音楽ナタリー Power Push - BiSH
6人が生み出した“最エモ”アルバム「FAKE METAL JACKET」
BiSHが1月20日に2ndアルバム「FAKE METAL JACKET」をリリースする。前作「Brand-new idol SHiT」で鮮烈なデビューを果たした彼女たちは、BiSの研究員(ファン)とは異なるファン層を獲得。わずか半年の期間で全国ツアーを軒並みソールドアウトさせるほどのグループに成長した。
音楽ナタリーではアイナ・ジ・エンド、モモコグミカンパニー、ハグ・ミィ、セントチヒロ・チッチと新メンバーのハシヤスメ・アツコ、リンリン、そしてプロデューサーの渡辺淳之介にインタビューを実施。この半年間の活動を振り返りつつ、メンバーそれぞれの現在の心境、そして最新アルバムに込めた思いを語ってもらった。
取材・文・撮影 / 古川朋久
もっと上を目指すしかないと思ってる
──前回のインタビューで皆さんは、BiSHは“BiSをもう一度始める”というコンセプトのもと結成されてデビュー時から注目度も高く、今後の活動に対して希望と不安があると口にしていました(参照:BiSH「Brand-new idol SHiT」インタビュー)。あれからおよそ半年が経って今の状況は率直にどうなのかなと思いまして。
セントチヒロ・チッチ すべてにおいてスピードが速かったです。ライブのチケットがすぐにソールドアウトしていく感じとかシングルやアルバムのリリースするタイミング、新メンバーが入るタイミングとか。もっとスローペースでじっくり行くのかなって思っていたので、まさかこんなに目まぐるしいとは。
ハグ・ミィ とにかくがむしゃらに活動するしかなくて、時間の感覚がよくわかんなかったです。気付いたらもう年末か、というのが正直なところです(※取材は12月中旬に実施)。
──渡辺さんとしてはどうですか? 半年後にはこうなっていたらいいなという未来像を描いていたと思うんですが、当初の予定とも変わってきているのでは?
渡辺淳之介 完全に違いますね。
──それは例えばどんなところで?
渡辺 僕、全然そんなふうには思ってなかったんですけど、メンバーのことを「かわいいよね」って言われるんですよ。意味わかんないじゃないですか?
──そこに関しては「はい」って言いづらいんですが(笑)。
渡辺 僕の中ではビジュアル的にもBiSとそう変わりはないと思っていたんですよ。でもどうやらそうじゃないぞと。顕著な例でいうと、うちの親父はBiSのときに「全員ブスだな」って言ってたんですよ。でもBiSHはチッチを推してるくらい好きみたいで。
チッチ え、そうなんだ(笑)。
渡辺 で、BiSHの曲も全部覚えてて。BiSのときは一応義務でライブを観に来てくれてたんですけど、BiSHは言わなくても毎回通ってますよ。先日も隣で一緒に観てたら「そろそろ『BiSH-星が瞬く夜に-』の頃だな」とか言い出して。こいつヤベえなと思って。
──お父さんがハマるほどの魅力がBiSHにはあるんですね。
渡辺 動員に関しても順調すぎて、当初思い描いていた泥臭いストーリーで駆け上っていくみたいなものは一切なく。予想と違いますね。いい意味で裏切られた感じはすごいあります。
──渡辺さんとしてはもっと時間をかけて一歩一歩進んでいくストーリーを考えていたと?
渡辺 もちろんです。動員も最初は大変だろうから100人満たないようなライブハウスから始めて、次の段階で下北沢SHELTERでやって、そこが形になってきたら渋谷のWWWで……という感じで長期的なプランで考えていたんですけど、最初のワンマンをやった中野heavy sick ZEROから信じられないくらいバーストしちゃって。
──変な話、BiSのときのように手の込んだことをしなくてもお客さんが集まっちゃう状況になってますよね。
渡辺 だから困ってるというか。最初の段階でもう観れないお客さんが出てしまっているのはマズイなと。観てもいないのにお客さんが離れていってしまうのは避けたかったので焦りました。
──結成から1年経ってないのに、確かにこのスピードは速いですね。
チッチ むしろ私たち、追い付けてないんじゃないかという。ライブ会場の大きさに対して積み重ねてきたものがまだ浅いと思うし、完成度としても2、3年やってるグループと比較されちゃうと「あれ?」って思う人もいるのかなって。実力が伴っていない部分もあると思うので、なんとなく盛り上がってるから観に来たけどもういいや、とか思われちゃったら悲しいなって。
──ライブ会場が次々とソールドアウトしてうれしい反面、プレッシャーもすごいと。
アイナ・ジ・エンド ヤバいですね。私は以前の音楽活動と比べてもすごいな、恵まれてるなと思うことが多くて。会場を押さえてもらえることも感謝だしチケットが全部売れちゃうなんてことも信じられない。ここから落ちてしまったらって考えると怖いけど、ネガティブなことばかり考えても仕方ないと思うので、私はもっと上を目指す気持ちでいますよ。
BiSHという存在が面白くない
──当時BiSを応援していた研究員(BiSファン)はBiSHにも付いてきてる感じですか?
渡辺 いや、まったく付いてないと思います。
──ということはまったく別のファン層が付いてると? 大勢いた研究員がみんな付いてきて結成初期の段階から今の盛り上がりがあるのかなと思っていたのですが。
渡辺 僕もそう思っていたんですけど、実際はそうじゃなくて。なんていうか研究員はみんなひねくれてるんじゃないですかね(笑)。
チッチ みんなBiSとの思い出が大事なんだと思いますよ。だから急にBiSHって言われてもな……っていうのはあると思うし、私たちに付いていってBiSとの楽しい思い出を忘れてしまうのも悲しいんだと思います。
──研究員ってロマンチストが多いんでしょうか。
渡辺 僕が思うに、まあ素直にBiSHという存在が面白くないんだろうなと。BiSは彼ら研究員と一緒に作ってきた、盛り上げてきたグループだったと思うんですよ。でもBiSHなんてものを渡辺が勝手に始めて、そんなのに乗れるかっていうことなんじゃないですかね。 だから意地でも行かない、って感じなのかなって。
──でも研究員がまったくいない中、各会場が早期にソールドアウトというこの状況はすごいですよね。まったく違うファン層を獲得してさらに加速度的にファンが増えてるのは、今のアイドル業界でもあまり聞かないですし。
チッチ そもそもアイドルオタクじゃない人が多い印象です。歴として浅いというか、アイドル現場自体初めて来たっていう人も多いよね。もちろんほかのアイドルから流れてきた人もけっこういますけど、それよりもバンドが好きだけど来てみたという人が多い。
モモコグミカンパニー BiSのライブに行ってた人もたまに来るんですけど、そこまでどっぷり浸かる前に解散しちゃったみたいで。BiSにのめり込む時間がなかった人がBiSHで始まる、みたいなこともあります。
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収録曲
- スパーク
[作詞:JxSxK / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:松隈ケンタ×田仲圭太]
- BiSH-星が瞬く夜に-
[作詞 BiSH×JxSxK×松隈ケンタ / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:松隈ケンタ]
- MONSTERS
[作詞:ユカコラブデラックス / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:井口イチロウ]
- Primitive
[作詞:ハシヤスメ・アツコ×JxSxK / 作曲:井口イチロウ / 編曲:井口イチロウ]
- beautifulさ
[作詞:リンリン / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:田仲圭太]
- OTNK
[作詞:竜宮寺育 / 作曲:松隈ケンタ]
- 身勝手あいにーじゅー
[作詞:ハグ・ミィ / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:田仲圭太]
- デパーチャーズ
[作詞:モモコグミカンパニー / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:井口イチロウ]
- ウォント
[作詞:モモコグミカンパニー / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:井口イチロウ]
- サラバかな
[作詞:竜宮寺育 / 作曲:慎乃介(蟲ふるう夜に) / 編曲:松隈ケンタ×田仲圭太]
- ALL YOU NEED IS LOVE
[作詞:BiSH×松隈ケンタ×JxSxK / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:松隈ケンタ]
- DEAR…
[作詞:モモコグミカンパニー / 作曲:松隈ケンタ / 編曲:松隈ケンタ×田仲圭太]
- BUDOKANか もしくはTAMANEGI
[作詞:セントチヒロ・チッチ×松隈ケンタ×JxSxK / 作曲:松隈ケンタ / 編曲 松隈ケンタ×佐藤カズキ]
BiSH(ビッシュ)
アイナ・ジ・エンド、モモコグミカンパニー、ハグ・ミィ、セントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコ、リンリンの6人からなるアイドルグループ。BiSを作り上げた渡辺淳之介と松隈ケンタが再びタッグを組み、彼女たちのプロデュースを担当する。自らを“新生クソアイドル”と称し、「ファンの総称は“清掃員”」「ライブの写真撮影は可能。なお録画、録音は禁止」「自由。ただしほかのお客さんの迷惑になる行為は禁止」という“クソアイドルの3箇条”を4月30日に東京・TSUTAYA O-nestで行ったライブで発表した。2015年5月27日に1stアルバム「Brand-new idol SHiT」をリリース。同年5月には東京・中野heavy sick ZEROにて初のワンマンライブ「THiS IS FOR BiS」を開催し、以降のライブは各所でソールドアウトを記録する。同年10月より初の全国ツアー「BiSH Eden of Sorrow Tour」を行っており、1月19日にツアーファイナルの東京・LIQUIDROOM、1月30日に追加公演の東京・ディファ有明に挑む。2016年1月に2ndアルバム「FAKE METAL JACKET」を発表する。