BiSが現体制第2弾となるニューシングル「LAZY DANCE」を11月8日にリリースする。
BiSは5月に中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES、THE SPELLBOUND)をプロデューサーに迎えた現体制第1弾シングルを発表。そしていよいよ発売となる「LAZY DANCE」は “ロックスター”の愛称で知られるフルカワユタカ(DOPING PANDA)をプロデューサーに迎えて制作された新作となっている。
音楽ナタリーではレコーディング以来の再会となるBiSとフルカワに取材。フルカワがBiSに関する事前情報をあえて頭に入れずに制作したという「LAZY DANCE」を、メンバーはどう受け止めたのか。
取材・文 / 森朋之撮影 / 塚原孝顕
実はDOPING PANDA「Hi-Fi」のセルフオマージュ
──BiSのニューシングルの表題曲「LAZY DANCE」、カップリング曲「なまえをよんで」は、フルカワユタカさんの作詞・作曲・プロデュースによる楽曲です。まず制作にあたって、どんなイメージがあったんでしょうか?
フルカワユタカ(DOPING PANDA) 僕はアイドル全般に精通していなくて、アイドルの楽曲に対するイメージもなかったんですよ。ただ、前回のシングル(「イーアーティエイチスィーナーエイチキューカーエイチケームビーネーズィーウーオム」)のプロデュースが中野雅之さんということだったので、ダンスロック的な楽曲を求められているのかなと。これまでのBiSの楽曲を聴くと意識してしまいそうなので、あえてまったく聴かずにデモを作りました。スタッフ側からは「キラキラしたダンスロック」という要望があって。「LAZY DANCE」は、「Hi-Fi」(DOPING PANDAの楽曲)のセルフオマージュなんです。リフや構成はほとんど同じで、中身だけを変えたというか。そうすることで僕に求められていることからもズレないし、面白いかなと。
──あえてBiSの情報を入れず、フルカワさん自身の個性を押し出した、と。
フルカワ はい。彼女たちのパーソナリティや歌声も含め、ほとんどデータを入れずに書いたので。どれくらい歌えるかもまったく知らなかったです。
トギー(BiS) そうなんですね! 「LAZY DANCE」のデモを聴いたときは、すぐに踊り出しました(笑)。ポップでさわやかな印象もあって、「どういうふうに歌おうかな」とすごく考えて。セットリストにこの曲が入ると、ライブの雰囲気をバーンと変えられそうだなという感じもありました。
ヒューガー(BiS) 歌もギターの音も全部カッコよくて、曲をいただいたときから体が勝手に動き出してノリノリになってました(笑)。
シオンエピック(BiS) 曲名を見たときに「『LAZY DANCE』って、“怠惰なダンス”なのかな?」と思ったんですけど、聴いてみたら楽しげな曲だったので、「お!」ってなりました。
トギー 「お!」って?
シオン ギャップではないけど、最初の印象とちょっと違った。そこから「LAZY」の意味ももっと考えました。
ナノ3(BiS) メンバー全員、ほぼ同じタイミングで曲を送っていただいたんですけど、次の日にはみんな口ずさんでました。1回聴くだけで耳に残るくらいポップな曲だなって。
イコ・ムゲンノカタナ(BiS) すぐ誰かが歌い出しちゃうから「情報が漏れちゃうから、街なかで歌っちゃダメだよ」とみんなで言ってて(笑)。明るくてカッコよくて、何回も聴いていました。
クレナイ・ワールズエンド(BiS) 明るさの中にかわいさも含まれていて、最初に聴いたときからお気に入りになりました。何回も再生してました。
フルカワ そうか、皆さんにとって明るい曲なんですね。歌詞も曲も、どちらかというと暗いと思ってたんだけど。
ナノ3 今までのBiSにはない明るさというのかな。
トギー たぶん今までのBiSの曲が暗すぎるんだよ。
ナノ3 歌詞も前向きだなと思っていて。この6人の新たな一面を見せられる曲をいただけてすごくうれしかったです。
──歌詞に関しても、BiSのスタッフ側とやり取りはあったんですか?
フルカワ いえ、まったくないです。女性目線っぽい内容にはなってますけど、あくまでも自分らしい歌詞というのかな。喜怒哀楽じゃないけど、表と裏があるような歌詞になっていると思います。あと、恋とか愛みたいなことにも引っかかる感じになっていて。直接的な恋愛だけではなくて、例えばファンと自分もそうだし、音楽と自分だったり、ギターと自分だったり。そういう要素は「LAZY DANCE」にも入れてますね。
トギー 最初は「前向きだな」と思ったんですけど、何回か聴いていると、印象が変わってきたんです。明るいだけの人生を歩んできた人の前向きさではなくて、すごくつらいことも経験している人の言葉が詰まってるなって……。
──自分たちと重なる部分もある?
トギー BiSと重なるというより、自分の人生に重ねていた感じですね。「生まれ直せれば自由になれるかな」もそう。BiSに入る前は環境のせい、周りのせいにして、「自分がやりたいことができない」と思い込んでいた時期があって。その頃を思い出す歌詞だなって思いました。
クレ 「最低な嘘と愛を抱きしめ / 私は歩く」という歌詞には、決意を感じました。この歌詞があることで、サビのフレーズ(「これから君を迎えにいくよ / やめないで LAZY DANCE / 未来はそこにある」)の印象がポジティブに変わっていくというか。
この曲を歌うBiSがヒーローに見えたらいい
──カップリング曲の「なまえをよんで」については?
フルカワ この曲も自分が得意なことをやってますね。ロックなんだけど、リズムがハネていて。テンポ感を含めて、自分らしい曲だと思います。歌詞についてはちょっとだけテーマがあるんです。
トギー どんなテーマですか?
フルカワ ネットの誹謗中傷ってあるじゃないですか。そのことを念頭に置きながら、「誰に何を言われても、自分は奪われない」ということを書きたくて。ネットを見ていると嫌な気持ちになることが多いので、それを浄化できるような歌詞にしたかったのかな。結局、関係ない人が勝手なこと言ってるだけだし、この曲を歌うBiSがヒーローみたいに見えたらいいなと。
──BiSが歌うから書けた歌詞なんですね。
フルカワ いや、そうは言ってないです(笑)。
トギー 自分の曲じゃないからですか?
フルカワ そうかもしれない。自分で歌うと照れくさいというか、偽善っぽくなる気がして。自分以外の人に歌ってもらうことで、それがなくなると思うんですよ。「LAZY DANCE」もそうですけど、普段は書けないところまで手を伸ばせたのかもしれないですね。
ヒューガー 「なまえをよんで」の「傷だらけの心で笑ってる」という歌詞を見たときに、私もネットのことを思い浮かべました。私は何回もWACKのオーディションを受けて、2年くらいかけてBiSに入ったんですよ。そのオーディションがネット配信されていたから、心ないことをSNSでめちゃくちゃ書かれて。もちろん傷付くこともあったんですけど、あきらめずにやってきて……。なのでこの歌詞を歌うときは、すごく気持ちが入ります。
フルカワ すごくわかります。俺もいろんなこと言われてきたし、DOPING PANDAの再結成のときですら叩かれたので。
トギー え?
フルカワ もちろんあるんですよ、そういうことは。「昔のほうが声出てた」みたいなことを言われたりね。「なまえをよんで」は自分のムカつきも含めて、今の時代に向けて書いているところもあったので、皆さんに刺さってくれたのはありがたいです。
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フルカワが知らなかった“すごい世界”