音楽ナタリー PowerPush - ぼくのりりっくのぼうよみ
“シーン揺るがす驚愕の17歳”の素顔
「閃光ライオット」はなんとなく言われるがままに
──今回、アルバム「hollow world」でメジャーデビューとなりますが、そもそも「メジャーデビューしたい!」という気持ちはあったんですか?
いや、全然なかったです。「大人の人がいっぱい来た……あれ?」みたいな。「アルバムを作ってメジャーデビューします」「え? 誰のですか?……僕の?」くらいの感じで。
──そのくらいのノリだったんですね。2014年の「閃光ライオット」に出場した時点で一部ではすでに注目を集めていましたが、じゃああれも何か長期的な展望があって出たわけでもなく。
そうですね、なんとなく言われるがままに。(「閃光ライオット」は)よく「バンドの甲子園」みたいなことを言われるじゃないですか。でも自分の周りの友達には音楽に興味ある人がいなくて、誰も「閃光ライオット」のことを知らなかったんですよね。だからどれだけ大ごとなのかよくわかってなくて。正直今でもよくわかってないんですけど。
──なるほど(笑)。音楽自体は昔から好きだったんですか?
小さい頃から好きでした。音楽の趣味に関しては、母親の影響が大きいかもしれないです。例えばEGO-WRAPPIN'やMONDO GROSSOは、母が好きだったこともあって好きになりました。ただ、「好き」と言っても「アルバム全部聴きました!」みたいなことではなくて、EGO-WRAPPIN'なら「サイコアナルシス」が好き、MONDO GROSSOならbirdとやっている「LIFE」が好き、でもその曲以外はそこまで詳しくありません、という感じです。
──初めて買ったCDって覚えていますか?
えーっと、なんだっけな……。あ、ポケモンの映画、「ラティオスとラティアス」(「劇場版ポケットモンスター 水の都の護神 ラティアスとラティオス」)のエンディングテーマですね(coba & 宮沢和史「ひとりぼっちじゃない」)。
──普段はどういうツールで音楽を聴いたり情報を得たりしているんですか?
基本はネットですね。そこ以外にインプットとして使っているものあるかな……逆に何かあります?
──例えばCDショップに行くとか。
ああ、タワレコにはちょくちょく行きますけど、その場で気になるものがあっても家に帰ると忘れちゃってることが多いんで(笑)。インプットにはなってないかな。
──最近だとサブスクリプションサービス、例えばApple MusicとかLINE MUSICとかそういうのもありますが。
僕、超やってます! 最高ですよね! レコード屋さんのサイトでいろんなアルバムがオススメされていて、そのサイトでは「在庫切れ」となっているのに、Apple Musicで検索すると聴けちゃうっていう。「神……」って思って使っています(笑)。海外のジャズを聴くことが多いです。
自分は「ラップみたいなやつをやってる人」
──リスナーとしてはそんな背景がありつつ、プレイヤーとしては何か経験があるのでしょうか。例えばピアノを習っていたとか……。
楽器経験はゼロですね。小学校の授業のときのリコーダーすらちゃんとできなかったくらいなので。最初に何か音楽をやってみようというときにバンドを組むとかではなくて「歌ってみた」をやったんですけど、それを選んだ理由も「楽器ができなかったから」というのが大きいです。
──歌とラップを行き来するような現在のスタイルは、どのようにして生まれたのでしょうか。
そもそも自分がラップをするようになったのは、インターネット上の知り合いに「ラップしてみたら?」と言われてやってみたらなんとなくできそうだったから、くらいのもので。当時は自分の中に「ヒップホップとはこういうものだ」みたいな知識がまったくなかったんですよね。今まで歌モノを聴いてきた人がラップをしたらこうなった、っていうだけで「ほかの人と違うことをやろう」みたいな意識や狙いがあるわけではないんです。
──いわゆる“ラッパー”の人たちのスタイルに比べると、すごくソフトでナチュラルな印象を受けます。
たぶんそれは、「ラップするためにラップする」というラッパーの人たちに対して、自分は「曲として成立させるためだけにラップをしている」からだと思います。目的が違うというか。
──ご自身では「ラッパーでありたい」みたいな気持ちはないんですね。
ないです。
──自分を紹介するときにはどういう言葉で説明しますか。ラッパーなのか、シンガーなのか……。
ラップ……みたいなやつをやってる人。
──(笑)。
カテゴリーはどうでもいいんで。聴いた音がすべてだと思うし、これはロックだ、ロックじゃないとか、これはヒップホップだ、ヒップホップじゃないとか、そういうのはあんまり興味がないです。もちろん音楽の聴き方は人それぞれだとは思いますけど。
──ご自身についてもそういうことを言われたりしますか? 「こんなのヒップホップじゃない」みたいな。
そういうことより、ほかの人の名前を出されることのほうが多いですかね。「宇多田ヒカルに次ぐなんとかだ」とか……そういう言い方がわかりやすいというのは理解しているんで特に何も感じないですけど、また何か言ってんな……みたいには思っちゃいます(笑)。
──宇多田ヒカル、DAOKO、米津玄師……。
そこらへんです、まさに!(笑) 別にいいんですけどね。伝達する方法として適切ならやってくださいって感じです。
──……勉強になります(笑)。
いやいや、そんな(笑)。
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収録曲
- Black Bird
- パッチワーク
- A prisoner in the glasses
- Collapse
- CITI
- sub/objective
- Venus
- Pierrot
- Sunrise (re-build)
ぼくのりりっくのぼうよみ
神奈川県横浜市在住の男性アーティスト。活動初期は「ぼくのりりっくのぼうよみ」「紫外線」名義で動画サイトにオリジナル曲や“歌ってみた”を投稿。トラックメーカーが作った音源にリリックとメロディを乗せていくスタイルをベースとする。高校2年生だった2014年、コンテスト「閃光ライオット2014」に応募し、ファイナリストに選ばれ一躍脚光を浴びる。同年7月には電波少女のハシシが主催するidler records から4曲入り音源「Parrot' s Paranoia」を発表。2015年12月にアルバム「hollow world」でビクターエンタテインメント内のレーベル・CONNECTONEより17歳でメジャーデビューする。