音楽ナタリー PowerPush - THE BLUE HEARTS
ジュンスカ寺岡呼人が語るブルーハーツの魅力
THE BLUE HEARTSの結成30周年を記念したメモリアルアルバムがリリースされた。ナタリーではこれを受けて、特典のトリビュート盤を監修した寺岡呼人にインタビューを実施。JUN SKY WALKER(S)のメンバーとして同時代を駆け抜けた彼に、当時の思い出やTHE BLUE HEARTSの魅力について語ってもらった。
取材・文 / 大山卓也 インタビュー撮影 / 小坂茂雄
初めて聴いてすぐに歌えた
──呼人さんがブルーハーツを初めて観たのはいつですか?
1987年か、86年の終わり頃ですね。ジュンスカのメンバーと一緒に渋谷La.mamaのライブに行きました。
──呼人さんはジュンスカ加入前?
そうです。僕はただの学生でまだ19歳とかだったんですけど、あの界隈に入り浸ってたら、La.mamaのブッキングやってた方から「このブルーハーツってバンドは観といたほうがいいぞ」って言われて。
──初めて観たブルーハーツはどうでしたか?
いや、本当にすごかったですね。それまで曲も何も知らなかったんですけど、ライブ観たあと、帰り道はみんな無言になってた。
──圧倒されたんですね。
しかも驚くことに、終わってどっか飲み屋に入ったんですけど、みんな歌えたんですよ、初めて聴いた歌なのに。それこそ「リンダリンダ」とか「NO NO NO」とか、「終わらない歌」もあったかな。それを歌えてる自分にびっくりしながら、本当にみんな雷に打たれたような感じでした。その体験によって、ジュンスカの曲もガラッと変わっちゃったし。
──えっ、どんなふうに?
例えばうちのギター(森純太)は、それまでたくさん並べてたエフェクターを全部売っちゃって、アンプに直でつなぐようになったし。服装ももうちょっとゴテゴテしてたのが、Tシャツとジーパンみたいな感じになって。ブルーハーツはそれくらい衝撃的でしたね。でも同じ時代のバンド同士、影響を受けないわけがないし、僕はそれは別に悪いことじゃないと思ってるんですけど。
ブルーハーツとジュンスカの関係
──呼人さんは、自分がジュンスカに加入してからはブルーハーツをどう見ていましたか? 当時ブルーハーツとジュンスカは音楽性も比較的近く、比べられることも多かったですよね。
どうなんだろう。ブルーハーツが87年にデビューして、ジュンスカは88年なんですけど、僕はあとからバンドに入ったっていうのもあるし、ベーシストだったっていうのもあって、そこらへんはわりと冷静に見てたと思います。少なくともやっぱりブルーハーツがあったから自分たちがあるっていうのは思ってました。たぶん僕以外のメンバーもすごく気にしてたとは思うし。
──じゃあライバル的な存在というわけでもなく?
ライバルじゃないですね。なんなんでしょうね。うーん……石原裕次郎がいて小林旭がいる、みたいな? 違うかな(笑)。
──両者が似ているという声もあったと思うんですが。
いや、まあサウンド的には近かったかもしんないですけど、でも歌詞の世界だったり、そこにある美学や精神だったりっていうのは真似しようがないですよ。やっぱり彼らは当時からオンリーワンだったんで、そこを目指してもなかなかね。当時僕ら界隈の中でブルーハーツっていうものが1つの頂点だっていう意識はあったと思いますね。
想像以上に“甲本ヒロト”だった
──呼人さんはブルーハーツのメンバーと交流はあったんですか?
僕が当時住んでいた下北沢のアパートが、ヒロトくんの部屋と200mくらいしか離れてなかったんです。あれはブルーハーツもまだデビュー前、豊島公会堂のライブが終わったくらいの時期かな。ある日、僕の行ってた銭湯にヒロトくんが来たんですよね。で、そのとき一緒にいた共通の友人が「今からヒロトんち行くけどお前も来る?」って。
──それが初対面?
そう。だから「えっ、俺なんか行っていいんですか?」みたいな感じで、それでヒロトくんちに行ったら、押入れが全部レコードラックになってて。ヒロトくんはブルースのレコードを1枚1枚かけながら、ずーっと音楽の話をしてるわけですよ。で、聴き終わったら「よし、これ持っていけ」つって、どこの馬の骨ともわからない俺に10枚くらいレコードを貸してくれたの。たぶん俺の名前も知らないのに(笑)。
──音楽好き同士通じ合うものがあったのかもしれないですね。そのときのヒロトさんの印象は?
普通だったら例えばポマードべったりのロックンローラーの人も、ステージを降りたら髪の毛サラサラで礼儀正しかったりとか、そういうこともあると思うんです。でもなんていうか、ヒロトくんは想像以上に“甲本ヒロト”でしたね。
──今もお付き合いはあるんですか?
しばらく疎遠だったんですけど、ひょんなことから3、4年前にまた交流が始まって。20何年ぶりにヒロトくんちに行ったんですよ。
──どうでした?
まったく変わってなかった(笑)。タイムスリップしたのかっていうぐらい。もちろんレコードの数も増えてるし、装置も素晴らしくなってるんだけど、ヒロトくんが音楽の話しながらいろんなレコード聴かせてくれるあの感じがまったく変わってなくて。「なあ呼人、俺たちあの頃よりちょっとだけ、こうやって好きなレコード聴けるようになったから、ちょっとだけあの頃よりもマシになったよなあ」って。
──同じ気持ちのままなんですね。
だからその変わらなさというか。絶対変わってるんだけど、変わり続けてるからこそ変わらない雰囲気っていうか。そこがやっぱりすごいんですよね。
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- ベストアルバム「THE BLUE HEARTS 30th ANNIVERSARY ALL TIME MEMORIALS~SUPER SELECTED SONGS~」2015年2月4日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 生産限定盤 [CD3枚組+DVD] 6000円 / MECR-5011 / Amazon.co.jp
- 通常盤A [CD3枚組] 4800円 / MECR-4011 / Amazon.co.jp
- 通常盤B [CD2枚組] 3300円 / MECR-3034 / Amazon.co.jp
DISC 1
- 1985
- 人にやさしく
- リンダリンダ
- 君のため
- 終わらない歌
- 世界のまん中
- NO NO NO
- 少年の詩
- 未来は僕らの手の中
- 星をください
- ロクデナシ
- キスしてほしい(トゥー・トゥー・トゥー)
- ブルーハーツのテーマ
- TRAIN-TRAIN
- 僕の右手
- ラブレター
- 電光石火
- 青空
DISC 2
- 情熱の薔薇
- イメージ
- 首つり台から
- あの娘にタッチ
- 皆殺しのメロディ
- TOO MUCH PAIN
- 夢
- すてごま
- 旅人
- 台風
- 月の爆撃機
- 1000のバイオリン
- 1001のバイオリン
- 手紙
- PARTY
- 夕暮れ
- 歩く花
- もどっておくれよ
DISC 3(生産限定盤 / 通常盤A)
- チェインギャング / THE STARBEMS
- 夕暮れ / グッドモーニングアメリカ
- 終わらない歌 / 奥田民生
- 悲しいうわさ / 八代亜紀
- TOO MUCH PAIN / 銀杏BOYZ
- TRAIN-TRAIN / 若旦那
- 青空 / the LOW-ATUS(細美武士/the HIATUS・TOSHI-LOW/BRAHMAN)
- 手紙 / Ann Sally
生産限定盤DVD収録内容
- 全シングルビデオクリップ15曲
- MEET THE BLUE HEARTS U.S.A TOUR 1990
- HIGH KICK TOUR VIDEO PAMPHLET
THE BLUE HEARTS(ブルーハーツ)
甲本ヒロト(Vo)、真島昌利(G, Vo)、河口純之助(B, Cho)、梶原徹也(Dr)の4人からなるロックバンド。1985年結成。1987年にシングル「人にやさしく / ハンマー」を自主制作でリリースし、1987年にシングル「リンダリンダ」でメジャーデビュー。力強い楽曲と激しいライブパフォーマンスで人気を集め、そのスタイルは後に続く多くのアーティストに影響を与えた。1995年に解散するまで計8枚のアルバムを発表。甲本と真島はバンド解散後にTHE HIGH-LOWSを結成し2005年まで活動。2006年からはザ・クロマニヨンズで活躍している。
寺岡呼人(テラオカヨヒト)
1968年生まれ、広島県出身。1988~93年にJUN SKY WAKER(S)のベーシスト兼コンポーザーとして活躍。バンド脱退後はソロでの活動を展開するとともに、他アーティストのプロデュースも行い、これまでゆず、矢野真紀、ミドリカワ書房、植村花菜、グッドモーニングアメリカらのプロデュースを手がけている。2001年より、自身が尊敬するアーティストや親交あるアーティストをゲストに迎えコラボレーションを行うイベント「Golden Circle」を不定期に開催。2014年9月には通算14枚目となるオリジナルアルバム「Baton」をリリースした。