終わってほしい? 終わってほしくない?
──6月には新作のラストナンバー「CURTAiN CALL」がまたしても“インターネット上のどこか”で先行販売されました。この曲は6月20日に開催された無観客ライブ「HEART-SHAPED BiS IT'S TOO LATE EDiTiON NO AUDiENCE LiVE」でもラストナンバーでした(参照:BiSがステージに帰って来た!無観客ライブで持ち曲30曲をノーMCで全力披露)。お客さんがいないところでこの曲を歌って、どんな気持ちになりましたか?
トギー この曲があれば、ライブ後の余韻により浸れるだろうなって思います。
イトー しばらくライブができなかったので、その日が本当に楽しみでした。30曲をノーMCでやるということで不安もありましたけど、最後にやった「CURTAiN CALL」が私の気持ちそのままで。こんなに貴重な日があってうれしいし、歌詞にあるように「終わってほしくないな」って。ライブがこのあとまたできないかもしれないということもあって、けっこう気合いが入りました。
──ネオさんはどうです?
ネオ 私はあんまりそう思わないです。この歌詞に対して共感できないんですよ(笑)。「もう終わり?? 足りないよ。。。 まだまだ歌えるから」って歌詞にありますけど、私はライブの終盤はライブを終えたいと思いながら歌っていたので。でも「もう歌いきって終わりたいよ」と思うライブ終盤に「まだ終わりたくない、もっと歌いたい」と歌っていて……。
トギー でもライブで歌って、気持ちに変化があったんでしょ?
ネオ そうそう。こういう歌詞をいただいて、歌っているうちに気持ちに変化がありました。ダメな自分が見えたというか。無観客ライブの最後に「まだ歌いたい」って初めて思いました。そういう心の変化が生まれた曲ですね。
チャント 自分がお客さんだったら、この曲が最後に来たらうれしいだろうなと思います。この時間がずっと続けばいいのにって思うようなライブの終盤、気持ちが高まっていった最後にこの曲が来たら、感情が爆発するだろうなって。
もう2度とやりたくない「101回目のカーテンコール」
──「CURTAiN CALL」はMVも公開されました。動画タイトルは「101回目のカーテンコール」で、特に詳しい説明がないまま観たんですけど、なんだか皆さんヘロヘロで目が潤んでますよね。
チャント 101回踊ったんですよ……。
トギー で、その最後のテイクがMVに使われてるんです。5時間踊り続けました。
イトー もう2度とやりたくないです……。
トギー 90回目から大きい会場の名前が書かれたカンペが順番に出て。その会場をイメージしろってことだったと思うんですけど、100回目は「武道館」。100回踊ると聞いてたから、100回目で「終わったあー!」って思ったんだけど……。
イトー 101回目の「CURTAiN CALL」がまた流れ出したかと思ったら、「解散ライブ」ってカンペを出されて。私は101回目がつらいというよりは「解散しねーよ! 死ねよ!」って気持ちになっちゃって(笑)。「最後にそれ!?」と思いながら悔しくなってきた。
トギー たぶん全員違う感情だったよね。
イトー 私はムカついちゃった。解散が想像できないもん。
トギー 確かに想像できないね。普通にカンペのお題が「解散ライブ」なだけだから、私は「解散したくなーい、終わりたくなーい」みたいにつるーんと終わったけど。
チャント トギーはめっちゃ元気だった。元気すぎて怖かった(笑)。
イトー 化け物だなって思いました。
チャント トギー、始まる前に栄養ドリンクとかめっちゃ飲んでて、「ちょっと触って」って胸のほうに手をあてたら心臓バクバクになってて大丈夫かって思った。
トギー 死ぬ寸前のハイでした。マカとか元気になりそうなのをいっぱい摂りましたけど、やっぱりなんでもやりすぎはよくないんだなあということに最近気付いてきました。
ネオ やっと?(笑)。
トギー 1年間続けてやっと気付いた。
イトー ホントに気を付けて(笑)。BiSのためにも。
トギー ネオもけっこう元気だったよね?
ネオ 1回ぶっ倒れるかと思ったけど、大丈夫だった。
──ともあれ無事でよかったです。先日の無観客ライブだけでなく、昨年12月には24時間ライブも経験してますし、実にタフだなと。
トギー いやいや! ヘトヘトでしたよ。
──なかなかできないと思います。フィジカル的にもメンタル的にも。
イトー あきらめたくなる気持ちはわかりますけど、そうはならなかったですね。
トギー 確かに精神力で言ったら、誰も途切れなかった。
ネオ 体が追い付かないのはあったね。ティ部が特にやばかった(笑)。
イトー 私はサビの歌割がないのもあって、ずっとマイクを持って腕を振ってたら上がらなくなって(笑)。肩から胸筋にかけて途中から激痛。人生でこんなに胸がいらないと思ったのは初めてで、ちぎってしまいたくなるくらいでした。
トギー 「胸筋が痛い」と言ってて、それを聞いたうちらは「え?」って感じ。ほか3人には理解できない痛みがあったみたいです(笑)。
4人の思いが駆け巡った無観客ライブ
──無観客ライブの話に戻ります。30曲をぶっ続けでパフォーマンスするのはかなり大変だったと思うんですが、終演後の皆さんを見るに元気そうでした。
トギー 意外といけました!
イトー 脳は興奮状態だったけど、体はひさしぶりにすごいムチ打った感じがしました。終わったあとは心臓バクバクで、テンションは高くなってたけど「じゃあ走れ!」と言われたら何もできなかったはず。
ネオ 私は正直に言ってしまうと、活動している中で好きなことがライブしかないんです。なのでその日だけはしっかり楽しめましたし、がんばれました。もう1回やりたいなーみたいな。
トギー 終わったあと、誰か泣いてなかった?
イトー 私だよ。自分の体力に不安があったり、人と会えなくて落ち込みやすい時期だったりもあって。いろんな感情が全部ライブで放出できて、涙があふれた。実は自分の中で決めていることというか、自分はこういうライブがしたいという理想像があるんですけど、あの無観客ライブはそこに今までで一番近付けたなと。誰にも言ってないことだったんで、それを言葉にするのはまだちょっと難しいけど、ライブの最後の最後で感情があふれたのは確かです。
──以前インタビューでうまくライブができないことがあるとメンバーそれぞれ悔しさを吐露していましたが、その頃からアップデートできた実感はある?
トギー 表立った活動が減ってしまったぶん、練習時間をたくさん取ることができたし、今までで一番って言っていいぐらい通し練習もしました。不安要素がそんなになくステージに立てました。
イトー 不安と言えば「倒れちゃうかな?」くらい。あとは新曲の初披露があったので、その部分では緊張しましたけど。
ネオ どうなるか予測できないライブへの不安が、メンバーそれぞれあった。初披露する新曲が何曲かあるし、ライブができてないから体もなまってるし。しかも無観客ライブにどういう心情で挑めばいいかっていう不安もありましたけど、しっかり準備して臨めました。
チャント ダンスはめちゃくちゃ練習したから大丈夫だと思えたけど、歌が練習禁止だった時期が長かったのもあって、私は歌うことそのものが緊張しました。ライブ当日は歌の練習を本番2時間前からするようにしていたくらいなんですけど、大きい声を出す機会が減ってしまった分、歌に対しての不安が大きくて。その点ではお披露目ライブよりも緊張しました。
──そういえば、1年前の「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」で初ライブをしたとき、チャントさんは声が枯れてましたよね?
チャント 「TIF」のときは、ライブをするにあたっての知識がまったくなかったんです(笑)。「今日ライブだ」と思って、起きてすぐからずっと歌ってて、枯れちゃった(笑)。
トギー あのときはライブ前に何をしたらいいかわからなくて、みんな準備体操すらしてなかった気がします。そういう意味では1年の成長も見せられた無観客ライブだったと思います。
ネオの“泣き節”が生まれた理由
──7月には「イミテーションセンセーション」のカセットテープがゲリラリリースされました。演歌っぽい雰囲気のジャケット写真で、歌詞カードにはアルファベットが一切使われていないという遊び心のある仕様でした。
イトー 「DESTROY」の表記も「破壊」になっていたり、面白いなと思いました。「イミテーションセンセーション」は、歌の世界に主人公がいるとしたら、その人の弱さが全面的に出ている歌詞ですね。
トギー メロディも今までで一番ぐらいエモーショナルって言うのかな。はー、いい曲だなあって。
チャント 初めて聴いたとき、今までで一番好きな曲だと思いました。仮歌の時点で「なんだこの曲は!」って衝撃を受けたし、そのあとに渡辺さんの歌詞が入ったらもっと泣き曲になった。私はこの曲のすべてに共感できる。あと、ネオの歌い方でなんか泣きそうになる……。
イトー “泣き節”って言ってる人もいたね。
トギー サビの歌い方が、これまでにない初めての感じだよね。
ネオ 今にも泣きそうみたいな歌い方は初めてでした。私は普段ガーッ!と強めの歌い方をしちゃうんですけど、この歌詞に自分の気持ちを当てはめたら、ものすごく感情を込められたんです。私のいつもの歌い方じゃこの歌詞がもったいない、台無しになっちゃうなとも思ったんで、曲に対して感じたままを歌に込めることを意識しました。
──ディレクションを受ける前から、歌い方を変えようと思っていたんですか?
ネオ はい。普段の歌い方だと絶対に合わないと思って。
イトー ネオの歌声に情緒が出た感じ。
ネオ ああいう声で歌ったのはこのEPが初めてです。その曲に合わせて歌うことが意識できました、特に「イミテーションセンセーション」は。
次のページ »
アヘ顔の練習しといてね