BiSが5月26日に両A面シングル「TOUCH ME / LOVE」をリリースする。
音楽ナタリーではシングルの発売を記念して、メンバーにインタビュー。3度目の緊急事態宣言発令により、ロックフェス「ARABAKI ROCK FEST.20th×21」ならびに東北ツアーが開催見送りとなった今、4人に収録曲への思いを聞いた。また新曲のミュージックビデオにネオ・トゥリーズの幼少期の映像が使われていることから、「昔の自分に言いたいこと」というお題をメンバーにぶつけた。さらにシングルの初回限定盤には今年1〜2月開催の全国ツアー「KiLLiNG IDOLS TOUR」ドキュメンタリーが収録されている。映像の見どころに触れつつ、当時の心境を振り返ってもらった。
取材・文 / 田中和宏 撮影 / 中野修也
「ARABAKI」中止を経て
──近況から聞かせてください。出演予定だった「ARABAKI ROCK FEST.20th×21」が中止になり、東北ワンマンツアーが延期になってしまいました。そんな中、BiSはTOSHI-LOW(BRAHMAN)さんの呼びかけにより実現した配信ライブ&トークイベント「THINK of MICHINOKU」にトップバッターで出演。BiSのパフォーマンスを約2万人が閲覧していました。
ネオ・トゥリーズ たくさんの方に観ていただけてよかったです。もともと「ARABAKI」はBiSにとって初のロックフェスになる予定だったんですけど、イベント自体が中止になってしまったので悔しかったです。
チャントモンキー 「THINK of MICHINOKU」では、本番前にTOSHI-LOWさんが「バンドだけがロックじゃないから」と声をかけてくれました。
トギー アイドル、バンド関係なく音楽でつなげていきたいという思いを話してくださいました。中止になってしまったけど、「ARABAKI」にアイドルが出るのは私たちが初めてのはずだったんです。「アイドルだから音楽を真剣にやってない」と認識されているんじゃないかと思ってしまう部分もあったんですけど、ロックバンドの方に「音楽やっていれば一緒だよ」と言っていただけたのが本当にうれしくて、自信が持てました。
ネオ うん。最初は不安や緊張感があったから、本当にありがたい言葉でしたね。
イトー・ムセンシティ部 ほかのバンドの方々に緊張を解いていただきました。RONZI(BRAHMAN、OAU)さんがいろんなバンドさんのところに連れてってくれて、「BiSって言うんだよ」と紹介してくれたんです(笑)。キヨサク(MONGOL800)さんとは番組のトークでもご一緒させていただいて、「いつかセッションをしたいね」なんて話をしましたし、サンボマスターさんと挨拶したら「TOSHI-LOWさん怖いでしょ」と気さくに話しかけてくださって(笑)。「出演者はみんな仲間」という雰囲気のイベントのトップバッターを飾れたのは本当にうれしいことで、気合いの入ったステージになりました。
──コロナ禍で活動がうまくできない歯がゆさはあると思いますが、新規ファンが増えているという実感はありますか?
ネオ あります。ライブ以外だと唯一リスナーさんとコミュニケーションを取れるのが私たちの場合Twitterになりますけど、WACKファンじゃない方がフォローしてくださったり、「THINK of MICHINOKU」を観てくださったあとにフォローしてくださったり。ミュージックビデオを観て反応してくださる方もいます。
トギー あと有線でBiSの曲を聴いてツイートしてくださる方もいて。曲を聴いてBiSを知って、実際に反応してくれるのがすごくうれしいです。
──3期BiSは2019年6月の始動からもうすぐ2年になります。5時間踊り続ける「CURTAiN CALL」のミュージックビデオ撮影や24時間イベントなど、これまでさまざまなチャレンジをしてきた皆さんですが、初期BiSの無鉄砲とも言える過激なプロモーションの方向性とは違うベクトルで進んできていますね。
トギー 今は昔より規制が多くなって、10年前OKだったことが今だったら怒られちゃう。でもなんでもやりたい気持ちはあるんですよ? 怒られないなら(笑)。
チャント 血糊ですらモザイクがかかることがありますからね、今は。
──自分たちで「これをやりたい!」と思うことはあるんですか?
チャント プロモーションよりパフォーマンスの話になってきますね。私は振り付けを考えるときには「この曲と言ったらこの振りだよね」って定着するようなものを作りたいし、「新しいものが一番だ」と思えるようにしています。自信を持ってそう思えるようになれたのは最近になってからです。
トギー 確かに今は楽しんでやってる感じがする。
──苦しそうなときもあった?
チャント 「イミテーションセンセーション」(2020年7月にゲリラ発売されたシングル)のあたりが特に苦しかった。渡辺(淳之介 / WACK代表)さんの意図が理解できなかったとき。
ネオ そのときの苦しみは、結束力を高めるきっかけになったよね。
──渡辺さんの指摘は具体的ですか? それとも抽象的?
チャント 「LOOKiE」(2020年2月発売の2ndアルバム)の頃は「カッコ付けるな」と言われて、どういう意味なのかと思ってました(笑)。最近になって、例えば「リズムの取り方が気持ち悪い」と言われたら、曲の歌詞やギターの音に合わせてた振りをドラムに合わせるとか、どうしたらよくなっていくのかがわかるようになりました。
イトー こういうことが言いたいんだろう、というパターンを増やしていく。言うなら渡辺さん研究みたいなところはあります(笑)。言われたことをちゃんと実行することが成功につながるというのは、ツアーやライブで感じています。
トギー でも理解するまでが本当に長かった。もうすぐ3年目に入るのにやっとわかってきた感じ。
ネオ これでも途中だしね。
過去は変えられないけど
──「TOUCH ME」は、去年の7月にカセットテープでゲリラリリースされた「イミテーションセンセーション」のB面にシークレットトラックとして入っていた曲ですよね。
トギー そうです。ダウンロードとかもできなかったから、これまでカセットデッキを持っている人かライブに来た人しか聴けなかった曲なんです。
ネオ 初披露したのは去年の10月18日(愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホールで行った有観客ワンマンライブ「KiLL YOur WiNTerxxx -but fall-」)ですね。
トギー ちょうど無観客ライブしかできなくなった頃にできた曲で、過去の後悔を歌っています。この曲をいただいて思い浮かんだのは研究員(BiSファンの呼称)のみんなでした。「もう少しだけ自分が 手を伸ばせたとしたなら」といった歌詞もそうだし、この曲は当たり前のようにライブができていた日々がすごく大事だったということを思い起こさせてくれました。
ネオ 研究員を含め、大切な人が頭に浮かぶ曲で、聴く人によって思い浮かべる大切な相手や思いがいろいろあるみたいです。今大切に思っている人をより大切にしようと思ったり、今を未来につなげてくれたり、過去をいい意味で変えてくれる曲でもあるのかなって。
トギー 「過去は変えられない」って言いますよね。確かに起きてしまったことは変えられないけど、過去への思いは変えられる。どうでもいいと思っていた日常、つらかった日常を思い返してみたらいい部分に気付けるかもしれない。この曲は当たり前じゃなかったことの大切さを感じて、前に進めるように思います。
チャント 歌詞は誰もが持つ後悔の気持ちにハマるはず。サビ終わりの「輝く夜空残酷で綺麗」では、いろいろ思い返して空を見上げているシーンが浮かぶんです。後悔があっても、それすらも必要なことだったと思えるように今を生きたいっていう、そんな気持ちで歌ってます。
──「輝く夜空残酷で綺麗」はいろんな捉え方があるように思っていて、最近の状況の比喩にも感じました。世の中がどんなに混乱していても、夜空は変わらず綺麗という。
トギー あー。私は自分と夜空を比べてしまったら、自分がすごくちっぽけで汚い存在だから夜空に対して「綺麗」のひと言じゃなくて「残酷で綺麗」になるのかなって思いました。
チャント 確かにいろんな解釈ができますよね。「にやけてる朝残酷に綺麗」という一節にしてもそう。私の場合は太陽に嘲笑われているような気分にもなるときがあるから。
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愛されてたんだな