……トンボ、ヤバない?
田邊 でも本当にそういうことで。サウナって、その場との会話があるんですよ。例えばドライサウナだったら「おー、パリついてんね!」みたいな会話をサウナとする。だから俺、オープンと同時に行くのが好きなんです。誰もいない時間に1人で入って、サウナと話をしてます。実際に声出ますからね。
北村 わかります。声出ちゃいますよね。自分の中で、一番声が出たのが恵比寿のドシー(℃)。
田邊 ああ、最高だよね。
北村 最高です。ドシー(℃)って空間全体がシンプルで、超ストイックじゃないですか。
田邊 15分砂時計が1個あるだけでね(笑)。
北村 あそこはさすがに声出ましたね。「……いいじゃない」みたいな(笑)。
田邊 水風呂がなくてチラー(冷却器)があるんですけど、何回も行って思ったのは、一番冷たいのは体洗うところのシャワーなんですよ(笑)。俺はそこに直行してシャワー浴びるようにしてます。
北村 さすがですね。俺も完全に同じです。
田邊 これ、かなりサウナーがシンクロするポイントですよね。サウナに通っていると、そうやって気持ちいいところを自分で探していくんです。天候によっても変わるしね。「今日はちょっと雨水浴びてもいいかな」みたいな。
北村 雨も気持ちいいんですよね。1回経験してほしいのが、夏場に森林浴ができる施設での外気浴。これも柊平くんとの体験なんですけど(笑)、長野でダム巡りをしていたときに「とりあえず車飛ばしてみるか」みたいな感じで山奥に行ったら、700円で通れるっていう、高速の入り口みたいなゲートが現れたんですね。「なんだろう」と言いながら700円払って進んでいったら、秘境温泉にたどり着いたんですよ。ジブリに出てくるような赤い建物の温泉にはサ室があって、水風呂はちっちゃいんですけど、外に出たら岩の上に寝そべって森林浴ができるんです。
田邊 うわー、いいね。
北村 そこで空を見てたら「……トンボって、こんなに飛んでるんだな」と思って……。
田邊 あれ、ちょっとカモメみたいな話になってきた(笑)。
北村 夏の空って、思ったよりもトンボが飛んでいるんです。普段だったら気付かないけど、もう星の数ぐらい。それを見ながら2人で顔を見合わせて「……トンボ、ヤバない?」って(笑)。
田邊 絶対に人間が言わないであろうセリフ(笑)。そこまでいくんだ。
──やっぱり自然とリンクしちゃうんですね。
北村 ととのって空を見なければ、きっと気付かなかったんですよ。山の上だから雲もすごく近くて、いろんな形に見えたし……「空は広いな」と。
田邊 それ、長野のどこだろう。
──すべてが幻の可能性もありますね(笑)。
北村 本当に(笑)。ゲートをくぐって外に出たあとに「夢か?」って思いましたもん。
田邊 出会ってるなあ。でも、それこそツアー先でサウナに行くときは、北村くんのような“感覚”を信じているところはありますよ。とりあえずGoogleマップで「サウナ」と調べて、出てきたところまで歩いてみる。で、自分の琴線に触れたところに入るっていう。この前豊橋にサウナオーギという施設があったんですけど、めっちゃよかったです。パチンコ屋さんがやってるサウナなんですけど、本当に味のあるパチンコ屋さんの2階にあって、入った瞬間「何これ、昭和?」っていうぐらいの造りなんですよ。タイルとかもすごい年季が入ってて、その雰囲気だけでちょっとととのう、みたいなね。
しっかりと汗をかいたあとに自分のあるべき姿に戻れる
──いいですね。話は尽きないですが、そろそろ時間なので……最後に、サウナに行くことによって人生なり仕事なりにどんな影響が出ているかというところを話していただけますか?
北村 やっぱりサウナなくして僕が今持っている思想はないというか……。
田邊 ガンジーみたいだ(笑)。
北村 17、8歳の頃にこの感覚に出会っていなかったら、今の自分になっていなかっただろうなということはいっぱいあります。ととのったときって……さっきのカモメとかトンボもそうですけど、俯瞰で物事を見られる感覚になれるんですよね。それを知っているからこそ「急がば回れ」というか、焦らない日常のリズム、テンポが生まれたなって思います。あと、結果を先に求めなくなりました。「こうなりたい」という気持ちが先行しすぎると、そこまでにたどり着くプロセスがどうもうまくいかないし、今この瞬間の大切さに気付けないっていうか。
田邊 北村くんは今、頂点にいますよね。“サウナ思想家”の中で。
北村 いやいや(笑)。あと、人のこともわかるようになりました。夢に向かって進んでいく道のりやその中での関わりって超大事だと思うんですけど、自分への利益のことしか考えていないような人も中にはいて、そういう人たちに気付けるようになりました。
──田邊さんはいかがですか?
田邊 北村くんのその思想にもっと僕も近付くためにも、これからもサウナ活動をがんばっていきたいなと思いますね。自粛期間に頭の中でいろいろ考える機会が増えて、それこそ「ここからどうなっていきたいか」みたいな先のことも考えるようになったんですよ。でも、サウナに入ると「お前はバンドマンやからな」ってサウナに教えられる感じがするし、サウナでめっちゃ曲を作ります。しっかりと汗をかいたあとに自分のあるべき姿に戻れるというか……いろんな邪念があるけど、「俺は歌を作って歌う人間なんだぞ」というところに立ち返れますね。
北村 サウナと音楽が融合したフェスをやりたいですよね。僕、マグ万平(芸人・熱波師)さんなんかと話を詰めて、何かやれないかなと思っていて……。いろいろな楽しみ方ができるサウナがあって、外に出ると音楽が鳴ってるっていう。超ヤバいと思うんです。もう、この2組から始めましょうよ。
田邊 テントサウナを建てて、外に出るとステージもあって……めっちゃいい! これはもう、ソニー(BLUE ENCOUNTとDISH//が所属するソニーミュージック)が総力を挙げてやりましょう(笑)。
北村 楽屋エリアにもサウナ飯とサウナがあって、プールもあって。
──全員歌詞飛ばしそうですね(笑)。
北村 いいんです! それが許されるフェス。「もう歌えないー」でいいんです。だって、観てる側もそうなんだから(笑)。
田邊 MCで「みんな見てほら、トンボが飛んでるよー!」ってね(笑)。逆にめちゃくちゃいいパフォーマンスができる可能性もありますし。これはちょっと話進めないとですね。実行委員として、とりあえずサウナ行って話しましょう!
- BLUE ENCOUNT(ブルーエンカウント)
- 田邊駿一(Vo, G)、江口雄也(G)、辻村勇太(B)、高村佳秀(Dr)の4人からなるロックバンド。2007年、田邊、江口、高村が地元熊本でバンドを結成し、2009年に3人の進学先である東京の音楽専門学校で辻村と出会い現体制となる。2010年に1stミニアルバム「the beginning of the beginning」をリリースし、この頃よりライブハウスシーンで頭角を現すように。2014年2月に初のフルアルバム「BAND OF DESTINATION」を発売した。同年9月にキューンミュージックより4曲入りCD「TIMELESS ROOKIE」でメジャーデビュー。2015年7月にメジャー1stフルアルバム「≒」を発表。2016年10月に初の東京・日本武道館単独公演を行い成功を収める。2017年1月に2ndアルバム「THE END」を発表し、本作を携えてバンド史上最大規模となる全国ツアーを開催した。2018年3月に3rdアルバム「VECTOR」をリリース。2021年6月に日本テレビ系ドラマ「ボイスII 110緊急指令室」に主題歌として書き下ろしの新曲「囮囚」(ばけもの)を提供。同曲を表題曲とするシングルを9月8日にリリースする。現在全国ツアー「BLUE ENCOUNT tour 2021 ~Q.E.D : INITIALIZE~」を開催中。
- DISH//(ディッシュ)
- 北村匠海(Vo, G)、矢部昌暉(Cho, G)、橘柊生(DJ, Key)、泉大智(Dr)の4人で構成された、演奏しながら歌って踊るダンスロックバンド。2011年12月の結成以降、日本武道館での単独公演を4年連続で開催するなど着実に支持を集める。2020年にYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で公開された「猫」の歌唱映像が話題となり、同曲は動画再生数1億4000万回を突破。4月には「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」が配信リリースされ、この曲は12月に行われた「第62回 日本レコード大賞」で優秀作品賞を受賞した。ストリーミング総累計再生数は3億回を超えるなど、大ヒットを記録している。メンバー4人は映画やドラマ、舞台、モデルなど、個々でも活動を行っている。