BiSH|1人ひとりのために心を込めて届ける「LETTERS」

モモコとリンリンが手を取り見つめ合う

──BiSHは先日の「CDTVライブ!ライブ!」に出演して、「TOMORROW」では振り付けありのパフォーマンスを初披露していましたね。

アイナ 「TOMORROW」はモモカンとリンリンが2人で歌うところがあって。あんまり2人で歌う曲がないし、特にこの2人がペアで歌うっていうのは初めてかなあ。

モモコグミカンパニー

モモコ うん。

アイナ 今回のアルバムは「ぶち抜け」という曲でも2人で歌うところがあって。2人で歌うのって新鮮だなと思ってるぐらいだったんですけど、「CDTVライブ!ライブ!」では「TOMORROW」をありがたいことにフル尺でやらせてもらったんです。そのときに思ったのが、「TOMORROW」ってその2人の歌うところが一番の見どころなんだなって。

──手を合わせて向き合うところ?

アイナ そうです。手をつかんで、2人で目を見つめ合って歌うところ。めっちゃいいですね。信頼しているというか、お互いを信頼しようとしているみたいな。独りよがりじゃないというのはカッコいいことだと思います。一緒に歌うときに相手の目をちゃんと見ながらお互い信じ合って歌うって難しいと思うんです。

モモコ その振り付けを作ってくれたのはアイナなので。「TOMORROW」という歌からそういう振り付けを考えて、感じ取って、あの振りを考えてくれたのはすごくありがたいなって。

──瞬きもせずに2人で向き合っていて。微笑み合うというよりは強い意志を感じるまなざしが印象的でした。

モモコ 「大切なものを守り抜く覚悟」と歌っているパートなので、ふわっとした感じではなく覚悟を決めた真剣な表情になってます。

──「CDTV」はひさびさのパフォーマンスということもあって、強い思いが表情に表れていたのかもしれませんね。

リンリン はい。気合いが入ってました。

モモコ 観る側の方も自粛期間があってBiSHに会ってないからこそ、それぞれの中でBiSHへの期待値がどんどん高まってるなというのもすごく感じていたし。しかもテレビの生放送でひさびさのパフォーマンスということもあって、出演前から吐くくらいいろんなプレッシャーを感じていたんです。でも「TOMORROW」でリンリンと手を取り合って歌うことができたし、1人だったら全然違ったと思った。そんな中でアイナは1人でも歌って(椎名林檎「罪と罰」をカバー)、すごい反響で。アイナはBiSHを引っ張ってくれる存在というか。BiSHとしてサンボマスターさんと同じステージに立てたこともうれしいことでしたし、全部が全部、やっぱり誰かに支えられていますね。だから乗り切れたんだなって思います。

左からリンリン、モモコグミカンパニー、アイナ・ジ・エンド。

スカパラ参加に「カッコいいどころの騒ぎじゃない!」

──「ロケンロー」は東京スカパラダイスオーケストラのホーンズがアレンジと演奏で参加した、跳ねるリズムのスカロックチューンに仕上がっています。BiSHの作品に外部のアーティストが入るのはこの曲が初めてなんですね。

モモコ そうですね。この曲は個人的にすごく好きで、きっと好きになってくれる人が多い気がします。このアルバムの中でもこの曲だけ曲調が違っていて。BiSHのメンバーでの掛け合いパートとかがあって、BiSHのメンバーが人間対人間で戦っているようなイメージ。本性がちょっと出始めてる気がしました、この曲で(笑)。

──ほかの曲では本性出てないですか?(笑)

モモコ いや、そんなことないです(笑)。でも歌い方とかに人間性が一番出ている曲なのかなって。サウンドプロデューサーの松隈(ケンタ / SCRAMBLES)さんがけっこう自由に歌わせてくれて、メンバー自身も遊んだりしていて。歌い方にも注目してほしいなって思います。アイナの歌い方とかも面白い。

アイナ・ジ・エンド

アイナ 遊んでた? 私けっこう必死だったよ(笑)。例えば、低い音から「アアアアー」って2オクターブぐらい上げていってみてと言われたんですけどできなくて。それを何回もやって。私の場合は遊びというか、けっこうガチでプロデュースされた感覚が強い(笑)。

モモコ 人によって違うのかも。

アイナ ああ……でも遊びの要素あったかもしれない。「ぶりっ子系で歌ってみて」とか普段ないから。好きなようにやった中でも、松隈さんのハードルがいつもより高いなあというのが印象に残ってます。

──松隈さんとしてもスカパラを迎えたことに気合いが入った部分はあったのかなと。

アイナ そうかもしれないですね。スカパラさんって本当に1音出すだけでスカパラさんが演奏してるとわかる。それはすごいことだと思いますし、キャリアとしても30年ぐらい大先輩の方が、若造のクソガキみたいな私たちとやってくれるのは、本当もうありがたいの極みで。

──実際にスカパラメンバーとこの曲についてお話する機会はあったんですか?

アイナ 谷中(敦 / Baritone Sax)さんから「すごくいいの録れたよ!」と連絡をいただきました、レコーディングした日の夜だったのかな。「うわー、楽しみです!」って返したら、「まあ音源はまだ送らないけどね」って(笑)。「はい、楽しみです」とお返事して、後日聴いてみたら本当にカッコよかったです。「カッコいいどころの騒ぎちゃうやん!」ってくらい。

リンリンの歌が変わった

──ラストの「I'm waiting for my dawn」はチッチさんの書いた歌詞がすっと胸に落ちるような、歌声とストリングスが優しい響きでした。

モモコ ホントにチッチらしいストレートな歌詞だなと思いましたし、この曲を聴いてすごく救われるなって思える歌詞がちりばめられていて。自粛期間にチッチが、メンバーや清掃員に対して思った感情を全部ストレートに出した曲になっています。

リンリン 選ばれたのは一部ですけど、メンバー全員このアルバムに入っている新曲の作詞をしまして、私はけっこう今の世の中について書いたんです。でも直接的ではなく言い換えてしまうとか、伝わりづらい書き方をたくさんしてしまったので、こういうときこそすごく素直にストレートに思ったまま書けるのは素敵だなって思いました。

──ちなみにこの曲の「手と手合わせたい」の「たい」の言い回しが「アイーン」っぽいというか、ちょっと誇張して弾む感じですよね?

リンリン そうです。

──これも松隈さんのディレクション?

リンリン

リンリン ……。

モモコ あれ? 最初リンリンが弾んで歌ったんじゃなかったっけ?

リンリン 私がその歌い方でやってみたら、松隈さんがほかの人にそういうふうに指示を出して。……でも私のテイクは選ばれなかった(笑)。

モモコ 松隈さんよりリンリンが先に発案したっていうのが面白いですよね。

──なんでこういう歌い方になったんでしょう?

リンリン え? なんでだろ。

アイナ たぶん無意識にやってるんですよ。で、松隈さんが「それいいねー」ってなって、「“たいーん”ってもうちょっと強調して言ってみて」みたいにディレクションが入っていったのかな。今回リンリンはいつになくレコーディングをめちゃめちゃがんばってて。今だから話せるけど、昔は特に英語の歌詞とか覚えられないと思ったら、Aメロを全部捨ててサビだけがんばって歌えるところを歌うみたいな人だったのに。今回めっちゃ練習してきていて、歌の変化を明らかに感じました。たぶん松隈さんもそういう部分を察したんでしょうね、リンリンの歌を全部いいふうに捉えてくれていました。じゃあもうちょっとこうしてみよう、ああしてみようって、リンリンにいつもより多くディレクションしてるのを見たので。リンリンがそうやって生み出してたんですけど。……なんで選ばれなかった(笑)。

リンリン (笑)。

──理由はディレクションをした松隈さんが最近YouTubeで積極的に情報発信をしているので語ってくれるかもしれないですね。

アイナ そうですね。でもほんまになんでなん?とは思いました(笑)。

──「LETTERS」にはタイアップ曲も収録されます。ドラマ版「浦安鉄筋家族」のエンディングテーマになったのはモモコさん作詞の「ぶち抜け」で、コラボイラストではBiSHメンバーが春巻先生と並んでいて。

モモコ はい(笑)。

──さらに「TOMORROW」はテレビアニメ「キングダム」のオープニングテーマ、「co」はリアル脱出ゲーム「夜のゾンビ遊園地からの脱出」のテーマ曲にそれぞれ採用されました。最近タイアップが増えましたよね。

モモコ ありがたいお話ですね。「浦安」も「キングダム」もすごく相性いいなと思ったので、いいコラボができた感じがします。

次のページ »
それぞれの表現