BiS|初々しさはもういらない、90年代オマージュにとどまらない実力勝負の2ndアルバム

BiSが2月5日に2ndアルバム「LOOKiE」(ルッキー)をリリースした。

今作はリード曲「BASKET BOX」をはじめ、モザイクのかかったジャケットアートワーク、アルバムタイトルに至るまで1990年代アメリカのパンクロックバンドを彷彿とさせるモチーフを取り入れつつ、かわいらしい楽曲や既発曲の現体制バージョンなど多彩な楽曲群で構成された全13曲入りの作品に。音楽ナタリーではアルバムのリリースを記念して、メンバー4人にインタビュー。11月発表の1stシングル「DEAD or A Lime」以降の活動を振り返ってもらいながら、新作に関する話題はもちろんのこと、来たるWACK所属アーティスト全組参加のツアー「WACK TOUR 2020 "WACK FUCKiN'PARTY"」への意気込みを語ってもらった。

取材・文 / 田中和宏 撮影 / 後藤倫人

駅伝に24時間イベント……過酷な企画を経験して

──昨年11月に1stシングル「DEAD or A LiME」を発表して以降、皆さんはBiS恒例とも言える駅伝や24時間イベントなどを経験しました。それでなくても多忙な日々に過酷な企画が続いて、体力的、精神的にも大変だったと思います。正直しんどいと感じることはありますか?

トギー 私はない(笑)。

ネオ・トゥリーズ

ネオ・トゥリーズ いい経験でした。だけど、私は駅伝で足を痛めてしまって、1カ月くらいステージで踊れなくなったのが精神的に堪えました。歌って踊ることを本業とする人が踊れないなんてあってはならないことだと思っているので、つらかったです。

──駅伝でゴールしたその日のライブは、ある種気合いで踊っているような状態だったんですね(参照:渋谷~熱海往復200kmを走破!BiS vs CARRY LOOSE対抗駅伝の勝者はCARRY LOOSE)。

ネオ そうです。駅伝の次の日にもリリースイベントをやって、そのあとに病院に行きました。

イトー・ムセンシティ部 そうだったんだ……。

ネオ メンバーに迷惑をかけたのは申し訳なかったんですけど、まあ治らないケガじゃなかったので。治ったあとのことを考えるのが唯一の心の救いになっていました。今はもう大丈夫です。

チャントモンキー 体調管理が難しいなって思います。声が枯れてからなかなか治らなくて。最近は万全な状態でライブができてないので、すごく悔しいです。万全じゃなくても最高なものを見せられればいいんですけど、キーの高いところで声がかすれたり、音程が取りづらかったりして。

イトー 私は気の抜き具合がわからなくって。仕事のことだけ考えるのはいいことなのかもしれないですけど、考えすぎて嫌になっちゃったら元も子もないですよね。例えば家でマンガを読んだり、友達と電話したりしていると何か罪悪感を感じることがあるんですけど、これは弱さなのかな。今も気の抜き方は模索中で、家での過ごし方、時間の使い方がいまだにまだわかってない状態ですが、寝る前の深呼吸を習慣にしたら、眠れるようにはなりました。

チャント マンガも友達も人生を彩ってくれるものだからさ、罪悪感を感じなくてもいいんじゃない?

イトー そうなんだけど……やっぱりバランスが難しい。もともとマンガが大好きだから、弱ってるときとかはそれだけに時間を費やしちゃいそうになるし……バランスを探していきたいです。

トギー 活動に対してつらいと思うことはないですけど、声が出なくなったときがあって、あれは本当につらかった。「一生治らんかったらどうしよう」と悩んじゃったし。アルバムのレコーディング期間に入るちょっと前に声が出なくなったんです。「BASKET BOX」の歌入れのときは実は声があまり出ない時期だったので、万全で録れなかったのが悔しいです。

──年末の24時間イベントでは、ネオさんがMCで「楽屋の雰囲気がズーンとなった」みたいな話をしていました(参照:第3期BiSが24時間ライブ完遂、初披露曲含む計75曲をパフォーマンス)。

ネオ 無言になってましたね。

トギー 話したくても話せない状態……。

イトー 体力の限界で、無駄にしゃべりたくないっていうのもあったよね。

トギー

トギー 悪い雰囲気とかじゃなくて、ただライブのために体力を温存したくて。

ネオ それが「空気がズーン」っていう感じ。普段は楽屋で話してるから余計に。

イトー みんながつらいことを理解してるからこそね。私はそこまで喉をやられてなかったんです。でもライブ中、ネオともんちゃんの声が枯れ始めたのに気付いて。精神的につらいのはわかるけど、治せるわけじゃないからフォローもできない。だから「もう少しだ、がんばろう」という気持ちだけで乗り切りました。

ネオ 私は24時間イベントの3時間目で声が枯れちゃって。体調は万全だったのに、寝不足もあって声が枯れてきてしまって……マイナスの感情がどんどん出てきてしまったんです。しかも新曲を初めて披露するという大事なライブで声が出ませんって、普通はあり得ないから。悔しかった。

──チャントさんはどうでした?

チャント 私はネオがズーンってなってるのを見ていて、なんて声をかけたらいいかわからなくて、全然支えてあげられなかったんです。でもそのあと私も声が枯れて、同じようにズーンとなっちゃって(笑)。そしたらネオが「がんばろう」と言ってくれて、「ごめん……」と思いました。私は支えてあげられなかったのに。

ネオ そう思ってたの? 今初めて知った(笑)。

──24時間イベントを通じて、ファンの大切さを改めて感じたのでは?

ネオ そうですね。24時間ずっといてくれた人もいるし、深夜なのに仕事終わり、学校終わりで駆け付けてくれた人もいて。ニコ生で生配信されていたんですけど、応援コメントにも助けられました。スタッフさんもみんな寝てない中でがんばってくれていましたし。

イトー イベントの流れを見ながら、スタッフさんがずっとセットリストを考えてくれてましたし、マジ感謝しかないです!

トギー 全員、抱きしめたくなりました(笑)。

Green Dayオマージュの「BASKET BOX」MV

──アルバムのリード曲「BASKET BOX」のミュージックビデオはGreen Dayの「Basket Case」を彷彿とさせるカラフルな内容でした。コンセプトについてどんな説明を受けたんですか?

ネオ そのまんまですけど、「Green Dayの『Basket Case』みたいな内容だよ」って(笑)。

イトー ソロシーンのときにメンバーとは別に1人ずつ外国人のキャストさんが映っているんですけど、それぞれ私たちのキャラクターを反映した設定になっています。

──細かいですけど、イトーさんは、ご自身の憧れのアーティストである椎名林檎さんが「幸福論」のMVで見せるようなポーズをしていましたよね。地面に寝転がって歌うという。

イトー そうなんですよ。めっちゃうれしくなりました。

ネオ よかったじゃん。

イトー 今回はセクシーさが必要ないMVだと思っていたんですけど、監督さんが「ナイスだよ、セクシー。色っぽいね」と言ってくれたので、正解なんだな、と。