BLUE ENCOUNTはバンドだけど、作曲家4人の集まりとも言える
──ミニアルバムを完成させた今どんなことを感じているのか、改めて聞かせていただけますか?
江口 僕は「DOOR」ができて本当によかったと安心しています。もしも「DOOR」が完成せずに4曲入りになっていたら、ミニアルバムではなくEPとしてリリースしていたと思うんです。
──本当にギリギリの制作だったんですね。
田邊 こんなに綱渡りの制作は初めてでしたよ(笑)。いつもならインタビューしてもらっている時点で達成感があるんですけど、先月まで制作をしていたので、どんなアルバムなのか、正直まだ自分たちの中で落とし込めていないんですよ。「DOOR」や「vendetta」は武道館で初披露だけど、歌いながらどんな気持ちになるのか想像できないし……でも全曲完成度が高いから、楽曲のポテンシャルを信じてやるしかないのかな。今年の年末くらいにようやく「こんなアルバムだったね」と噛み締められる気がしていて。
辻村 うん。そんな気がするな。
田邊 この作品が自分たちにとってのターニングポイント=“扉”になったと今後振り返ることになると思います。「DOOR」はとにかく書けなくて苦労したし、「青」の歌詞は歌録りの前日まで練っていたし、「vendetta」なんてレコーディング中にいろいろな音を足したりしたし……制作期間中はすごく生き急いでいたんですよ。それでも最終的にどっしりとした作品になったのは、逃げずに自分たちの気持ちと向き合ったからこそだし、やっぱりメンバーの力があったからこそだと僕は思います。僕はDTMができないんですが、3人のスキルに救われながら、歌詞をしっかり紡ぐことに集中できた感覚があって。この4人じゃなかったら生まれなかった言葉がたくさんありますし、バンドの未来について発表した今だからこそ降りてきた言葉もたくさんあります。4人で作り上げたアルバムだとすごく感じていますね。
高村 田邊がターニングポイントと言いましたけど、確かにここがスタートだという感覚はあります。僕からすると、「ちょっと無理をしてでもチャレンジをしてみよう」という気持ちで臨んだ5曲だったんですよ。今まではドラムを叩いてそこで完結という感じだったけど、今回はそれ以外のところにも関わっていったし、1曲丸ごと打ち込みで作ったりとか、今までやってこなかったけどやってみたいと思っていたチャレンジをたくさんしました。その結果、思った以上にできたところもあれば、できなかったところもあったから、「もっと満足できるものを作るためには、今の自分が持っている知識だけじゃ全然足りないんだな」と思い知らされて。ここからどこまで成長できるかは今後の自分次第ですけど、この5曲が「ここからスタートしたんだよ」という目印になったように感じています。
──そもそも今チャレンジしたいと思ったのはなぜなんでしょう?
高村 理由はいろいろあるんですけど、コロナ禍に入って、ライブができなかった分、時間ができて、パソコンを使って制作するようになったのが一番大きいと思います。それがきっかけで「僕は音が好きなんだな」ということに改めて気付いたんですよ。ドラムはもちろん、ドラム以外の音に関しても「みんなが驚くような音を作りたい」という気持ちがだんだん強くなっていったんです。今はそれをブルエンの楽曲にもちょっとずつ反映できるようになりました。
──高村さんが今話してくれたことは、辻村さんの渡米を決めた理由とも通じている気がします。「自分の担当楽器をちゃんと演奏できればいい」ではなく、「いい音楽を作りたい」と視野を広げているからこそ、考えるべきこと、やるべきことが増えて、もっとチャレンジしたいという気持ちや現状に対する焦り、渇望感が生まれる。
高村 そうですね。メンバーと話しているときに最後に出てくる言葉はやっぱり「すごい曲を作ろう」とか「最高のアルバムを作ろう」なんですよ。いいドラムを叩くことが目的ではなく手段で、本当の目的は最高の曲を作ることだという認識は年々増してきているかもしれないです。
──田邊さんが先ほど言っていた「4人で作ったアルバム」という言葉も腑に落ちました。「ここが自分の担当領域だ」という感じで取り組むのではなく、「いい曲を作る」という共通の目的に向かって1人ひとりがさまざまなことを気に掛けているからこそ、「それぞれがそれぞれにがんばった」ではなく「4人でがんばった」という気持ちになれているのでは、と。
田邊 まさに。BLUE ENCOUNTはバンドだけど、作曲家4人の集まりとも言えると思うんですよ。特に「Z.E.R.O.」や「vendetta」を制作しているときは“作曲家集団BLUE ENCOUNT”になれていた気がしていて。
辻村 わかる。
田邊 経験を積んで各々鍛えられたからこそ、なんでもできるタームに入りつつあると思います。俺たちの使命は自分たちの音楽をちゃんと伝えていくことで、BLUE ENCOUNTという音楽を世界に知らしめられるか否かがこれからの勝負になってくると思うんですよ。シーンやジャンルにかまけることなく。
──幅広いジャンルの音楽が好きで、幅広いジャンルの曲を作っているがゆえに、かつては「お前らは何がやりたいんだ」と言われたこともあったとライブのMCなどで話していましたよね。そこから生まれたコンプレックスや「そもそも1つのジャンルに収まる必要があるんだろうか」という反骨心がバンドの1つのキャラクターになっていたように感じますが、もはや今はそういう次元ではないと。
辻村 そうですね。その反骨心が当時の僕らの切れ味だったから、そういう時期もあっていいと思うんですよ。だけど「1つの枠組みの中に収まってたまるか」と言っている時点でその枠組みを意識しているということですし、なんだかんだ僕らは真面目だから、考えすぎて、知らず知らずのうちにその枠組みの中に収まっていたところもあったんじゃないかと思います。
田邊 そうだね。
辻村 今できた作品はそうじゃない。制作中に感じた面白さやワクワク感、やっぱりそれが今のBLUE ENCOUNTだと思います。
未来を感じてもらえるようなライブにしたい
──ライブについても聞かせてください。2月11日に日本武道館で行われるツアーファイナルが辻村さん渡米前最後のライブですが、前日の2月10日には04 Limited Sazabys、THE ORAL CIGARETTES、BLUE ENCOUNTの3組のよるライブイベント「ONAKAMA 2023」が開催されます。2日連続武道館ですね。
高村 よく武道館のスケジュールが取れたよね。
江口 確かに。
辻村 あとは雨が降らなければいいよね。
江口 初めての武道館は降ってましたよ。
田邊 大雨洪水警報が出てました。
辻村 晴れ晴れしくやりたいんだけどなー(笑)。
──「ONAKAMA 2023」の開催はどういう経緯で決まったんですか?
田邊 2021年に「ONAKAMA」のツアーを回ったときは関東でできなかったし、ツジがアメリカに行く前に派手にやれないかなと、僕からGENちゃん(04 Limited Sazabys / B, Vo)と拓也(THE ORAL CIGARETTES / Vo, G)に話したんです。2人は「やるもんだと思ってたよ」「むしろなんでそんな堅苦しい感じで言ってくるん?」と言ってくれて、自然な流れで開催が決定しました。それが昨年の6月頃だったのでツジの件も発表済みだったんですけど、どうやら2人は、ツジが脱退する道を選んでいたら「ONAKAMA」はやらないという考えだったみたいです。
──そうなんですね。
田邊 「ONAKAMA」に関しては俺らがどうこうではなく、インディーズ時代から切磋琢磨してきたバンドが、続けてきた先で武道館に集まれるということに意味があるので。それぞれにスタイルを確立している3組が、今回武道館でどんな戦い方をするのかを観てもらいたいですし、ここでどんなライブができるかが各々の今後にとっての1つの指針になるのかなと思います。
──では、辻村さん、2月11日のワンマンに対する意気込みをお願いします。
辻村 はい。僕としては、お客さんをあんまり不安にさせたくないなという気持ちがありまして。そのためには「BLUE ENCOUNTはこれからこう生きていくんだ」と未来を感じてもらえるようなライブにしたいと思っています。やっぱりどうしても悲しくなってしまうという人もいると思うけど、そういうライブができたらみんなでハッピーになれるんじゃないかと。あとはまあ、今後の活動次第なのかな。
田邊 そうね。
辻村 僕はブルエンを辞めるわけではないので、これからの活動も楽しみにしてもらえたらと思います。
ライブ情報
ONAKAMA 2023
2023年2月10日(金)東京都 日本武道館
<出演者>
04 Limited Sazabys / THE ORAL CIGARETTES / BLUE ENCOUNT
BLUE ENCOUNT TOUR 2022-2023 ~knockin' on the new door~
- 2022年10月8日(土)福岡県 福岡市民会館
- 2022年10月9日(日)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
- 2022年10月15日(土)北海道 道新ホール
- 2022年10月29日(土)宮城県 電力ホール
- 2022年11月3日(木・祝)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2022年11月10日(木)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
- 2022年12月15日(木)大阪府 オリックス劇場 ※振替公演
- 2022年12月16日(金)香川県 レクザムホール(香川県県民ホール) ※振替公演
- 2023年2月11日(土・祝)東京都 日本武道館
プロフィール
BLUE ENCOUNT(ブルーエンカウント)
田邊駿一(Vo, G)、江口雄也(G)、辻村勇太(B)、高村佳秀(Dr)の4人からなるロックバンド。2007年、田邊、江口、高村によって地元熊本で結成され、2009年に3人の進学先である東京の音楽専門学校で辻村が加わり現体制となる。2010年に1stミニアルバム「the beginning of the beginning」をリリースし、この頃よりライブハウスシーンで頭角を現すように。2014年2月に初のフルアルバム「BAND OF DESTINATION」を発売した。同年9月にキューンミュージックよりEP「TIMELESS ROOKIE」でメジャーデビュー。2016年10月に初の東京・日本武道館単独公演を行った。2020年11月には4thアルバム「Q.E.D」をリリース。2021年4月には神奈川・横浜アリーナ単独公演を開催した。2022年11月にテレビアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ R2」のエンディングテーマ「Z.E.R.O.」をシングルリリース。2023年2月にミニアルバム「Journey through the new door」を発表し、ライブツアー「BLUE ENCOUNT TOUR 2022-2023」ファイナル公演として日本武道館公演を行う。その後、辻村はアメリカに移住予定。辻村はアメリカで音楽活動をしながら、メンバーとして楽曲制作、レコーディングを継続していく。
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