BiS|「曲を聴いてもらえるならなんでもする」「こんなキツいこと2度とやるか!」限界突破し続ける4人に見る“BiSらしさ”

第3期BiSが2019年8月に1stアルバム「Brand-new idol Society」でデビューしてから1周年を迎えた。1stアルバムリリース前日にオリジナルメンバーが脱退、10月には加入直後のメンバーが突然脱退するという波乱に満ちた展開がありつつも、着実に実力を付けてきたチャントモンキー、ネオ・トゥリーズ、トギー、イトー・ムセンシティ部の4人。今年2月の東京・LIQUIDROOMでのワンマンライブを満員御礼で終え、「3期BiSは日本武道館に立つ」と、第1期から続くBiSの野望を実現させることを改めて宣言した。

コロナ禍により活動のメインであるライブ活動ができない中、BiSは8月19日に新作音源「ANTi CONFORMiST SUPERSTAR」をリリース。音楽ナタリーではメンバーにインタビューし、新作の聴きどころはもちろんのこと、3カ月ぶりの単独公演となった無観客ワンマンライブや“インターネット上のどこか”でゲリラリリースを連発した企画、ミュージックビデオの撮影エピソードなどの話題を絡めて現状を語ってもらった。また改めて日本武道館への思いについて問うと、意外な答えが返ってきた。

取材・文 / 田中和宏 撮影 / 中野修也

観客を前にした最後のワンマンライブから半年

──まず今年の2月から現在までを、時系列で振り返っていきます。「STAND BY BiS」ツアーファイナルとして2月に行われた東京・LIQUIDROOM公演が、現時点で最後の観客ありのワンマンライブでした。BiSと研究員(BiSファンの呼称)の興奮が追体験できるこのLIQUIDROOMのライブ映像が「ANTi CONFORMiST SUPERSTAR」の初回限定盤に入るということで、まずはメンバーの視点で見どころを教えてください。

イトー・ムセンシティ部

イトー・ムセンシティ部 自分たちが今までやってきた中で一番大きな会場だったので、照明、スモークとか演出面でも新しいライブの見せ方ができました。特に「DEAD or A LiME」のイントロで4人が順番に倒れてく部分があるんですけど、スポットライトが1人ずつに当てられていくところがカッコいいなって。

トギー あとCO2噴射とか特効もすごかった。「1,2,3!!!」「FUCKiNG OUT」「テレフォン」あたりで見られると思います。

ネオ・トゥリーズ 一番大きい会場でのワンマンは、お客さんがいっぱいですごい景色でした。一番後ろの人の顔まで見えたのがうれしかったです。映像でも迫力や熱気が伝わるぐらいのライブになったんじゃないかなって。

イトー 「STAND BY BiS」ツアーの地方公演では1人MCが多くて、公演ごとに交代して話してたんです。LIQUDROOMのツアーファイナルだけは4人全員がそのときの気持ちを順番に話させてもらって、最後にはトギーのカッコいいセリフで締めてるところも見どころかな。

トギー イトーさんが初めて言えた言葉もあったね。なんて言ったんだっけ?(※2019年8月公開の初インタビュー時、イトーは「ちんこ」と言えないことが判明。 / 参照:BiS「Brand-new idol Society」インタビュー

イトー ああ、なんて言ったんだ? それも観てみたらわかることだから(笑)。今まで言えなかった言葉を言わせていただきました。

トギー WACKの社是(「ちんこと言える世の中を。」)をね。

イトー ここでは言えないけど、必要に応じて……がんばれば言えるようになりました。

BiS

──3月には「WACK合同オーディション2020」の合宿でトギーさんが奮闘しました。

ネオ 合宿って3月か!

チャントモンキー めっちゃ前に感じるよね。

イトー トギー以外の3人で合宿期間中は一緒にずっといて、ほぼ24時間張り付いた状態でニコ生の合宿生中継見てました(笑)。

トギー そうだったんだ!(笑)

イトー そんなに連絡もしなかったしね。ダメかなと思う状況も観ていてあんまりなかったし。本当、「がんばれ!」ってめちゃくちゃ思ったときに送るぐらいで、あんまり口出しするのも違うと思ったから。

トギー あんまりグループのメンバーに連絡しないのってWACKの中でも珍しいほうだったと思います。ほかのグループはメンバー間でずっとLINEしてる感じしたから。

イトー その場にいないと気付けないことがあるんだとしたら、トギーはいろいろ気付けるだろうし。絶対にがんばれるだろうと信頼していたんですよね。

暗いニュースをあえて目にした

──4月には「IT'S TOO LATE」が先行配信されました。この曲の作詞はチャントさんと渡辺淳之介さんで、吐き捨てるような思いが込められていますが、どんなことを思って書いたんですか?

チャントモンキー

チャント これは曲を最初に聴いたときにすごくダークな感じだと思ったので、暗い気持ちを書こうと思ったんですけど……。

イトー 自分自身にあんまり暗い体験がないから大変だったんだよね?

トギー いっぱい調べたんでしょ? なんか暗い話を。

チャント 難しかった(笑)。暗いニュースとかを見て、思ったことを書いて、プラス渡辺さんがそのときの状況を踏まえて書き換えてくれました。

イトー でもモンちゃんのもともとの歌詞の主旨からズレないような感じで、代弁するように調節してもらったみたいです。

──歌唱面では、ロングトーンのハモりがBiSの魅力とも言える部分になっていると思います。「IT'S TOO LATE」では、例えばイトーさんが歌う大サビ前のロングトーンを残したまま重なるようにサビにつながっていくという構築美もありつつ、エモーショナルさが歌声から伝わってきました。今回はレコーディングの時点でこれまで以上に感情移入して歌っているように感じたんですが、どうでしょう?

トギー

トギー いやあ、その通りですね。1stアルバムのレコーディングはお客さんの前に出たことがない状況だったから、ライブを意識することもできなかったんですよね。もともと歌の経験もなかったので、曲に気持ちを……なんて考えてすらいなかったのかもしれない。ただ「一生懸命歌う」って感じ。

チャント 歌詞の意味まで考えて歌う余裕はなかったと思う。

イトー 最初はうまく歌えなくてすごい悔しかったし。最近は歌い方に関してだいぶ確立できてきた部分があるんです。マイクの前で松隈(ケンタ / SCRAMBLES)さんからの指示を待つんじゃなくて、自分が思う歌い方でまず歌う、みたいなことを全員ができるようにはなったかな。

チャント 「IT'S TOO LATE」だと、2番Aメロの「大人しくしてたなら 楽になれると?」というパートがもともとのメロディは1番と同じだったんです。レコーディングのときに松隈さんが歌詞を見て「え、これ博多弁やん!」ってなって(※松隈とチャントモンキーは福岡出身)。最初は1番と同じメロディだったんですけど、2番は語尾が上がりました(笑)。

イトー そこだけ音を博多弁に合わせるっていうね。

ネオ 歌詞に合わせるって、なかなかないのに。

イトー しかもなぜかこのパート、担当することになったのはモンちゃんじゃなくて私なんですよ。博多弁なんも知らないのに(笑)。

ゲリラリリース作戦を決行

──5月には新作にも入る楽曲「DESTROY」が“インターネット上のどこか”でゲリラリリースされました。解禁後、ファンが一斉にネットのどこで売っているかを探し始め、あっという間に売り切れたときの反響を皆さんもTwitterで見たと思うんですけど、斬新な販売方法で自分たちの楽曲がリリースされた心境は?

トギー みんなが楽しんで探してくれてるのを見ると、「やったあ!」と思いますね。

イトー ほかのグループのファンと思われる方も面白がってましたね。時期的にあまり外出できない人が多かったと思うんですけど、ネットで探すだけなら誰でもできるので、「何やってんだろう?」と関心を引けたのかな。「見つけた」ってだけで特別感があるし、255円だから、見つけたら買っちゃうだろうなって。

ネオ・トゥリーズ

ネオ 自分が普段外に買い物に行かないタイプなので、こういう企画はありがたい(笑)。自分がファンだったら絶対欲しくなる。

──「DESTROY」からはどんなメッセージを受け取りましたか?

トギー 私はこの曲を聴くと、めっちゃやる気が出ます。サビの「敷かれたレール壊し ギャンギャンならそう」なんてなかなか人に言われない言葉だけど、自分に言われてる感じがした。逆に言ってほしい言葉だとも思うから、人生の岐路に立ってる人が聴いたら「やってやるぞ!」って思える気がします。

ネオ サビの歌詞でドキッとしたよね。トギーが言ったところの続きで「うわべだけなら死んで欲しいです やるかやらないかとか 聞かないでおくれ 半端なためらい全員即死です」なんて、「わー他人事じゃないなー」って。うわべとか中途半端な気持ちじゃなくても、周りからそう見られる可能性もあるし、そういう面で引き締められるというか。