BLUE ENCOUNTが3rdフルアルバム「VECTOR」を完成させた。
テレビアニメ「『銀魂』ポロリ篇」のオープニングテーマ「VS」、テレビドラマ「オー・マイ・ジャンプ! ~少年ジャンプが地球を救う~」のオープニングテーマ「灯せ」といったタイアップ曲を含む本作は、ブルエンの真骨頂とも言えるエモ―ショナルなロックチューン「こたえ」から、メロディアスな失恋ソング「グッバイ。」、シティポップふうの「coffee, sugar, instant love」までバラエティに富んだ楽曲が収録されており、「VECTOR」というタイトル通りバンドの新たな方向性を示す充実作となっている。
今回、音楽ナタリーではニューアルバムのリリースを記念して、BLUE ENCOUNTの田邊駿一(Vo, G)と江口雄也(G)、小説家・住野よるの対談を実施した。以前から交流があり、お互いにファンであることを公言している2組。アルバム「VECTOR」や、ブルエンの代表曲「もっと光を」がテーマ曲に起用された住野氏の新作「青くて痛くて脆い」について語り合ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 草場雄介
大人になっても、こんなにまっすぐなことが言えるんだ
──住野さんは数年前からBLUE ENCOUNTのライブに足を運んでいたそうですね。
住野よる はい。初めてBLUE ENCOUNTのライブを拝見したのは、2014年の「RADIO CRAZY」でした。
田邊駿一(Vo, G) 初めて「RADIO CRAZY」に出演した年ですね。
住野 その年に出たアルバム「BAND OF DESTINATION」で初めてブルエンの音楽を聴いて、「これはすごい!」と思ったんですよ。
江口雄也(G) 4年前ですね。その時期から知ってくれているのはすごくうれしいです。僕も住野さんの作品はすべて読ませてもらっていて。「君の膵臓をたべたい」でドハマりして、それ以降、新作が出るたびに発売日に買わせてもらっています。
田邊 すごいな、お前。僕も読ませてもらってんるですけど、父親から「(住野さんの小説が)すごくいいから、読め」と言われたのがきっかけなんです。うちの父親は小説が大好きで、今も小説家になりたいと思ってるくらいなんですけど(笑)、その父親が言うんだから間違いないだろうと。実際、僕も一気に引き込まれましたね。
住野 ありがたいです。
江口 住野さんのTwitterを通して、感想を伝えさせてもらったら、返事が返ってきたんですよね。それから交流が始まって。
住野 江口さんからDMが届いたときは「ブルエンの人だ!」と感激しました。ファン気分で申し訳ないんですが……。
田邊 いやいやいや(笑)。
住野 出版社の担当さんも元バンドキッズなので、「ブルエンの江口さんから連絡が来たよ」と伝えたら「マジっすか!?」と喜んでました(笑)。ブルエンの音楽性はまさに直撃という感じだったんです。歌詞も本当に素晴らしくて。これは僕が小説家として目指しているところでもあるのですが、「大人になっても、こんなにまっすぐで熱いことが言えるんだ」という。
田邊 よく言われます(笑)。ただ、それは僕らがやりたかったことではないんですよ。確かに皆さんに「熱いですね」と言ってもらうんだけど、僕らにとっては当たり前と言うか「僕らを観て"熱い"と感じるって、あなた、普段はどんな生活しているんですか?」って。
江口 うん。
田邊 自分たちは熱いことを言ってるつもりはないんです。ただ、高校の頃からずっと価値観が変わってないだけで。「死ぬ気でがんばればなんとかなる」「生半可な気持ちだったら、やらないほうがいい」とか。
江口 それが「熱い」ってことなんだろうね。不器用だから、それを前面に押し出すしかないので。
「今のブルエンを伝えたい」という衝動
──3月21日にリリースされるBLUE ENCOUNTのニューアルバム「VECTOR」からも、ブルエンのまっすぐで真摯な姿勢が伝わってきました。住野さんはこのアルバムに対してどんな印象をお持ちですか?
住野 まず、すごくヤンチャだなと感じました。1曲目の「灯せ」から、いきなり先頭打者ホームランみたいだし、「Waaaake!!!!」「VS」などの勢いのある曲があって、「...FEEL ?」からさらに暴れ出すと言うか。
田邊 監督もベンチから出てきて大乱闘って感じですね(笑)。
住野 「グッバイ。」「coffee, sugar, instant love」あたりの流れも絶妙ですね。「こういうタイプのブルエンの曲は聴いたことがない」という驚きがあるし、そういう曲が入っているからこそ、最後の「さよなら」「こたえ」がさらにグッと来るという構成になっていて。
江口 今の言葉、アルバムのプロモーションで使っていいですか?(笑)
田邊 こらこらっ(笑)。確かに今回はいろんなタイプの曲が入ってますからね。そのことによって、ラストの「こたえ」が引き立つと感じてもらえてるのは本当にうれしい。
住野 小説もそうなんですよね。いろいろな視点が入っていたほうが、描きたいことが引き立つので。そういう意味で「VECTOR」は、今までのブルエンをしっかり見せつけながらも、僕らファンに対して「おまえらの考えている枠には収まらないからな」と言われている気がして。
江口 おおっ!
田邊 いや、今のは貴重な意見ですよ。実際、そう思いながら作っていた節もあるので。
江口 そこが伝わっているのはすごいです、ホントに。
住野 いえいえ。前作の「THE END」を聴かせていただいたときに「ブルエンの塊のようなアルバムだな」と感じたんです。もちろんそれは大好物なんですけど、それを経て「次はどんなアルバムになるんだろう?」と思っていたら、こちらの想像を超えるような暴れっぷりだったと言うか。自分がファンであるバンドがまったく止まらず、どんどん先に進んでいることがうれしくてしょうがないですね。
田邊 ありがとうございます! 今回はまさにヤンチャな感じ、向こう見ずな感じで作れたんですよね。メジャー1作目の「≒」、2作目の「THE END」も同じような意識で制作していたんですが、“ヤンチャ”を模索していたところもあって。今回は自然に出てきたメロディと言葉がちゃんと暴れていたし、「衝動がこんなにもバンドをレベルアップさせるのか」と実感しました。ただ正直なところ、「THE END」のあとは「次はどうしよう?」と思っていたんですよ。
住野 そうなんですか?
田邊 はい。去年は幕張メッセ、地元・九州の福岡国際センターと1本のツアーでアリーナのワンマンを2回やらせてもらって。その後がどうなるかまったく見えなかったし、曲も全然浮かばなくて、「ヤバイ。このままだとバンドが終わる」という危機感があったんです。でも「THE END」ツアーをやり切ったことで「もっともっと自分たちの音楽を届けたい」という気持ちが強くなって。自分たちのエゴでもいい、悪口でもいいし愛でもいいから、今のブルエンをまっすぐ届けたくなったんです。その後、夏フェスにたくさん出させてもらって、さらに「Bowline」というツーマンツアーもあって、制作に入ったのは11月からなんですが、3泊4日の曲作り合宿で70曲くらいできて。
住野 すごいですね!
江口 あのときはちょっとおかしかったよね(笑)。
田邊 そうだね(笑)。歌詞も12月に入ってから一気に書いて。それもすべて「今のブルエンを伝えたい」という衝動のおかげかなと。
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僕らの思いは届かないかもしれないけど……
- BLUE ENCOUNT「VECTOR」
- 2018年3月21日発売 / Ki/oon Music
-
初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / KSCL-3046~7 -
通常盤 [CD]
3024円 / KSCL-3048
- CD収録曲
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- 灯せ
- Waaaake!!!!
- コンパス
- VS
- RUN
- ...FEEL ?
- ハンプティダンプティ
- resistance
- 虹
- グッバイ。
- coffee, sugar, instant love
- 「77」
- さよなら
- こたえ
- 初回限定盤DVD収録内容
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- VS -Music Video-
- VS -Making-
- さよなら -Music Video-
- さよなら -Making-
- ブル散歩 -VECTOR完成旅行編-
- 住野よる「青くて痛くて脆い」
- 2018年3月2日発売 / KADOKAWA
ライブ情報
- BLUE ENCOUNT TOUR 2018 Choice Your「→」
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- 2018年6月9日(土) 北海道 サッポロファクトリーホール
- 2018年6月14日(木)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年6月15日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年6月21日(木)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2018年6月22日(金)新潟県 NIIGATA LOTS
- 2018年6月24日(日)宮城県 SENDAI GIGS
- 2018年6月29日(金)福岡県 DRUM LOGOS
- 2018年6月30日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2018年7月7日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
- 2018年7月8日(日)香川県 高松festhalle
- 2018年7月13日(金)大阪府 なんばHatch
- 2018年7月14日(土)大阪府 なんばHatch
- 2018年7月18日(水)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年7月19日(木)東京都 Zepp Tokyo
- BLUE ENCOUNT(ブルーエンカウント)
- 田邊駿一(Vo, G)、江口雄也(G)、辻村勇太(B)、高村佳秀(Dr)の4人からなるロックバンド。2007年、田邊、江口、高村が地元熊本でバンドを結成し、2009年に3人の進学先である東京の音楽専門学校で辻村と出会い現体制となる。2010年に1stミニアルバム「the beginning of the beginning」をリリースし、この頃よりライブハウスシーンで頭角を現すように。2014年2月に初のフルアルバム「BAND OF DESTINATION」を発売した。同年9月にキューンミュージックより4曲入りCD「TIMELESS ROOKIE」でメジャーデビュー。2015年7月にメジャー1stフルアルバム「≒」を発表。2016年10月に初の東京・日本武道館単独公演を行い成功を収める。2017年1月に2ndアルバム「THE END」を発表し、本作を携えてバンド史上最大規模となる全国ツアーを開催した。2018年3月に3rdアルバム「VECTOR」をリリース。
- 住野よる(スミノヨル)
- 小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿していた「君の膵臓をたべたい」が注目を集め、同作で2015年にデビュー。2016年2月に2作目の小説となる「また、同じ夢を見ていた」、12月に「よるのばけもの」を発表する。なお「君の膵臓をたべたい」は浜辺美波と北村匠海(DISH//)のダブル主演で映画化され、2017年7月に全国公開された。2018年3月に最新小説「青くて痛くて脆い」を発表した。