ナタリー PowerPush - bird

仲間と紡ぐ極上ポップス 4年半ぶりアルバム「NEW BASIC」

出産直前に歌った「海を見つめて」

──アルバムには、The N.B.3以外にもさまざまなアーティストが参加しています。中でも山崎まさよしさんがギターを弾いた「海を見つめて」は、毎年ライブで訪れる宮古島を思って書かれた曲だとか。

そうそう。宮古島で「美ぎ島ミュージックコンベンション」というイベントを毎年やっていて、私が出るのはもう8回目くらいになりますかね。毎年あそこでライブをやる中で、島の人たちや宮古の自然に対して「ありがとう」っていう感謝の気持ちを歌にしたいなと思い作ったんです。で、山崎さんにお願いしたのは、彼もそのイベントにずっと出演していて、やっぱり島のあの雰囲気を知っている人が参加するのがこの曲に対して一番良いんじゃないかと思って。

──この曲、アルバムが13曲目の「Outro」で締められた後にプラスアルファという感じで収録されているんですが、なぜこういう構成に?

bird

「海を見つめて」は2年前の5月にイベントで歌うために作って、録音もその年の秋頃にしたんです。先に録ったままずっと発売してなかった曲だから、別枠として最後に入れようということになりました。

──なるほど。

で、これは裏話なんですけど、作った後スタッフといつ録ろう? という話をしてたとき、2人目の子がお腹にいた時期でね。私は、妊娠中だと声が丸いっていうか柔らかい感じになるんですよ。それがこういうゆったりした曲と合うだろうから今録ったほうがいいんじゃないかと思って、産む直前に歌録りした記憶があります。

──妊娠中の歌声なんですか。そう言われてみれば声の雰囲気も違うような……。

私もこの間マスタリングで久しぶりに聴いて「全然違う!」と思いました。そのときのモードとかもあると思いますしね。

自分の中の新しい基礎=NEW BASIC

──アルバムが完成してみて、birdさん自身はこの作品をどう評価してますか?

今回、言葉に関してはものすごくフラットな気持ちで書けたと思います。今までコンセプト盤とかカバー集とかいろんなアルバムを作ってきて、じゃあ次のオリジナルアルバムってどんなものがいいんだろうと考えたときに、ごく自然と出てきた詞だったんです。変に作り込んでないというか。

──作品を重ねると、スキルが上がっていく反面慣れて惰性になることや、打つ手が減って難しくなる部分もあるかもしれません。でもbirdさんは今回フラットにシンプルな気持ちでできた、と。

そうですね。やっぱり長いこと作品を作ってくると、自分の傾向っていうのはある程度見えてきます。だからこそ手グセでは書いちゃいけないし、自分の得意なやり方や好きなフレーズだけに頼らず、違う書き方が何かあるんじゃないかなって探さなくちゃいけないと思ってます。それはずっと新しいものを作っていくことの大変さでもあるんですけど。

──常に新たな手法は探求してるんですね。

だけど、自分が自信を持って「好き」と言えるものは別に変える必要はないと思う。その周りに付けるトッピングを変えていったり、引き出しを増やしたりすることは大事だけど、核心のところに踏み込んでくと、もしかしたらすべて同じものなのかもしれないですね。

──ではズバリ訊きますが、今回のアルバムに「NEW BASIC」というタイトルを付けた理由を教えてください。

まず最初に言えるのは、このバンドがものすごくシンプルな編成で、本来の"音を楽しむ"音楽ができたから。今までいろんなタイプの音を作ってきましたけど、人間が人間らしい音を鳴らして純粋に楽しんでる、そういう質感をパッケージとして残せたと思います。そして彼らと新曲を演奏することによって、自分の中で新しい基礎みたいなものができたと、私なりに感じたからですね。

7thアルバム「NEW BASIC」リリース記念ライブ

「bird "NEW BASIC" LIVE」

2011年6月28日(火)
Billboard Live TOKYO

bird(ばーど)

1975年生まれ、京都出身の女性シンガーソングライター。大沢伸一に認められ、1999年に大沢主宰の音楽レーベル・RealEyesからシングル「SOULS」でデビューを果たす。同年7月にリリースした1stアルバム「bird」は70万枚の売り上げを記録し、日本ゴールドディスク大賞新人賞を受賞した。2002年にRealEyesから独立。以後は、作曲やプロデュースといったクリエイターとしての才能も発揮し、カバーアルバムやオリジナルアルバムの制作を行う。伸びやかな歌声を武器に、ジャンルの垣根を越えて活躍するその姿勢は、ライブも含め高い評価を得ている。