アヘ顔の練習しといてね
──新作には先行曲に加えて、「DiRTY and BEAUTY」「I WANT TO DiE!!!!!」「GETTiNG LOST」という3曲の新曲も入ります。
トギー 「DiRTY and BEAUTY」は、演奏が激しくてめちゃくちゃカッコいいメロコア曲です。でも歌詞がすごくかわいい。「君でないと 何にもできやしない」「狂っちゃいそうなんだ だからそばにいて」とか。一見、女子高生の恋愛ソングみたいな歌詞なんですけど、カッコいい曲調とのギャップを含めて好きな曲です。
チャント この曲は「日焼け止めのCMに使ったらいいのに」なんて思うくらい、サビがさわやかです(笑)。
ネオ 明るいけど明るすぎず、ロック要素も入っていて。でもリズムの取り方がけっこう難しい曲です。サビは特に難しいんですけど、逆にそれがクセになってすごい聴きたくなる曲だし、私はこの曲が一番好きです。
トギー 「I WANT TO DiE!!!!!」は今作のリード曲で、ミュージックビデオも撮りました。
イトー 新潟の佐渡島に行きました。
チャント 桃太郎の格好をしています(笑)。
ネオ これ、MVを一見しても桃太郎に見えないよね(笑)。
──トギーさんは……豚ですか?
トギー 犬、犬! 4人で犬と猿と雉と桃太郎ですよ! 前回のツアー衣装を着ているので、そこで見分けがつくと思います。
──BiSのMVと言えば「BiS-どうやらゾンビのおでまし」でゴミ山ロケ、「STUPiD」でうんこまみれなどありましたけど、今回はどんなことを?
チャント アヘ顔をさせられました(笑)。
トギー MVを撮る前に監督さんに「アヘ顔の練習しといてね」と言われて、当日行ったら、「首を絞められるシーンでアヘ顔する」みたいな撮影で。苦しいを通り越して気持ちよくなってるアヘ顔でした。歌詞の題名が「I WANT TO DiE!!!!!」で「私は死にたい」だから、アヘ顔して死ねたみたいな。
イトー エクスタシーを感じてるような顔をしてほしいって。イク、イクって顔。「これホントにMVなのかなあ」みたいな気持ちで撮られてました(笑)。
ネオ ハメ撮りかって感じ(笑)。
イトー ノリノリの撮影ではあったんですけど、モンちゃんは濡れて大変だったよね。
チャント 波打ち際で全身ビショビショになって寒かったよ。波が首のあたりまで来るところで鬼さんに首を絞められて、アヘ顔するっていう(笑)。私、アヘ顔がうまくできなかったです。そもそも“アヘ顔”って言葉自体、聞いたことなかった。
トギー あ、知らなかったの?
イトー ないでしょ。モンちゃんだったらないよ。私は15歳のときから知ってるけど(笑)。
チャント 「モンちゃんだから」じゃないでしょ? 知らないよ、普通。
ネオ 中2くらいから知ってたけどな。
チャント マジで!? じゃあ福岡であんまり有名じゃないんだ!
イトー モンちゃんは真面目に勉強してきただろうし、煩悩とか下ネタにまみれて検索することがなかったからかも(笑)。アヘ顔だけのMVみたいになってますけど、MVとしては「やられてやり返す」っていうテーマがあるんですよ。鬼に牢獄に入れられて、そこで1回死ぬけど、みんな痙攣したあとに生き返るんです。で、その撮影の次の日に特殊メイクをしていただいて、私たちが“チーム桃太郎”になって(笑)。その格好で鬼に仕返しに行くのが最後のシーンです。鬼との戦闘シーンでは、MVでは使われてないけど暴言を吐いてました。
トギー 日頃の怒りを鬼にぶつけました。とても聞かせられないようなピー音が入るような。
──演技を見て、皆さん役者だなあと思いました。
ネオ アヘ顔はティ部が一番うまかったですよね。
イトー 「イトーは“アヘ顔”顔だよね」って、監督にも言われました。
トギー 「トギーの顔は面白いから、どうやらせるか難しいんだよね」みたいなことも言ってました。
イトー 最初トギーに関してはアヘ顔させない可能性があったんですよ。監督のエリザベス宮地さんと山田健人(yahyel)さんの間で、「トギーの顔が面白すぎて笑っちゃう。アヘ顔ダメかも」みたいな雰囲気になってたらしく(笑)。でもトギーはいい感じに狂った顔をしてました。
弱さを受け入れる強さ
──「GETTiNG LOST」はしっとりした楽曲になってますね。
トギー 松隈さんのディレクションが面白かったです。6/8拍子がBiSの曲で初めてだったし、なじみのないリズムだったので最初は歌うのが難しいと思ったんですけど、慣れたらしっとりしていてクセになります。
チャント レコーディングのときに松隈さんがすごく具体的な指示をくださって。「儚い感じで歌ってほしい」だけじゃなくて、「下北沢に上京してきて、1人部屋のベッドの隅で窓の外を眺めているような感じで歌って」と言われて。それを想像しながら歌いました。この曲、最初は普通にバラードだと思ったんですよ。そしたら松隈さんに「これはハードコアだよ」と言われて、驚きました。「B'zみたいな感じの曲だから」と。
──曲調で言えばロックバラードになると思いますけど、音楽ジャンルにとらわれない松隈さんなりの解釈があったのかもしれませんね。
チャント それを踏まえてよくよく聴いたら、1980年代あたりの懐かしい感じがするなとも思いました。しかも歌詞が「こんなはずなかった 僕は素敵だったんだ」っていう、そこそこ長く生きてきた人がたそがれてそうな歌詞だから、今の30代、40代あたりの人に聴いてもらいたいです。
イトー 私はけっこうキツい歌詞だなって感じた。普通に生活している人が「俺ホントに今やりたいことやってんのかな」と思ってしまうような歌詞でもあると思ったから。「ホントはああいう仕事に就きたかったのに、なんで今こうなんだ」と思っちゃうような。理想と現実とのギャップに気付かされる曲だからこそ、自分と向き合える歌詞だなと強く思ったし、めちゃくちゃ心に刺さってきます。歳を重ねた未来でこの曲を聴いたとき、涙しないようにがんばりたいです。
チャント 私はこの曲を聴いて、BiSのメンバーになったばかりの時期と今を比べちゃいました。あの頃は何も知らないという意味で無敵だったんですよ。むしろ今のほうがもろくなっている部分があるような気がして。BiSが始まったときは今よりめちゃくちゃ怒られてたけど、何も考えずがむしゃらに走っていただけだったなと。そんな時期のこともちょっと思い出しました。
ネオ 私の場合、この歌詞のようなことを常に思っている気がします。BiSのときもそうだし、BiSになる前からずっと頭のどこかにいる言葉たちのようだなって。「わからないだけど 求め続けてたんだ」「こんなはずなかった」「いやんなるな 繰り返すのか」とか。自分はもう根本的にはポジティブに生きることができないから、この歌詞を見て共感して。説明の難しい感情が歌に込められていて、胸がギュッてなりました。
トギー 弱い部分って人に見せたくないけど、それをさらけ出す勇気を出したら共感が生まれるというような。
ネオ 確かに。私は周りの人たちが明るい感じだから、「ポジティブに生きなきゃいけないのかな」「本当はこういうときに嫌とか思っちゃいけないんだろうな」みたいに思っちゃう瞬間があるんですよね。でもこの歌詞を見て「弱くても、人と違っても、無理してそっちに合わせようとしなくていいのかな」と思えました。自分を殺さないでいいって背中を押してくれるし、自分に寄り添ってくれる曲だなって。
曲を聴いてもらえるならなんでもする
──改めて、第3期BiSが始動して1年が経ちました。1期、2期とはスタート地点の異なる3期BiSですが、過去のBiSをトレースしてもっと過激であったほうがいいと考えるのか、もっと音楽で注目を浴びる方向でやっていきたいのか、正直なところどうなんでしょう?
トギー たくさんの人に曲を聴いてもらえるためならなんでもしたいとは思ってます。手段がどうであれ、それに結果がつながれば。
イトー そうなんだよね。やったことないことはやってみたいってなんとなく言ってはみるものの、それが何になるかは1年経った今も正直わからなくて。それでも全部やってきたし、どれも何かのためになったと思っています。CARRY LOOSEと対決したマラソンもそうだし、年末の24時間イベントもそう。
トギー 今回の「CURTAiN CALL」MV撮影で100回連続踊るとか、ゲリラリリースとかも、ほかでやらないようなことができていると思います。
──皆さんキツいことをたくさん乗り越えてきましたね。
チャント 「CURTAiN CALL」のMV撮影のときに「大丈夫、もうこれ以上キツいことないから」って何回も言われたんです。でもマラソンのときにも言われたし、24時間イベントでも言われた(笑)。
イトー ホントそう。
トギー 「もっとキツいのあるやないかーい!」って(笑)。
チャント だからまた、何かしらキツいのがまた来るんだろうなって(笑)。
トギー もう何が来てもやってやろうっていう覚悟はできてますよ。
イトー 泳がされるのかな、次は(笑)。
ネオ トライアスロンとかだったらヤバい。
イトー 「アーティストとは?」って思うこともあるけど、BiSはいざとなったらやるんです。
──第3期BiSオーディションの応募条件が「第1期BiSの活動を理解できる方」だったこともあって、破天荒な活動を覚悟していたとは言え、いきなりマラソンとか、101回も同じ曲を踊るなんてなかなかできないですよ。
ネオ 101回連続で踊るのは正直嫌だったけど、「本気でやりたくない!」とは思わないんですよね。たぶん普通の人だったら「本気でやりたくない!」って思うはずだけど。
イトー 「お前たちバカなの?」って思われるぐらいのことをやれたほうが、確かに楽しいかもしれない。
チャント 過去には嫌だから辞めるみたいな脱退理由があったじゃないですか。今の4人にそれはないんじゃないかなって思います。
ネオ 本気で「これは無理です」みたいなのはないからね。
トギー 「それは無理です、辞めます」はないです(笑)。
イトー ないですね。「頭おかしいんじゃないですか!?」って言いはする。だってマジで頭おかしいと思ったもん(笑)。
チャント キツいものはキツいから(笑)。でもBiSのためと思って、結局やるみたいな。
夢の舞台に向けて、一歩ずつ
──最後に、元BiSメンバーでもある苺りなはむさん率いるCY8ERが、最初で最後の日本武道館ライブを2021年1月に行って解散するという発表がありました。皆さんはLIQUIDROOMで「武道館に立ちます」と宣言しましたけど、改めて武道館について思うことは?
トギー そこが最終目標じゃないんですよ。りなはむさんのグループはそこで解散しちゃうけど、私たちはもし立てたとしてもそこで終わりじゃない。
イトー 通過点。
トギー そう。今できるのは、目の前にあることを全力でやること。それを積み重ねていけば、いつかは立てるのかな。ずっとあきらめないし、立ってやろうとはずっと思ってます。
ネオ 武道館に行くことが目標ではあるけど、段階がいろいろあるから。
チャント 武道館のことを毎日思ってるということではなくて、武道館を見てるけど、まだ遠くて見えてないみたいな。いずれは立ちたいし揺るがない目標ではあるけど、今の段階では、ひどい言い方をするなら眼中にないというか。目の前のことが大事だって思ってます。
イトー もっともっと色々な人に好きになってもらえないと、たどり着けないから。
ネオ そのためにも1つひとつのことをしっかりやりたいね。