちなみに「ブギ連」というユニット名の由来はなんなんですか?

甲本 まずブギをやろうと話したんです。音楽なジャンルでいう本当のブギではなくて、ジョン・リーのスタイルのようなブルースの中でのブギ。

内田 ジョン・リーのブギには独特の暗さがありますよね。

甲本 ジョン・リーしかやらないあの音楽のことを、僕らは共有言語としてブギと言うわけですよ。で、ジョン・リーと言ったら最初にピンと来る曲が「Boogie Chillen」ですよね。「『Boogie Chillen』を日本語にしたらどうなんだろう……ブギ野郎でもないし」と考え始め「ブギ連」って。ブギをやってるチンピラ、連中みたいなことだと思うんですけど、「チ」だけ取って「ブギ連」にしたらいいんじゃないかなと思い付いたんです。で、曲を作っているうちに我々のチーム名が必要になってきたので、そのままでいいかなと。

──では、曲名が先だったんですね。

内田 そうです。僕はヒロトさんの言うがままです。

甲本 何言ってんすか、もう! 怖い怖い(笑)。

瞬間的に枝分かれしていく道を選んでいく

──7月4日には東京・渋谷CLUB QUATTROにて、ブギ連のワンマンライブ「ブギる心」が開催されます。

左から内田勘太郎(G)、甲本ヒロト(Vo, Harmonica)。

甲本 「ブギる心」っていいタイトルだと思いませんか?

内田 もう、最高です。

──アルバムの曲を存分に聴けるライブになるんでしょうか。

内田 そうでしょうね。それ以外にもやらないとちょっと時間が持たないだろうから、いろいろ演奏すると思いますけど。まだ考えてないですが、そのうちアイデアが自然と出てくるんじゃないかな。ヒロトさんはいつも大きな会場でライブをやっていて、そのときは流れとかいろいろ考えていると思うんですけど、それと同じようにやるのか、俺を放し飼いにして自由にやるのか。

甲本 やってみなきゃわかんないすね。

内田 なんとなくは見えてるんだけど、道標のない道が好きだから。ブルースというテーマはあるけど、瞬間的に枝分かれしていく道を選んでいく。それができるといいと思いますね。

甲本 客席からろくろが見えると面白いですね。2人で泥を練ってる姿が。

内田 本当に泥練る?(笑)

甲本 嫌だよ(笑)。汚れちゃうもん。

──ブギ連としての今後の活動の予定については、どのように考えているんでしょうか?

内田 ザ・クロマニヨンズの邪魔をしないように(笑)。

甲本 僕にも許容量があって、たくさんのことができる人じゃないし、定期的にどれだけのことができるかわからないので、今のうちにいっぱい楽しんでほしいです。

──一発限りの企画ではなく、今後も続けていただけるとうれしいです。

甲本 できるときがあればもちろん。今回やってみて楽しかったので。

イベント情報

ブギ連「ブギる心」
  • 2019年7月4日(木)東京都 渋谷CLUB QUATTRO