渡辺淳之介のBiSへの特別な思い
──BiSは解散や再編の繰り返しこそあれど、9年の歴史があるグループです。渡辺さんは第3期始動にあたって、かなり気合いが入っているとのことですが、まずはこれまでの振り返りを含め、今のBiSへの思いを聞かせてください。
渡辺 僕がサラリーマン時代に初めて手がけたグループとして、自分のマイルストーンとなったグループがBiSです。今はBiSHが一番売れているけど、やっぱりBiSが一番気になる存在というか、一番大事だと思っていて。すごく大事すぎて壊すこともありつつ、一番大切なものに対しては最大限の力を持ってやりたいなという気持ちでいます。
──渡辺さんにとってBiSは、ほかのグループともまた違う、ライフワークに近いものですか?
渡辺 はい。彼女たちの前で言うのもなんなんですが、この体制で長く続けばいいなと思うんですけども、可能性としては第4期もあるだろうし、この体制でメンバーチェンジが繰り返される可能性もあります。どうなっていくかは本人たち次第ではあるんですけど、BiSという名前は僕の会社が続く限りはあるんじゃないかなと思います。
──WACKとBiSの知名度が上がった結果、今回はオーディションの応募総数もかなりの数だったそうで。
渡辺 オーディションは2000人を超える応募があって。ほかのグループさんの話を聞くと、100人応募が来て喜ぶような状況らしく。旧BiS(第1期)のときは100人も来ないという状況だったこともあって、非常にありがたいなと思いつつ、よく知らないで来ているやつも多いなという(笑)。「第1期BiSの活動が理解できる方」という形で募集したんですが、表面的なアピールで「私、脱げます」とか、そんな子たちが多かったなと。
──ちなみにBiSHの最初のオーディションは800人強の応募だったと聞きます。数字だけで見たら、この5人は2000人の中から選ばれたということで、これからどう化けていくのか楽しみな5人ですよね。
渡辺 そうですね。でも僕の目が肥えてきてしまったこともあって、今回の第3期BiSは意図的にそんなにかわいい子を採用してないんです。
一同 ……。
渡辺 ……あれ?(笑)
WACKアーティストに求められるスタンス
──センシティブな話ですが第2期BiSにおいて、渡辺さんは舵取りができなかったのではないかとか、自責の念を感じているといったことはあるんでしょうか?
渡辺 僕は舵取りをしているつもりが全然なくて、むしろ当時の彼女たちにはかなりの自由を与えていたはずなんですよ。その自由を履き違えた子たちが第2期BiSだったのかなと思っていて、自由は自由であるがゆえに、実はものすごく縛られてるんですよ。もちろんマネジメントの責任がないと言われたらそんなことはないんですけど、常に合宿でも言い続けてきた「スタッフに好かれないとやっていけない」という第1段階を彼女たちは獲得できなかったので(笑)。僕たちは会社というよりは、運命共同体として活動を共にするので、そういう意識が持てない子たちとはやっぱり一緒にできない、というだけの話ではあるんです。
──今のBiSメンバーにも例に漏れず、伝えていることなんですよね。
渡辺 はい。けっこう重要な話なので契約書を交わすときは「いつでも辞めてもらって大丈夫です」と伝えています(笑)。1年という契約期間になるんですけど、ほかに比べるとうちはかなり短いほうで、だいたい3年とかが多いのかなと思います。うちでは1年の自動更新にさせてもらっていて、「1年になってるんですけど、これは7カ月で辞めてもいいんですよ」という話を先にする。なので第2期に関しても、いきなり首を切ったとかではなく、話し合いのもとで決まったことが結果になっています。FAの末、ディアステージの花宮ハナ(元BiSのトリアエズ・ハナ)さんが今では映画に出たりとかも応援してますし。そのあたりはかなり自由な校風です(笑)。
──“校風”とあえて表現していますけど、学校だったら何かあっても先生に怒られたら「気を付けます」で基本終わりですよね。でもWACKの場合は改善できなかったら本当に終わりという。
渡辺 そうですね。第2期は学校感が強かったのかなという感じはしました。学校は大学まで基本的に正解があり、大学院になると正解があるのかないのかわからない研究の領域になると思うんです。正解があるというのは敷かれたレールがあるとも言える。この業界は道筋が用意されているわけではないので、そのレールをこちらに求められちゃうとうまくいかないんです。第3期BiSに関しては、ほかのどのグループよりも僕は関わっていて、レールを敷くというよりはメンバー自身に考えさせるヒントをあげられたらいいなと思って話をしてます。でもだいたい説教になるんで、申し訳ないなと思っています(笑)。
──メンバーはよく怒られるんですか?
マナコ 先日、別のインタビューを受けたあとに「全然ダメだぞ」と言われて。私たちの受け止め方がいかにも説教を受けてるみたいな雰囲気になってることもあると思います。
イトー 怒られるとすぐ自分のことを責めちゃうんですけど、そのあとに「それは渡辺さんの愛だよ」とスタッフさんからおっしゃっていただいて、確かに怒ってもらえるうちはまだいいほうなんだよなというのはわかっているので、ありがたいなと感じます。
渡辺 気持ち悪い発言だよ(笑)。
イトー え? なんでですか?
渡辺 いや、ごめんなさい(笑)。インタビューで言う話じゃないかもしれないですけど、ほかの大人は基本怒らないからね。取材でも「こいつらしゃべれないな」と思ったら、どうやって早く切り上げようかなとニコニコしながら考えて「あとは書き原稿にしようかな」みたいな感じでニコニコ終わる人たちが多いはずだから。「ああ今日なんかちょっとうまくいったな」なんて逆に思わせるのがプロだから。気を付けたほうがいいですよ。
一同 はい!
渡辺 はい(笑)。
マナコ みたいな感じになってしまうんですよ。お話していただくたびに最後は「はい!」って。
ダンス初心者だけど振り付けを考え中
──今のメンバーはいつ対面したんですか?
渡辺 5月末に顔合わせして、6月11日に始動を発表しました(参照:第3期BiS始動!「Brand-new idol Society」で8月デビュー、赤目&鼻血アー写公開)。
──もうすぐ2カ月くらい(取材は7月下旬に実施)経ちますけど、皆さんはこれまでにどんなことをしてきたんですか?
チャント まず、顔合わせ前に3曲くらい送られてきて、作詞の課題を出されて、メンバー全員で作詞をしていました。「第2期の曲は歌わない」という前提がありつつも、WACKのスタジオを使わせていただけたので、ずっと「BiSBiS」(第2期BiS)とか「Plastic 2 Mercy」(GANG PARADE)を練習していました。
マナコ 今はアルバム曲の振り付けをしてるんですけど、ダンス経験者が誰もいないんです。最初は私たちの楽曲もない状態だけど、練習できるスタジオだけがあって。練習しようと思っても「なんの練習をしたらいいの?」ってなりますよね。ダンスの基礎もわからない中、ひたすら曲のコピーをして、ダンスに慣れようとしてました。
──“踊ってみた”の状態?
マナコ 最初は本当にそんな感じでした。体力もないので、「P2M」を1日踊っただけで足が湿布だらけみたいな感じになってしまって。作詞やレコーディングをさせていただいて、曲ができあがったぞという状態になってからはひたすら振りを付ける日々を送っています。
──振り付けは5人全員で案出ししてるんですか?
マナコ そうですね。一番案を出してくれるのはチャントモンキーです。
チャント そんなことはないと思うけどなあ。
マナコ Perfumeの振りコピを1人でしてたから、レパートリーをみんなより持ってるんですよ。
渡辺 Perfume“さん”ね。あと弊社のやつらは別に“さん”付けじゃなくてもいいの。
マナコ すみません、すみません……! それで経験者がいないという中でがんばっても、正しい方向でがんばれているのかがわからなくて。あとはBiSの目指すダンスの方向性として1つあるのが、「今までに見たことないような動きを入れる」みたいなところで。アイドルとは言ったもののダンスの素人みたいな私たちが提案する振り付けって、だいたいどこかで見たことある感じになっちゃってなかなか振りが付かなくて、今かなり曲数が残った状態で必死な毎日を過ごしています。
──そこにレッスンで先生が入るとかはなく?
マナコ 先生はいないです。スタッフの方がこうしたらいいんじゃないかとか言ってくださるんですけど、それをなんとか飲み込みつつやってます。
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ついにやって来た“WACKネイティブ世代”