2019年に始動し、広島を拠点に活動を重ねてきたbokula.は、バンド史上最大規模のツアーの真っ只中。10月にリリースしたEP「Phantom youth」を携えて全国を回っている。
ツアーではゲストを迎えた各地での対バン公演を経て、終盤からはワンマン公演を行っているが、そのワンマン編の初日である12月4日の渋谷CLUB QUATTRO公演中に突然メジャーデビューを発表した。そして直後の12月5日0時にはメジャーデビュー曲「最愛のゆくえ.」をトイズファクトリーから配信。すさまじいスピードでバンドは急展開を迎えている。
新しい環境へと飛び込むメンバーたちは、今どのような心境なのだろうか? 新曲の話はもちろん、これまでの軌跡、見据えている未来についても語ってもらった。なお特集の最後にはbokula.のメジャーデビューを記念して、内山ショート(シンガーズハイ)、かやゆー(ヤングスキニー)、こやまたくや(ヤバイTシャツ屋さん)、優斗(Blue Mash)、宮崎一晴(クジラ夜の街)、りょたち(ねぐせ。)のお祝いメッセージを掲載する。
取材・文 / 田中大撮影 / 斎藤大嗣
受験の結果がダメだったら、バンドに入ってほしい
──bokula.はえいさんが大学の友達を誘って始めたバンドが母体になっているそうですね。
えい(G, Vo) はい。KANA-BOONが好きなので、結成当時はポップでキャッチーな音楽がやりたいと思っていたのを覚えています。
──結成後、メンバーが入れ替わったりもしていますが、どのように声をかけて今の体制になったんでしょうか?
えい 高校生のときに地元でバンドコンテストがあって。そこで僕とは別のバンドでギターを弾いていたのが、かじくんです。彼は「高校を卒業したら岡山の大学に行く」と言っていたんですが、「受験の結果がダメだったら、バンドに入ってギター弾いて」と誘いました。
かじ(G) 結局受験はダメでした(笑)。内心、僕もバンドをやりたいなあと思ってたので「こっちに振り切っていける!」って、ちょっとうれしかったです。彼のバンドの曲が好きだったので。
えい 周りに熱量を持ってバンドをやってくれる人がいなかったので、そういう意味でもかじくんを誘ってよかったなと思ってます。僕はX JAPANのHIDEさんが好きで、コピーもめっちゃしていて。ボーカルではなくギタリストとしてやりたい気持ちもあったんです。僕はニュアンスと表現力を大事にして弾くタイプですけど、かじくんは精密なフレーズを弾くタイプだと思います。
かじ 照れちゃいますねえ(笑)。
えい これまであんまり内側に踏み込むような会話をしてこなかったよね(笑)。
──さとぴーさんは、えいさんと同じアルバイト先で働いていたそうですね。
さとぴー(B) はい。焼肉屋で一緒でした。
えい 僕はさとぴーがギターを弾いていたバンドでサポートとしてベースを弾いていたんです。そのあとに焼肉屋のバイトを紹介してもらって一緒に働くようになって。僕のバンドのベースが抜けたタイミングで彼をbokula.に誘いました。
さとぴー bokula.に入ることになって、僕はそこでギタリストからベーシストに転向したんです。
──加入前のさとぴーさんから見たえいさんの印象は?
さとぴー 尖った雰囲気のある人でしたね。彼のバンドに誘われたのは大学3年生の夏の終わりくらいの、就活が始まる時期でした。その頃、僕が当時やっていたバンドも終わって、「これからどうしようか」と考えていたところで誘ってもらったんです。
ふじいしゅんすけ(Dr) 僕はえいと3つ歳が離れていて。えいが尖ってたという話が出ましたけど、彼は同世代の友達が全然いなかったんですよ。仲がいいのは年上ばかりでしたね。先輩の立場からすると「どうやったらいいんですか?」とか聞いてくる彼はかわいかったです。でも、僕は彼を後輩としてはあまり見ていなくて、プレイヤーとして「いいな」と思っていました。当時から彼はバンド活動に対する意識が高かったんです。
3年経って、ようやくいいバランスでできるようになった
──ただなんとなくやるのではなく、「音楽の道で生きていく」という気持ちがえいさんの中で早い段階からあったんでしょうか?
えい そうですね。中2のときにバンドの音楽を聴くようになって、「自分もこの道に進もう」と思ったので。
──学生バンドは趣味としてのんびりやる人と、真剣に追求したい人の間に溝が生まれがちという話をよく聞きますが、そういった周りとのギャップはありましたか?
かじ はい。自分の熱意が周りからしたら「痛いやつ」みたいな印象だったみたいで。当時は、「もしかしたら自分が間違ってるのかな?」と思うくらいでした。
──2020年に今の4人が集まってようやくメンバーの足並みがそろうバンドになった?
えい どうなんですかね? しゅんすけはこだわりが強いので、僕とぶつかることがよくありました。だから不安要素はありましたね。「うわあ、やっていけねえ。もっと自分はこうしたいのに」と思ったり。
ふじい 毎回のツアーでぶつかってたよな?
えい うん。でもぶつかったのは、ライブのスタンスに関してです。楽曲に関しての信頼はある程度あったと思うから。ライブでの発言とかで揉めていたんです。
──「ライブのMCでそういうことは言わないほうがいいよ」みたいな?
えい そういう感じでした。
ふじい 僕の考え方は、変な言い方かもしれないですけど、インディーズ寄りなんです。インディーズで学んできた部分をなくしてはいけないと思って意見を言って、その結果ぶつかっていた感じですね。
えい お互いの意見を擦り合わせていった結果、3年経って、ようやくいいバランスでできるようになりましたね。メンバーの意見に対して僕が「それはないでしょ」と思いながらも半信半疑でやってみて、結果よかったこともあったので。だから全部否定するところから入らず、いったん受け入れてみることは大事だなと思うようになりました。
かじ 僕は2人の両方の意見を聞くんですけど、どっちも間違ったことを言ってるわけじゃないと感じてました。だから両方のいいところを取り入れたいと思いつつ、なかなかまとまらないこともあって。一時はお手挙げでしたけど、最近は僕もさとぴーも2人の間を取り持って、彼らだけの問題にはしないようになったと思います。
知らん間にスケジュールがポコーン!って入ってる
──2019年に始動したbokula.は、コロナ禍と向き合いながら活動を重ねてきたバンドでもありますね。
えい そうですね。結成したのはコロナ禍の前ですけど、音源を作ったり、ちゃんと活動をするようになったのはコロナ禍に入ってすぐの頃でした。でも、コロナ禍に活動が引っ張られるということはなくて、「それならそういう状況に見合ったことをやっていこう」と思っていましたね。ガイドラインを守ったうえで、ライブはやってきましたし。
──bokula.はさまざまな自主企画を行ってきていますが、その内容についてメンバー内で話し合ってるんですか?
ふじい 企画系の話し合いはゼロです(笑)。全部えいの「やりたい!」という思いから始まるので。知らん間にスケジュールがポコーン!って入ってるんですよ。
かじ それを見て「決まったんや?」と。SNSで発表されたのを見て、お客さんと同じタイミングで知ることもある(笑)。
ふじい 「20時に情報解禁!」というのを見て「なんやこれ?」って(笑)。
えい 変な話、メンバーも驚かせたいんです。
ふじい 考えてくれる企画がいつも面白いので、こっちもワクワクしてます。
さとぴー そういえば僕、フェスに出ることをTimeTree(スケジュールアプリ)の通知で知るんですよね。「RUSH BALL」とか、まさにそうでした。
──まさかとは思いますが……メジャーデビューすることは知っていましたよね?
ふじい 実は、それもなんですよ!
かじ 僕、「Phantom youth」のレコーディング中に「最近、やけに知らないおじさんがスタジオに来るなあ」と思っていて。
えい やたら俺と真剣な話をしてるし?
かじ うん。「レコード会社の社長がライブを観に来たぞ」みたいなこともあって。「最近お世話してくれとる新しい人、誰なの?」ってえいに聞いたら、「メジャーデビュー決まったよ」と。
えい お世話してくれる新しい人というのは間違ってないけど(笑)。
──(笑)。バンドやグループが「メジャーデビュー決まりました!」とマネージャーさんからサプライズで知らされて喜ぶ動画を見たことがありますが、ああいう感じではなかったんですね。
えい そうなんです。メジャーデビューの提案をされたのも、僕が事務所の人とサウナに行ったときでした。移動中の車内でバンドの今後についてよく話すんですけど、「メジャーデビューする?」といきなり聞かれて、「ゆくゆくはしたいですね」って答えたら、何社か提案してくれたんです。だから僕にとってもメジャーデビューの話は突然のことでした。
──12月4日の渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブでメジャーデビューを発表して、その数時間後の12月5日0時にデビュー曲「最愛のゆくえ.」を配信リリースするそうですね。すごいスピード感です。
えい 「この日に発表したいです」と言ったのは僕なんです。こういうことって、あんまりないんですかね?
さとぴー バンド側から提案するケースはそんなに多くはないのかも。
──そうかもしれません。
えい 普通はメジャーデビューの発表ってどういうタイミングでするものなの?
ふじい ツアーファイナルじゃない? でも、渋谷CLUB QUATTRO公演はファイナルじゃないから。
かじ 発表の翌日に配信というのも、あんまりないのかも。だいたい発表の2、3カ月後とかじゃない?
えい 発表してからすぐにデビュー曲が出るのは、お客さんにとってもうれしいことだと思うんですよ。鮮度を落とさないという点でも、いいアイデアだと思います。
ふじい あなたっぽいよ。
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この人、ずっと進化してるんです